2023年07月号

特集 「安心快適な社会を支える社会インフラシステム」

三菱電機技報 2023年07月号

巻頭言
社会インフラシステムが貴方を救う。
特集論文
全6編

特集概要

三菱電機では、多様化する社会インフラシステムの課題の解決に向けて、高度な社会インフラ構築へ貢献し、安心・快適な生活基盤を築き持続可能な社会を実現するため、様々な分野で事業を展開しており、水環境システム、水防災情報システムを始め、道路維持管理ソリューションやETC(Electronic Toll Collection)システム、省エネルギー・省力化に貢献するデータ利活用ソリューション等、数々の社会インフラシステムやソリューションの提供、自治体と連携したオンデマンド自動運転実証実験への参画などの取組みを行っています。
本号では、それらの取組みやシステム・ソリューションについて紹介します。

巻頭言
特集論文
(全6編)
2.

つくばスマートシティでのオンデマンド自動運転実証(PDF:1224KB)

小林弘幸

2022年3月10日に行われた国家戦略特別区域諮問会議(議長・岸田文雄首相)で,茨城県つくば市をスーパーシティ型国家戦略特別区域として区域指定することが決定した。つくば市は,スーパーシティ選定に際して“つくばスーパーサイエンスシティ構想”を定めて,先端的サービスの社会実装と都市機能の最適化を目指している。
今般,三菱電機は,つくばスマートシティ協議会メンバーとして,“2022年度国土交通省スマートシティ実装化支援事業”にスマート・コミュニティ・モビリティ実証調査事業(つくば医療MaaS(Mobility as a Service))を提案し,この事業で,当社は,ペデストリアンデッキ(注1)上の小型モビリティ等による自動運転走行実証を担当した。
(注1) 高架型の歩道。一般に建物と接続して作られ,歩道のほかに広場の機能を併せ持つ場合も多い。

3.

道路維持管理ソリューション(PDF:1360KB)

渡辺完弥/三好竜司/佐久嶋 拓

高度成長期に整備された道路インフラの多くは,建設後50年を超過し老朽化の加速が懸念されている。道路管理者は,道路インフラの安心と安全を守るため,限られた予算内かつ適切なタイミングでの点検や維持管理,更新が求められ,業務の効率化,更新時期の最適化が喫緊の課題になっている。
三菱電機は,インフラ点検ロボット技術で道路インフラの点検業務を支援する“三菱インフラモニタリングサービス(Mitsubishi Mobile Monitoring System for Diagnosis:MMSD)”と,道路インフラの現況を三次元仮想空間内に再現し,維持管理業務を支援する“三菱多次元施設・設備管理システム(Mitsubishi Multi-dimensional Data Management for Diagnosis:MDMD)”の提供によって,点検業務や維持管理業務のDX(Digital Transformation)化,効率化を目指している。今後も,MDMDのデータ連携機能開発など,更なる機能拡充に取り組んでいく。

4.

ETCシステム(PDF:759KB)

松下裕一郎/吉永秀雄/川上英哲

有料道路の通行料金をノンストップで徴収可能なシステムとして導入されたETC(注1)(Electronic Toll Collection)システムは,各種割引サービスの適用とともに全国へ普及拡大している。更なる利便性向上・渋滞緩和のため,国土交通省からETC専用化の施策が示されており,三菱電機は,フリーフローナンバープレート認識カメラを他社に先駆けて(注2)納入している。ETC専用化拡大に伴いゲートレス構成のフリーフローETCの需要が見込まれるが,ゲートレスでは,車両のレーン進入を検知するセンサーがないことから,5車種区分に対応した車種の判定ができないという問題がある。そこでその対策として,車体形状や速度を計測するレーザー車両検知器,ETC車載器との通信で車両位置を特定する測角アンテナなどの先取り開発を進めている。
(注1) ETCは,一般財団法人 ITSサービス高度化機構の登録商標である。
(注2) 2017年1月11日,当社調べ

5.

上下水道向けデータ利活用ソリューション(PDF:1309KB)

後藤田 佳/後藤伸介/霜田健太/谷 浩平/金澤哲夫

三菱電機は,上下水道向けの監視制御システムに蓄積されたプラントデータを活用して安心・安全なプラント運用を支援する“データ利活用ソリューション”の提供を目指している。その取組みの中で,下水道向けにAI技術を適用した“高度水処理プロセス制御システム”と“運転管理支援システム”を開発し,フィールド実証を行った。
高度水処理プロセス制御システムは,窒素除去量が最大になる処理水アンモニア濃度で風量制御を行うもので,風量削減(省エネルギー)と処理水全窒素濃度低減(水質改善)の両立を確認した。運転管理支援システムは,雨天時の揚水量制御に対して水位・水質・消費電力を考慮した運転操作ガイダンスを提示するもので,浸水リスク低減・水質改善・消費電力低減を確認した。

6.

IoTプラットフォーム“INFOPRISM”を適用した水防災情報システム(PDF:1193KB)

永井誠一/小笠原 良/金子昇治/小谷長弘

気候変動によって台風や大雨の脅威が拡大し水害リスクが増加する中,河川管理者には,迅速な水防活動や住民への避難行動を促す情報発信の強化が求められている。そこで三菱電機は,データ収集・蓄積,高度なセキュリティー,AIデータ解析等,IoT(Internet of Things)ソリューション機能をまとめたIoTプラットフォーム“INFOPRISM”を適用し,水位・雨量や流域施設の情報を提供する機能,水防担当職員の業務を支援する機能を持つ水防災情報システムを開発した。今後も,IoTプラットフォームを利用した流域データのセンシング等によって,流域施設の最適運転や省力化に資するサービスを提案し,安心・安全な社会の実現に向けた課題解決に貢献していく。

7.

ヘリサット小型化/軽量化(PDF:1169KB)

野村拓光/伊藤 颯/山﨑厚武/玉井克幸/橋本育美

近年,東日本大震災,広域での台風被害,山林火災といった災害に対して,被害状況の迅速な把握手段として,ヘリコプターからの空撮映像が活用されている。しかしながら,従来のヘリコプター映像伝送システムでは,広域災害発生時に地上局が利用できず,リアルタイムでの被害把握に課題が生じたことから,耐災害性に優れて,伝送範囲に制約を生じない衛星通信が映像伝送手段として注目されている。
三菱電機では,その解決手段として世界初(注1)のヘリコプター衛星通信システム(ヘリサット)を2012年度からリリースしており,今般ユーザーから特に要望の強かったヘリサットの小型化/軽量化を主眼に次世代機の開発を実施した。2024年度からの初号機運用開始を皮切りに,更なる安心・安全社会の確立に寄与していく。
(注1) 2013年3月28日現在,当社調べ

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