サステナブルな社会を支える電気エネルギーの利用拡大に対し、強い開発力とエンジニアリング力で"カーボンニュートラルの実現と電力の安定供給"を両立していきます
激甚化する自然災害への対応やエネルギーの安全保障への意識が高まる中、電力業界を取り巻く市場には様々な課題が存在します。再生可能エネルギー(再エネ)や蓄電池の普及による電力需給形態の分散化の拡大、太陽光発電・風力発電などの変動型再エネの出力変動、工場・家庭等(需要家)で発電し余った電気の送配電網への流入など、これらの技術課題を解決しながら電力の安定供給と効率的運用の両方を実現することが求められています。
こうした中、電力・産業システム事業本部では、解決すべき社会課題を「カーボンニュートラルの実現」と「電力の安定供給」の両立と定めています。電力ICT分野の「デジタルエナジー(電気の見える化による事業価値の創造)」と直流送電や系統安定化技術、分散電源制御システムや広域監視制御システムなど再エネの最大限活用に向けた技術開発に資源を投入し、カーボンニュートラルの実現に貢献していきます。また、 基盤となる発電・変電事業の維持・拡大においては安定的な運用を支えるアフター保守サービスを充実化し、電力の安定供給に寄与していきます。
※ 発電機事業は2024年4月1日をもって三菱ジェネレーターに事業移管されました。詳しくはこちら。
リスク・機会を認識・評価している主な社会課題 | 重点的に取り組むSDGs |
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リスク・機会を認識・評価している主な社会課題 |
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重点的に取り組むSDGs |
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事業を通じた社会課題への取組
いつもある安心・安全・快適な社会の実現に貢献する発電、系統変電、受配電を支える電力機器やシステムの開発
水素間接冷却タービン発電機「VP-Xシリーズ」
CO2排出量の削減を始めとした世界的な環境負荷低減要請の高まりを背景に、タービン発電機に対しては高い信頼性に加えて効率向上などの高性能化に対する要求が高まっています。三菱電機では、このような要望に応えるべく大出力・高効率の水素間接冷却タービン発電機"VP-Xシリーズ"を開発し、900MVA級までの製品化を実現しています。
水素間接冷却方式は、水冷却方式と比べ、固定子冷却水供給装置などの付帯設備が不要という利点があります。これらVP-Xシリーズにより、これまで水冷却方式でしか対応できなかった900MVA級の大出力域への高効率水素間接冷却方式の適用を実現。運用・保守の両面からお客様に様々なメリットを提供しています。
また、VP-Xシリーズで開発した大出力化・高効率化・コンパクト化の要素技術は、既設発電機の部分更新へも適用が可能です。このため、これらを新たなアップグレードサービスメニューとしてお客様へ提供し、既設発電機の高性能化に対する多様な要望に応えています。
環境負荷低減 開閉器
温室効果ガスの削減を目指し、VCB(真空遮断器)やドライエア絶縁によりSF6ガス使用量をゼロにした30kV~70kV級C-GIS(密閉形複合絶縁スイッチギヤ)の普及拡大を進めており、22年10月には北米向け72.5kV「三菱タンク形真空遮断器」を開発し、販売を開始しました。今後、製品ラインナップの追加を進め、更なる環境負荷の低減や保守点検作業の効率化に貢献していきます。
環境負荷低減(植物油入、走行風自冷式)変圧器
電力用変圧器においては、内部の絶縁油として、有限な資源である石油由来の鉱油に代わり、植物由来の絶縁油を使用した植物油入変圧器(製品名:MELCORE-NEO™)を開発しました。絶縁油が植物由来であるため、持続可能な生産、土壌汚染防止の特長及びカーボンニュートラルを有します。また、難燃性の絶縁油を使用することで優れた防災性を有し、鉄道、データセンターなどの環境配慮/防災性が求められる施設に納入しています。また、鉄道車両に搭載される変圧器は、車両の走行風を利用して本体を冷却する走行風自冷式変圧器を開発、納入され、電動送風機を使わず走行風のみで冷却するシステムとしていることから省エネに大きく貢献しています。
監視制御システム
従来機種比で更なる高機能・高性能を実現するとともに、体積・重量を最大30%削減し、省資源・省スペース化にも貢献する監視制御システムです。消費電力も従来に比べ最大33%削減しています。またCPUカード・入出力ユニットは、一世代前のハードウェアでも交換可能なよう設計しています。最小限の設備更新で導入できるようにすることで、資源投入量をはじめとする環境負荷の低減につなげています。
モジュール型AVR(自動電圧調整装置)
従来機種では制御基板がカードスロットに収納されたユニット構成となっていましたが、最新機種では制御基板を本体内に納めた一体型ユニット(モジュール型)とすることで、従来比5分の1に小型化しました。メンテナンスの容易性向上や製造時の環境負荷低減を実現するとともに、消費電力も約2分の1に削減しています。三菱電機はAVRを日本のみならず世界各国の発電所の多くに納入しており、電力の安定供給に貢献しています。
電力システムの新しい価値創出を目指してソリューション事業を推進し、お客様の経営に貢献
電力市場向けパッケージ型ソフトウェア製品「BLEnDer®(ブレンダー)」シリーズ
2003年の販売開始以降、各製品の機能拡張及び製品ラインナップの追加を進め、現在では、数々の発電・小売り事業者様へ納入実績を有する合計20シリーズのパッケージ製品を保有しています。※
これまでも、そしてこれからも、「BLEnDer®」は、電力市場とエネルギー動向の変化を捉え、電力システムのデジタル化とエネルギー事業の拡大をサポートしていきます。
※ 2022年3月時点
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分散型電源運用システム/VPP(Virtual Power Plant)システム
小規模多数の電源・蓄電池・負荷機器をIoTプラットフォーム上で統合管理し、経済運用や需給バランス改善を実現するAI予測機能や最適アルゴリズム計算機能、分散型電源の制御機能を提供します。
需給バランス改善や系統安定化用途に活用することで、再生可能エネルギーの主力電源化や蓄電池・EV等の普及を後押しし、カーボンニュートラルを達成します。
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スマートメーターシステム
スマートメーターシステムは、電力事業の基盤となるシステムです。電力の購入先を自由に選択し、安定的な電力供給を受けるためには、「いつ、だれが、どれだけ電気を使ったか」という情報が必須となります。大量の検針データを確実かつ低コストで収集するためのシステムを開発し、複数の電力会社で運用しています。また、このスマートメーターシステムは、個別需要家の節電・省エネ行動に必要な電力使用量をリアルタイムに提供する機能を備えています。さらに、スマートメーターの通信網を活用することで、ガス・水道などの共同検針や各種センサーの遠隔監視・制御を可能にし、これらの開発により消費者の更なる利便性向上を実現しています。
(BLEnDerICE プレスリリース:https://www.mitsubishielectric.co.jp/news/2020/0316-a.html)
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大容量蓄電池制御システム
電力系統の柔軟な運用には蓄電システムが必須となります。出力が変動する再生可能エネルギーによる発電と、化石燃料による発電のバランスをつかさどるキーシステムとして、離島をはじめとする小規模な電力系統へ蓄電池制御システムが納入され、運用が開始されています。離島以外の本系統でも再生可能エネルギーの余剰問題対策として蓄電池制御システムに期待がかかっており、風力発電、太陽光発電など再生可能エネルギーを出力抑制することなく最大限に活用し、低炭素社会の実現と電力系統の安定運用の両立に寄与する製品の拡大に注力しています。
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スマート中低圧直流配電ネットワークシステム「D-SMiree」
2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現」を目指した取り組みが加速しています。電力インフラにおいても、太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーや蓄電池、燃料電池、電気自動車等との連系拡大と電源品質維持の両立のほか、分散電源化による地域社会のレジリエンス強化や災害に強い電力ネットワークの構築の要求が高まっています。スマート中低圧直流配電ネットワークシステム「D-SMiree」は、直流配電技術に加え、最新のスマートグリッド関連技術や蓄電池最適制御技術などによって「創エネ」「蓄エネ」「省エネ」を実現し、変換ロスの削減、電力信頼性の向上、防災拠点化などの施設用途にあわせた信頼性と経済性を両立する配電システムを提供します。
マルチリージョンEMS
近年、サプライチェーンに対し再エネ100%化やCO2削減を求める動きが高まっており、将来は工場など「拠点単位」での脱炭素化目標を達成することが重要になると考えられます。マルチリージョンEMSは、需要家(企業)が自社拠点毎に脱炭素化の目標管理を可能とするクラウドサービスです。拠点間で再エネ価値を移転し、環境価値証書をどれくらい調達すればよいか最適化します。更に、30分単位で再エネ価値を積み上げ、蓄電池内の再エネ価値の色分け等厳密な環境価値管理を可能とします。このように、三菱電機では企業の脱炭素化への具体的な取り組みを支援・推進するソリューションを提供します。