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- 写真が見違える、一眼レフのコツ。
本取材の際には、入念な感染対策を行いました。
外出の際は、くれぐれも感染予防を心がけましょう。
一眼レフカメラに漠然と憧れつつも、操作が難しそうで尻込みしている方も多いのではないでしょうか。
「ここさえ押さえれば、初心者でも素敵な写真が撮れる!」というポイントを、
フォトグラファーの榊智朗(さかき ともあき)さんに語っていただきました。
写真を教えていると、「スマートフォンのカメラがこれだけ進化しているのに、わざわざ一眼レフで写真を撮るのはなぜ?」と聞かれることがあります。かっこいいカメラを「相棒」として持つ喜びももちろん大きいのですが、「自分らしい写真が撮れる」ことが、その答えです。
一眼レフには表現の幅を広げるさまざまな機能が備わっています。最も特長的なのは、レンズが交換できること。レンズは写りを決める上で、カメラ本体の性能よりもはるかに重要です。
一口にレンズといっても、種類はさまざま。本体を買うとついてくるズームレンズから、広角レンズ、マクロレンズ、望遠レンズなど、レンズによって撮れる画はまったく変わります。「どれを買えばいいんだろう」と途方に暮れてしまう方におすすめしたいのが単焦点レンズです。「単焦点」とは、写真に収められる範囲(画角)が固定されているという意味で、ズームレンズのように被写体との距離を変えることはできません。しかしながら、通常のズームレンズに比べて背景のボケをきれいに作れます。難しい設定はしなくとも、レンズを変えるだけで一眼レフらしい写真を撮れるので、「一眼レフを買ってみたものの、何から始めればいいかわからない」という方はぜひ手にしてみてください。
続いて、初心者の方が押さえるべき撮影のコツを紹介しましょう。意識するポイントはたったの3つ。複雑そうに感じる数値設定も、ひとつだけ覚えればOKです。
1.見せたい「アングル」を探し当てる
同じ被写体でも、距離や角度によってはまったく違った写真になります。最初はズームを使わずに、イメージに近い画が撮れるアングルを自分が動くことで探し当ててみてください。この際に大事なのは、「寄り」を意識すること。被写体全体を写すのではなく、際立たせたい部分に思い切って寄ります。伝えたいことのはっきりした写真はそこから生まれます。
桜の写真を例にとってみましょう。木全体が収まる【A】のような写真だと、図鑑に載っているような単調な印象になります。そこで【B】のように、花にぐっと近寄ると、一気に被写体がはっきりしました。主役の花を手前に置きつつ、奥にも桜のピンク色を散りばめたい。枝も少し斜めに入ったほうが、立体感が出るかもしれない──。あれこれ想像を膨らませながらアングルを探るのが大切です。
2.F値を変えてボケを作ってみる
【A】に比べて【B】は、背景の花がきれいにボケています。このボケ表現は、F値(絞り値)を変えることで調整できます。細かな仕組みは置いておいて、今回は「F値が小さいほどボケが強くなる」とだけ覚えておいてください。ちなみに、単焦点レンズはズームレンズに比べてF値が小さなものが多いのもポイント。「ボケを操りやすいレンズが多い」ということになります。
【A】や【B】と同じ構図で、F値を小さくしたものが【C】です。背景がさらにふわっと溶けているのがわかります。あまり見せたくない背景をボカすことで隠したいときにも有効です。初心者の方なら、カメラで設定しなければならない数値は、このF値のみ。あとはカメラが自動で調整してくれます。
3.「光」を常に意識する
構図やボケと並んで、写真の印象を大きく変えるのが「光」です。光には、自然光(太陽光)と人工光の二種類があります。初心者の方が特に意識するべきなのは、自然光です。
撮影の際には被写体にしっかりと光が当たっているか、逆に強く当たりすぎていないかを常に意識しましょう。たとえば【A】を見ると、上のほうには太陽光が当たっていてきれいですが、下のほうは木の陰で光が弱まり、暗い印象になっています。一方で【B】は、光が全体的にしっかりと入っていてきれいです。
自然光のもとでは、同じ構図で同じ被写体を撮ったとしても、天候、時間、季節によってまったく違った仕上がりになります。被写体の位置を少しだけ移動して、光の当たり方や角度を変えるだけでも写りは変わるので、何度も試してお気に入りの色味や雰囲気を探りましょう。カメラを持っていないときも、光を意識してものを見るように習慣づけるとカメラの上達は早まります。
初心者の方は、ここまでに紹介した「構図、ボケ、光」を意識するだけでも、ずいぶんと魅力的な写真が撮れるようになるはずです。これらは基本であり奥義。ここから先は、さらに表現の幅を広げたいという方に向けて、撮影や設定のテクニックを紹介していきます。
1.色温度を調整する
色温度(K)とは光の色を数値化したもので、低くなればなるほど青みがかり、高くすると赤みが増します。太陽光のもとでは光は白いので、色味にほとんど影響はありませんが、曇りや日陰では光が青みを増すため、「ホワイトバランス(WB)」という色補正機能を使って偏りを調整します。
基本的にはカメラが自動で調整してくれますが、今回は個性を出すために3つの異なる色温度で桜を撮影してみました。【D】は通常の色温度で撮影したもの(晴れの屋外であれば5000〜5200Kが適正)。次に、色温度を上げて撮ったものが【E】になります。ほんのり赤みがかり、暖かい雰囲気になりました。
最後は、色温度を低めに設定した【F】です。全体に青みがかり、ミステリアスな雰囲気になります。色温度を変えるだけで手軽に表現の足し算ができるので、ぜひ試してみてください。
2.広角レンズで立体感を出す
広角レンズは写真に収められる画角が広く、被写体に近寄ることもできるため、ダイナミックな写真を撮れるのが特徴です。同じように桜で比較すると、【G】のように手前も奥もきれいに写るので、花がぐっと迫ってくるような立体感が生まれます。建物を撮るときにも、迫力を出せるのでおすすめです。
3.肉眼よりもきれいに写るマクロレンズ
マクロレンズはその名の通り、小さな被写体を撮るのが得意なレンズです。【H】のように、被写体にギリギリまで寄ってもピントが合わせられるので、自分の目で見るよりも細部を鮮明に捉えられます。植物を撮るのにも向いていますし、料理を撮るのが好きな人にもおすすめです。
ここまで紹介してきたコツとレンズの組み合わせだけでも、撮れる写真は無限にあります。いずれもシンプルな技法ではありますが、これらを押さえておくだけでも、ずっと楽しめるのが写真の魅力です。ずっと続けるためにも、たくさん撮るなかでトライアンドエラーを重ねてください。偶然うまく撮れた1枚を眺めたり、失敗を見直したりするうちに、自然と写真の勘どころが見えてきます。
何を撮ればいいか迷うなら「自分の半径5メートルの世界」を撮ってみるのがおすすめです。家族やペット、お気に入りのアイテム、いつもの通勤ルート。何でもいいからまずは撮ってみる。画角はもちろん、被写体の置き方や光の当て方を変えたり、撮る時間帯を変えることで、見慣れた対象もがらりと生まれ変わります。「カメラの目」で見る世界は、普段の世界よりもずっと美しいものです。ロケーションの良いスポットももちろん素敵ですが、まずは身近な世界を「カメラの目」で楽しんでください。そうすれば、自然に写真は上達するはずです。
2021.05.07
榊智朗(さかき ともあき)さんカメラマン・写真家
広告や、書籍の表紙、PVなど、さまざまな領域で活動し、年間で雑誌撮影を200件以上、書籍撮影を20冊以上担当する。2006年、ひとつぼ展に入選後、国内外で写真展を多数開催。著名人や芸能人のポートレートを得意とし、「その人史上、最高の1枚を撮る」技術に定評がある。直近では「毎日ぺこぱ2」(大和書房)、「まいにち飯尾さん」(時事通信社)、「1%の努力」(ひろゆき著、ダイヤモンド社)等。講師としてカメラの楽しさを広める活動も行っており、これまでに800人以上の受講生を指導している。