2024年05月号

特集 「安心・安全な社会を実現するITソリューション」

三菱電機技報 2024年05月号

巻頭言
日々の安心・安全を提供する技術
特集論文
全5編
一般論文
全2編

特集概要

三菱電機グループはサステナビリティの実現を経営の根幹に据えて、実現に向けて注力するマテリアリティ(重要課題)を明確化しています。
本号では、重要課題の一つと位置付ける“安心・安全・快適な社会の実現”に寄与する三菱電機グループの取組み、製品・サービスの中から、最近のITソリューションを中心に紹介します。

巻頭言
特集論文
(全5編)
2.

サイバー攻撃に備えた情報セキュリティーに対する取組み(PDF:793KB)

山本紳介・松石里加子・古澤康一・大松史生

企業にとってサイバー攻撃は,年々,大きな脅威になってきている。一方で,テレワークやクラウド活用事業の増加などに伴い,業務や事業環境が変化し,DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するためには,安心・安全にデータを活用できる環境が必要になってきている。
三菱電機グループの情報セキュリティー施策を統括する“情報セキュリティ統括室”では,技術的な側面だけではなく組織的及び人的な側面からもセキュリティーを確保できるように取り組んでいる。具体的には,高度な一元管理や多層防御などのサイバー攻撃対策,緊急時の即応体制の構築・整備,企業風土の醸成や従業員のリテラシー向上を重視した情報セキュリティー教育などを実施している。これによって,安心・安全にデータが活用できる環境を当社グループへ展開している。

3.

インダストリアルIoTネットワークセキュリティーサービス“CyberMinder IoT”の最新状況と展望(PDF:563KB)

川邉喜彦・増田岳人

近年,ランサムウエアが猛威を振るうようになり,大企業やそのサプライチェーンでも生産停止を余儀なくされる被害が発生している。このためDX(デジタルトランスフォーメーション)化が進む製造現場でセキュリティー対策の必要性がますます高まっている。
三菱電機インフォメーションネットワーク㈱(MIND)では,大企業から中小規模の製造現場(工場)に対処できるサイバーセキュリティー対策ソリューションとして,インダストリアルIoTネットワークセキュリティーサービス“CyberMinder IoT”を提供している。また,このサービスの提供を通して,日々進化するサイバー攻撃に合わせて最新の攻撃手法を分析し,提供するサービス内容のアップデートを図っている。

4.

人を理解するAI技術を活用したMDIS音声ソリューションの高度化(PDF:587KB)

西 健太朗・白浜広彬・羅 玉てい・田口進也・藤田喜広

コンタクトセンターや対面営業では音声データの効果的な利活用が注目されている。三菱電機インフォメーションシステムズ㈱(MDIS)の音声データの感情分析技術は,音声だけでなく,音声から認識した感情値や顧客満足度なども含めた分析を行うため,オペレーターの応対スキル向上による顧客満足度向上と,オペレーターの離職傾向の推定による離職率低減が期待できる。また,三菱電機の高度な音声分離技術は,複数話者の音声が混在するWeb会議や店頭窓口の会話を話者ごとに分離できるため,自動議事録作成とテキスト分析によって業務プロセスの効率改善が期待される。MDISは2000年代初頭の大手金融機関向けの通話録音システム導入以来20年間にわたって培った音声系システムのノウハウと“人を理解するAI技術”を活用した音声ソリューションで,コンタクトセンターや金融機関などでのデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援し,市場競争力の向上と安心・安全・快適な社会実現に貢献する。

5.

カメラを用いた非接触生体センシングによるドライバーの体調異常検知技術(PDF:732KB)

高橋龍平

ドライバーの意識喪失などの体調異常は重大な交通事故につながるため,対応が急務である。既に体調異常などによって運転姿勢が崩れる“姿勢崩れ”をカメラで検知するという技術が開発されている。しかし,姿勢崩れ検知では,運転姿勢を維持したまま体調異常を起こした場合には対応できないという課題がある。この課題を解決するために,ドライバーモニタリングシステム(DMS:Driver Monitoring System)を活用し,DMSのカメラ映像からドライバーの生体情報を推定することで体調異常を検知する技術を開発中である。この技術によって,姿勢崩れを伴わない体調異常が発生したケースに対しても検知可能になり,交通事故のない安心・安全な社会の実現への貢献が期待できる。

6.

ネットワークカメラ用録画・配信サーバー“ネカ録”の機能強化(PDF:1556KB)

澤田研介・平島栄一・立田怜平・尾上幸多

“ネカ録”は,三菱電機インフォメーションネットワーク㈱(MIND)が提供するネットワークカメラ用録画・配信サーバーである。マルチベンダーのカメラサポート,大容量HDDによる長期間録画,耐環境性に優れたSSD(Solid State Drive)モデル,API(Application Programming Interface)によるシステム連携を特長としている。今後も製品の魅力を維持し続けるには,ネカ録の機能強化が必要不可欠である。また,更に用途を広げるためには,新たに販売されたカメラへの対応や,利用者ごとのニーズに合わせて細かく設定を変更できる機能が求められる。
これらの背景の下,最新のネカ録6(ネカ録 Version6)では,サポートカメラの拡充とイベント通知機能の統合を図った。

一般論文
(全2編)
7.

保険薬局のDXを支援する次世代コミュニケーションサービス“AnyCOMPASS”(PDF:947KB)

高野謙司・重富健二・有川善也・園田康博・中村公昭

三菱電機ITソリューションズ㈱(MDSOL)では保険薬局向けシステムを企画・開発・販売している。政府が推進する医療DX(Digital Transformation)の実現に向けて次世代コミュニケーションサービス“AnyCOMPASS”を開発した。サービスの第1弾としてクラウド版電子薬歴サービスを2023年6月から提供開始した。
今回開発の概要は次のとおりである。
(1)採用アーキテクチャーとしてはAWS(Amazon Web Services)(注1)上のクラウド製品セットを最適化設計し,政府の3省2ガイドライン(注2)に準拠したセキュアな環境を構築した。
(2)ユーザーインターフェースにはユニバーサルデザインを採用し,開発手法として操作性が良く生産性が高い開発手法を確立した。
(3)他社差別化機能として三つの機能を実装し,特許化を進めている。
これらによって保険薬局の医療DXを支援するクラウドシステム基盤を構築できた。
(注1) Amazon Web Services,AWSは,Amazon Technologies, Inc.の登録商標である。
(注2) 厚生労働省“医療情報システムの安全管理に関するガイドライン”,経済産業省・総務省“医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン”のことで,電子的に医療情報を取り扱う事業者が適切な情報保護のため準拠すべき指針のことである。

8.

2024年の働き方改革に向けた“ALIVE SOLUTION”の取組み(PDF:1325KB)

小幡正仁

三菱電機ITソリューションズ㈱(MDSOL)は,人事・総務部門の負荷軽減と労務コンプライアンスの遵守を支援する勤怠管理システムパッケージ製品として“ALIVE SOLUTION TA”(ALIVE TA)を提供している。2024年4月,働き方改革関連法の適用猶予事業・業務の猶予期間終了に伴い,“ALIVE TA”への問合せが増えてきている。MDSOLでは適用猶予事業・業務の中から病院をターゲットにヒアリング調査を実施し,労務管理上の課題を認識できた。そこで,病院での働き方改革の対策強化を図る方針にして,課題解決に向けて機能強化を進めた。

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