2023年11月号
特集 「昇降機・ビルシステム」
- 巻頭言
- 昇降機・ビルシステム特集に寄せて
- 特集論文
- 全6編
特集概要
三菱電機ビルソリューションズ㈱では、昇降機、空調機やビルマネジメントシステムを始めとしたビル内設備の販売・製造・施工・保守・リニューアルを通じて、社会課題の解決と個々の利用者の視点に基づいた新たな価値を提供し、ビル空間での日々の安全・安心・快適の更なる進化と、持続可能な社会の両立に貢献していきます。
本号では、これらの昇降機・ビルシステムの近年の取組みについてご紹介します。
巻頭言 | |
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特集論文 (全6編) |
2.
吉田謙吾/近藤真行/相川真実/坂田礼子 従来の三菱電機のエレベーターは,高速,高揚程,制振性など定量的な製品価値で業界をリードしてきた。しかし,競合他社の性能向上や超高層ビルの世界的市場縮小によって他社との差別化が困難になってきている。 |
3.
古平大登/菊池 哲/井村光芳/浅井貴行 建築業界で,建築工期を短縮するための技術のニーズが高まりを見せている。建築工期の短縮にはエレベーターで作業員や資材を効率良く運搬することが効果的であるが,通常エレベーターは昇降路が完成する建築工事の中盤以降しか利用できない。三菱電機ビルソリューションズ㈱(MEBS)は建築工事の初期からエレベーターを利用可能にする,クライミングエレベーター(以下“クライミングエレ”という。)と呼ばれる技術を持っていたが,サービス階を増加するための工事によってエレベーターを停止させる期間が長期化する等の課題があった。 |
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4.
浅井康久/寺田有希 三菱電機ビルソリューションズ㈱(MEBS)は,エレベーターとロボットを連動させるために,スマートシティ・ビルIoT(Internet of Things)プラットフォーム(以下“Ville-feuille(ヴィルフィーユ)”(1)という。)を活用した,エレベーターのロボット連携機能を2020年に発売した。Ville-feuilleとエレベーターは,エレベーター制御盤用インターフェース装置(以下“ELSGW”(Elevator Security Gateway)という。)を使用して通信する構成になっている。しかし,既設の古い機種のエレベーターは,ELSGWへの通信機能を持っていないため,物件ごとに特殊設計で対応する必要があり,ロボット導入のハードルになっていた。そこで古い機種のエレベーターでのロボット移動のニーズに対応するため,古い機種のエレベーターとの通信を可能にしてロボット連携機能の導入を円滑にするシステムを新たに開発した。 |
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5.
クラウド型VPN接続機能:クラウドを利用した汎用機能のコンポーネント化(PDF:500KB) 根岸啓吾 “クラウド型Virtual Private Network(VPN)接続機能”は,クラウドコンピューティング技術を活用し,三菱電機ビルソリューションズ㈱(MEBS)稲沢ビルシステム製作所製ビルマネジメント製品(以下“MEBS製システム”という。)のVPN接続機能を汎用的に利用できるようコンポーネント化したものである。クラウド型VPN接続機能が提供可能なサービスとして,“VPN接続サービス”“メール送信サーバーサービス”の二つが挙げられる。VPN接続サービスは“通信経路暗号化機能”“複数拠点(注1)間の通信制御機能”及び“拠点への遠隔接続機能”を備える。メール送信サーバーサービスは“メール送信機能”及び“過剰送信の通知機能”を備える。これらのサービス・機能をMEBS製システムに利用できる汎用機能として開発した。クラウド型VPN接続機能は今後もクラウド上に構築されているシステムである点を生かして,汎用的な機能を取り込みながら,コストや汎用性の面でMEBS製品の価値向上に寄与していく。 |
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6.
ビル空調自動省エネルギーソリューション“スマート・省エネ・アシスト”(PDF:582KB) 村山修一/長廣憲幸/妻鹿利宏/佐藤冬樹 ビルの省エネルギーを実現する際,省エネルギー制御を実行した場合の削減効果を精緻にシミュレーションすることは難しい。また,削減目標を達成するための省エネルギー制御計画を作成しても,目標と実績のずれを踏まえながら日々省エネルギー制御を調整するのは非常に労力を要するという課題がある。ビル設備運用システム“facima BA-system”(以下“facima(ファシーマ)”という。)向けに提供しているクラウドサービス“スマート・省エネ・アシスト”(以下“スマート省エネ”という。)では,facimaで記録した受電メーターの計量値やビルマルチエアコンの稼働実績に基づいた省エネルギー制御から得られる効果を推算する“省エネシミュレーション”機能と,あらかじめ設定した削減目標の達成に向けて自動で遠隔から空調機器を省エネルギー制御する“アクティブ省エネ制御”機能を提供し,課題の解決を図っている。 |
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7.
小形安弘/鈴木清彦 脱炭素社会の実現に向けた活動は世界的な高まりを見せており,2050年カーボンニュートラルの達成は官民を挙げて取り組む社会課題である。SDGs(Sustainable Development Goals)達成に向けた活動や,ESG(Environment, Social, Governance)投資を目的としてZEB(net Zero Energy Building)が注目されている。2023年現在,バブル期に竣工(しゅんこう)したビル物件群が,大規模改修の時期を迎えている。既存ビルのZEB化は,資産価値向上の点で市場ニーズが高い一方で,新築ビルと比較すると制約事項が多いため実現事例はまだ少ない。 |