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- 遠方からでも訪れたい、魅惑の図書館10選
本を読んだり借りたりするだけが、図書館の楽しみ方ではありません。
建築がアートのように美しかったり、ゆったりとくつろげるカフェが併設されていたりと、個性的な図書館がたくさんあります。
今回は北海道から九州まで、各地にある素敵な図書館を、
フリーライターの立野井一恵さんにナビゲートしていただきました。
札幌のビジネス街に位置し、「はたらくをらくにする」がコンセプトの図書館。働く世代をターゲットにしたさまざまな特徴があります。その筆頭が本の貸出を行っていないこと。蔵書は図書館内に常にあるため、ふらっと調べ物に立ち寄るのにもうってつけです。児童書や絵本、小説は置かれていない代わりに、実用書やビジネス書、雑誌などが取り揃えられています。「ワーク」「ライフ」「アート」の3つのテーマに沿った本の並べ方もユニーク。1階のサロンでは隣接する地元のカフェ「MORIHICO.」が提供するコーヒーを持ち込むことができます。
札幌市図書・情報館Webサイト
https://www.sapporo-community-plaza.jp/library.html
東日本大震災で甚大な被害を受けた須賀川市で、復興のシンボルとして誕生しました。「tette」という愛称には、「みんなが手と手を取り合い、笑顔が溢れるように」との想いが込められています。ここは図書館を中心に子育て支援コーナーやクッキングルームなどが入り、交流を促すことを目指した複合施設。各施設には関連書籍も置かれ、思わず手に取りたくなる仕掛けです。須賀川市はゴジラやウルトラマンの生みの親で「特撮の神様」と呼ばれた、円谷英二さんの生誕地。これにちなんで円谷英二ミュージアムも併設されており、ファンはもちろん観光客の目も楽しませてくれます。
須賀川市中央図書館Webサイト
https://s-tette.jp/library/
緑豊かな公園内にあり、レトロな赤レンガ造りの建物が目を引く北区立中央図書館。ここはかつて陸軍の銃包製造所として使われており、戦後は長らく自衛隊の施設でしたが、2008年に図書館として生まれ変わりました。近代史が息づく赤レンガと、ガラスが多用された現代建築が見事に調和しています。館内には日本文学研究者のドナルド・キーン氏から寄贈された書籍や絵画を集めた「ドナルド・キーンコレクションコーナー」も。北区の名誉区民である氏について知り、日本文学に親しむきっかけになります。
北区立図書館Webサイト
https://www.library.city.kita.tokyo.jp/
円形の窓が並んだ個性的な外観に、「ルーム」と呼ばれる丸みを帯びた部屋が連なった内観。やわらかい曲線的なデザインが印象的です。ここは図書館をはじめ生涯学習支援、市民活動支援、青少年活動支援の4つの機能を備えた複合機能施設です。併設されたカフェでは食事やティータイムを楽しむ人々が集い、青少年専用のスペース「ティーンズスタジオ」では勉強だけでなくバンドやダンスの練習に勤しむ若者たちの姿も。すべての世代にとって過ごしやすい場所になっています。
武蔵野市立 ひと・まち・情報 創造館 武蔵野プレイスWebサイト
https://www.musashino.or.jp/place/
日本を代表する建築家、隈研吾氏が設計を手掛けた「TOYAMA キラリ」。その名の通り、自然光を反射してキラキラと輝く外観は、富山県の主要産業であるアルミ、ガラス、御影石で彩られており、ガラス美術館も併設されています。一方で、内装に地元産の杉がふんだんに用いられた館内は、開放的な吹き抜けになっており、自然光に満たされた温かみのある空間が広がっています。一度訪れると、きっとその美しさに息を呑むはず。地元の魅力がぎゅっと詰まった、富山市のランドマークです。
富山市立図書館Webサイト
https://www.library.toyama.toyama.jp/
2022年にオープンしたばかりの図書館。全国トップレベルの収蔵能力を誇り、円形劇場のような大閲覧空間や段状に並ぶ円形の本棚は圧巻です。加賀五彩(古代紫、臙脂、草、黄土、藍)で色分けされた各フロアや、石川県が誇る生物文化多様性に関する国内外の本や実物を集めた「里の恵み・文化の香り~石川コレクション~」コーナーもあり、地域の魅力も詰まっています。もうひとつユニークなのは、全館に500席ほど設置された色とりどりのチェア。ゆらゆら揺れる「ハンギングエッグチェア」が有名ですが、ほかにも図書館のオリジナルチェアや世界的に有名なデザインチェアなどが館内の至る所にあります。お気に入りを探すもよし、その日の気分に合わせて座るもよし。一日中楽しめる、石川県の新名所です。
石川県立図書館Webサイト
https://www.library.pref.ishikawa.lg.jp/
コンセプトは「滞在型図書館」。岐阜県産の木材「東濃ヒノキ」が格子状に組まれた天井からは木漏れ日のように自然光が差し込み、まさに森の中に佇んでいるような居心地の良い空間です。館内でひときわ目を引くのは、天井から吊り下がった白い巨大なドーム状の「グローブ」(写真参照)。児童、郷土、文学などテーマごとにグローブがあり、それぞれに異なるデザインの机と椅子などが置かれています。このグローブの周りに書架が広がっています。児童書架の近くの「親子のグローブ」は、靴を脱いで子どもたちが利用できるスペースに。好きなグローブに入って、本の世界に没入しましょう。
岐阜市立中央図書館Webサイト
https://g-mediacosmos.jp/lib/
初めて訪れた方は、池の一角に浮かぶように建った重厚な外観に目を見張るはず。古墳が多く現存する松原市の地域性にちなんで作られました。外観は巨大な岩のようですが、館内には吹き抜けがあり、各階がゆるやかにつながるスキップフロアによって想像以上に明るく広々とした空間になっています。この独創的なデザインが高く評価され、2020年にはグッドデザイン賞を受賞しました。
松原市民図書館Webサイト
http://www.trc-matsubara.jp/
住友家第15代当主の寄付により、1904年に開館しました。ギリシャ神殿の建築様式が取り入れられており、コリント式の大きな柱を擁する外観が印象的です。内部はバロック様式を基調とした格調高いデザインに。中央のホールにはステンドグラスから自然光が差し込み、神聖な雰囲気を醸しています。本館と左右の両翼は、1974年に国の重要文化財に指定されました。戦災を逃れて今なお使われ続ける、歴史的な価値の高い図書館です。
大阪府立中之島図書館|つながる文化ステーションWebサイト
https://www.nakanoshima-library.jp/
ショッピングモールの建物を転用して生まれた都城市立図書館。自然光が入る吹き抜けのホールや中央の大きな時計台などに当時の面影をとどめます。館内は人々が行き交う市場のストリートに見立てられ、つみ木箱にディスプレイされた本たちが出迎えます。気になった本を手に取り、より深く知りたくなったらさらに奥の棚へ。ウィンドウショッピングをするように本探しを楽しめる図書館です。
都城市立図書館Webサイト
http://mallmall.info/library.html
誰でも気軽に利用でき、普段は手に取らないような本との一期一会があるのも図書館の面白さです。
全国各地の素敵な図書館を、旅行やお出かけの行き先に加えてみませんか?
2023.11.01
立野井一恵(たてのい・かずえ)さん
フリーライター
子供の頃から図書館に通い、図書館に住むことが当時の夢だったという立野井さん。現在はフリーライターとしてリサーチのために図書館をフル活用するほか、複数のメディアで図書館に関する情報発信も行っています。2015年には『日本の最も美しい図書館』(2023年10月に改訂版発売)、2021年に『東京の美しい図書館』(ともにエクスナレッジ)を執筆し、建築にこだわりのある図書館を紹介しています。