手編みの帽子で夏を迎えよう手編みの帽子で夏を迎えよう

夏のお出かけで大活躍する帽子を、手編みしてみませんか?
コツを押さえれば、初心者でもきれいに編めます。
今回は、ユミコイトヤマ帽子教室で、夏帽子の編み方を教わりました。
普段は既製の帽子を身に着けているという方も、今年は手作りの帽子で夏を迎えましょう。

「作る」と「使う」、ふたつの楽しみがある 「作る」と「使う」、ふたつの楽しみがある

近年、趣味のひとつとして編み物を楽しむ方が増えています。お近くの手芸店などで道具や材料が揃う手軽さと、作品ができ上がったときの達成感が人気の理由です。近年では100円ショップの手芸コーナーの品揃えも充実しています。集中して手先を動かすことが頭の体操になるため、シニア層の間でも秘かなブームに。なかでも帽子を手編みする良さは、作品を身に着けて出かけられること。「あの洋服と合わせたい」「こんな場面でかぶりたい」とイメージしながら編むのはわくわくするものです。手間ひまかけて作った分だけ、愛着も湧きます。

夏帽子の基礎知識 夏帽子の基礎知識

今回作るのは、日よけや暑さ対策にぴったりなツバ広の帽子です。ライトベージュのナチュラルな素地に、黒と白のストライプで爽やかなアクセントをプラスして、夏らしいデザインに仕上げていきます。

まず、帽子の基本的なパーツの名称を押さえましょう。最上部が「トップ」、側面が「サイド」、ツバの部分が「ブリム」と呼ばれます。さらにクラウンの上部を「トップクラウン」、側面を「サイドクラウン」と区別することもあります。

編み入れたひとつひとつが「目」または「編み目」、目が連なったものが「段」です。編み目は1目、2目と、段は1段、2段と数えます。

帽子作りに必要なアイテム 帽子作りに必要なアイテム

夏帽子を編むのに用いる道具と材料は次の通りです。

① エコアンダリヤ糸 木材パルプから作られたレーヨンを100%使用した、天然素材の糸です。UVカット効果があります。さらりとした心地良い手触りに加えて、編みやすいのが特徴。ひとつのハットを作るのに、糸は2玉使います。汚れが付いたら硬く絞ったタオルで拭きとりましょう。
② テクノロート ブリムを編む際に一緒に編みこむことで、形状を保持するワイヤーのようなものです。
③ かぎ針 糸を編む際に使う針です。さまざまな太さがありますが、今回は6号サイズのものを使います。
④ クラフトハサミ 先端が細くて切れ味のいい手芸用のハサミです。柔らかい糸でも簡単にカットできます。
⑤ 毛糸とじ針 糸の端を始末するときに使う針です。縫い針よりも太く、先端はやや丸みを帯びています。
⑥ 熱伸縮チューブ 熱を当てることで縮むチューブです。テクノロートの先端の始末に使います。
⑦ マーカー(段目リング) 制作中の帽子に留めて使います。目数や段数を数えるときや、中断する際の目印として便利です。
⑧ リボン 帽子の飾り用です。シワになりづらいポリエステルの素材を選びましょう。色合いや柄はお好みで。数種類のリボンを気分に合わせて使い分けるのもおすすめです。

テクノロートは輪を作るように曲げて先端をチューブに差し込み、ドライヤーの熱でチューブを融着させておきましょう。こうすることで、テクノロートの端が帽子から飛び出すのを防げます。

きれいに編むコツは目数を正確に数えること きれいに編むコツは目数を正確に数えること

トップの中心から手編みをスタート。指に二重に糸を巻きつけて輪をつくります(写真参照)。

糸を針にかけて引き出します。ここで立ち上がり(段のはじめに編むくさり編み)を作りましょう(写真参照)。くさり編みとは針に糸を巻き付けて引き出すことを繰り返すことで文字通りくさりのように仕上がる、もっとも基本的な編み方です。

トップの美しさを左右する「増し目」 トップの美しさを左右する「増し目」

立ち上がりから「こま編み」をしていきます。こま編みも基本的な編み方のひとつで、目の詰まった仕上がりになるのが特徴です。1段編んだら糸をぎゅっと引っ張り、最初に作った輪を絞りましょう。2段目からも同じ要領で編んでいきます。目数を増やすことを「増し目」といいますが、15段目が90目になるように途中で数回増し目をしながら、円を大きくしていきましょう。美しい円形に仕上げるコツは、増し目の位置を変えながら編むこと。同じ位置で増し目をし続けると、その部分だけ角のように飛び出して、いびつになりかねません。

15段目まで編んだら、表面のでこぼこが気になるときは2センチほど離れたところからスチームアイロンをかざし、蒸気をかけましょう。糸が落ち着いて、きれいな平らになります。ここまででトップは完成です。

サイドは編み方を変えて涼しげに サイドは編み方を変えて涼しげに

続いてサイドを編んでいきます。ここではこま編みに加えて、長々編みを取り入れるのがポイントです。長々編みをすることで、隙間ができてリボンの通し穴になるほか、涼しげな雰囲気を出せます。トップとは異なり、サイドでは増し目をする必要はありません。編み上がったら帽子の内側にタオルを詰めて、トップと同様にスチームアイロンをかけましょう。

ブリムには型崩れを防ぐひと手間を ブリムには型崩れを防ぐひと手間をに

最後のパーツはブリムです。90目から編み始めて一番外側の12段目が150目になるように、増し目をしながらこま編みをします。これまでの工程と異なるのは、ブリムの形状を保つためのひと手間です。13段目と14段目でテクノロートを編糸とともに編み込みます。編み上がったら編糸とテクノロートをまとめて帽子の内側に隠し、仕上げにスチームアイロンで蒸気を当てましょう。

好みのアレンジをプラスして 好みのアレンジをプラスして

帽子のサイドにリボンを通します。リボンはサイドクラウンの外周の2倍~2.5倍ほどを目安として、お好みの長さにカットしましょう。リボンの端を斜めに切るとほつれを防げます。最後に蝶結びにして完成です。

リボンのほかにも、アレンジの仕方はさまざまです。エコアンダリヤで作ったコサージュを付けるのもそのひとつ。より華やかな印象になります。サイドに付ける飾りによって表情が変わるのも帽子の面白さのうちです。ぜひアレンジを楽しんでみてください。

一見難しそうに見える夏帽子ですが、初心者でもコツを押さえればきれいに作れます。手作りの帽子で夏を満喫してみてください。

夏帽子の制作には、2〜3日ほどかかります。

2023.06.01

糸山弓子さん

糸山弓子さん

ユミコイトヤマ帽子教室代表

学生時代に趣味で始めた帽子作りに魅了され、帽子デザイナーとしての活動を開始。ニューヨークでブランド「Yumiko Hats」を立ち上げ、帰国後は東京・代官山に帽子専門店とアトリエをオープン。現在は広尾で「ユミコイトヤマ帽子教室」を運営しています。「大切なのは楽しみながら編むこと。帽子が好きな方、手作りが好きな方はどなたでも歓迎です」と語る糸山さん。受講生たちに帽子作りの魅力を伝えています。

ユミコイトヤマ帽子教室

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