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- 手洗いが楽しくなるハンドメイド石けん
本取材の際には、入念な感染対策を行いました。
外出の際は、くれぐれも感染予防を心がけましょう。
新しい生活様式で、すっかり定着した手洗い。
毎日使う石けんがお気に入りのものであれば、手洗いはもっと楽しくなるはずです。
そこで今回は、初心者でも簡単にできる手作り石けんについてご紹介します。
今回ご指導いただいたのは、東京・恵比寿駅から徒歩2分のところにある「Studio Sou(スタジオ ソウ)」の竹内エツコ先生です。ここでは石けんのほかにも、アロマオイルを使ったキャンドルやハンドクリームなど、さまざまなアイテムを手作りできます。教室には、さまざまな模様や彩りが美しい石けんがいくつも並んでいました。眺めているだけでもテンションが上がってきます。
まずは、石けんの基礎知識を学ぶことからレクチャーはスタート。石けんの素材は油とアルカリで、このふたつを混ぜ合わせると「鹸化(けんか)」という反応が起こり、石けんができあがります。市販の石けんは保存性を高めるため、油の分量にぴったりのアルカリを混ぜ合わせますが、手作りの場合はアルカリの量をあえて少なく配合します。アルカリの量を少なくすると、鹸化できなかった油脂が石けんの中に残って、洗い上がりのお肌がしっとりする石けんができあがります。実際にサンプルで手洗いをしてみると、市販の石けんよりも手がしっとりとし、洗った後もうるおいが長続きしました。
手作り石けんは保存料や酸化防止剤といった余計な添加物を入れないので、手だけでなく、顔や身体も安心して洗えます。子どもから大人までが使える上に、お肌の悩みを抱えている方にもおすすめです。
その一方、手作り石けんは中に残っている油が酸化する恐れがあるため、1年以内に使い切る必要があります。油を中に残している分、市販の石けんに比べて柔らかく、溶け崩れやすいのも欠点です。これは、水はけの良い石けん置きを使うことで解消できます。
レクチャーを受けたあとは、さっそく実践です。今回は初心者向きの「手作りアロマ石けん体験レッスン」に挑戦します。
レッスンを受けるテーブルには5種類の食用油と、ボウル、泡立て器、ゴムベラ、スケールなどのキッチン道具が並べられています。一見すると、お料理教室のようです。はじめに、竹内先生オリジナルの材料表(レシピ)が手渡されました。そこには5種類の油と、アルカリの役割を果たす苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)、精製水の分量が記載されています。石けんは1種類の油からでも作れますが、いくつかの油を混ぜ合わせると、それぞれの特性が活かされた石けんに仕上がるのも楽しいところ。たとえばパーム油は石けんを固くし、ひまし油は泡をもっちりさせる特性があります。
油以外にも、材料を自由にアレンジすることも可能です。精製水の代わりにアルコールを飛ばしたシャンパンやワインを入れると、保湿力がアップします。夏には体臭を抑える柿渋や、洗い上がりがサッパリするメントールを、乾燥が気になる冬にはアボカドバターを入れて、潤いたっぷりの石けんを作ってもいいでしょう。材料の特性を理解したうえでレシピを組めると、自分の肌質や好みに合った石けんが作れます。
石けんに入れるアロマオイルは、5種類のなかからひとつを選びます。ユーカリ、ラベンダーなど、ひとつずつ香りを確かめながら、編集部員はアオモジという木から採取される強い柑橘系の「メイチャン」精油を選びました。体験レッスン以外のコースでは、アロマオイルをブレンドしてオリジナルの香りにすることもできます。素材だけでなく、香りを自由にカスタマイズできることも、手作り石けんの魅力です。
いよいよ石けんづくりのスタートです。最初に5種類の油をひとつずつレシピ通りに量って、ボウルへ。次に加えるのは、竹内先生が用意してくださった苛性ソーダ水(苛性ソーダと精製水を混ぜ合わせたもの)です。苛性ソーダは直接触れることができない強アルカリの劇物のため、手袋とメガネ、マスクを装着して扱います。泡立て器で油と苛性ソーダ水を混ぜ合わせていると、どんどん温かくなるのがわかります。この熱を利用して石けんを作るのが「コールドプロセス製法」です。この製法では外部から熱を加えないため、油の成分が変わらずにマイルドな石けんに仕上がります。ちなみに市販の石けんでは、材料を入れた釜などを外から加熱して鹸化を早める「ホットプロセス製法」を採用しています。
油と苛性ソーダ水を混ぜ合わせることで、油とアルカリの分子をぶつけて鹸化を起こします。丹念に20分間ほど混ぜ合わせると、最初はサラサラだった液体にもとろみがついてきました。泡立て器で表面に線が描ける程度の硬さになれば十分です。この後はメイチャン精油と、6色から選んだ黄色のカラージェル(染料)、ゼリーのように透き通った石けん(グリセリンソープ)を加えて混ぜ合わせます。泡立て器で混ぜれば混ぜるほど、辺りは柑橘系の爽やかな香りに。カラージェルも次第になじんできて、カスタードクリームのような黄色になってきました。全体の色が均一になったらパウンドケーキの型にすべて流し込み、デコレーション用に準備しておいたグリセリンソープで表面を飾り付けします。こうしてお菓子のように愛らしい一品が完成しました。手に持ってみると、じんわりと人肌のようなぬくもりを感じます。
レクチャーはここまでですが、石けんを使えるようになるまでは1ヵ月ほど時間を要します。まず、作りたての石けんの温度を保ちながら鹸化を進めるために2〜3日間は保温袋へ。その後、型から石けんを外し、料理用の包丁で好みのサイズにカットします。風通しの良い場所に置いて乾燥させたら、1ヵ月後には完成です。この間に苛性ソーダのアルカリ度が下がり、肌に優しい石けんへと仕上がります。自作した石けんを使える日が、今から楽しみです。手肌だけでなく、心までうるおしてくれる手作り石けんを、皆さんもぜひ作ってみてください。
2021.08.03
竹内エツコさん
バーテンダー時代に培ったおもてなしの心や、お客様に癒しの空間を提供したいという想いを元に、異業種であるアロマテラピーの世界へ。現在は「Studio Sou(スタジオ ソウ)」の代表を務め、「アロマテラピー」「石けん」「キャンドル」3分野のインストラクター資格を持つ数少ない講師として活躍中。