2024年11月号

特集 「昇降機・ビルシステム」

三菱電機技報 2024年11月号

巻頭言
昇降機・ビルシステム特集に寄せて
特集論文
全6編

特集概要

三菱電機ビルソリューションズ㈱では、昇降機、空調機やビルマネジメントシステムをはじめとしたビル内設備の販売・製造・施工・保守・リニューアルを通じて、社会課題の解決と個々の利用者の視点に基づいた新たな価値を提供し、ビル空間における日々の安心・安全・快適の更なる進化と、持続可能な社会の両立に貢献していきます。
本号では、これらの昇降機・ビルシステムの近年の取組みについてご紹介します。

巻頭言
特集論文
(全6編)
2.

三菱ビル設備オープン統合システム“Facima BA-system2”(PDF:657KB)

杉本侑基

三菱電機ビルソリューションズ㈱は,2024年2月に三菱ビル設備オープン統合システム“Facima BA-system2”(ファシーマBAシステム2)を発売した。今回のシステム開発の主な特徴は次のとおりである。
(1)連携機能強化
三菱電機冷熱システム製作所等の制御機器との連携強化,及びWeb APIによるデータ提供に対応した。
(2)適応能力向上
サーバーを一新し,大規模ビル向けの管理点数最大100,000点やコントローラー数最大80台に対応した。
(3)快美性大改善
ユーザーインターフェースをマテリアルデザインやWebアプリケーションフレームワークで一新した。

3.

新“BuilUnity”コントローラーと機能拡充(PDF:886KB)

錦織 祥/長南隆之

近年,ビル管理者の人手不足の課題解決や,脱炭素・ZEB(net Zero Energy Building)対応などのニーズ拡大に伴い,ビルの設備やエネルギーを効率的に管理するためのシステムの需要が高まっている。一方で,中小規模ビルの領域では,コストや設置スペースの制約によってシステム導入が進まないという課題があった。
そこで,タッチパネルを搭載したBuilUnity向けの壁掛けコントローラーを開発し,管理用パソコンレスのシステム構成とすることで設置スペースや初期コストを抑え,中小規模ビルへのシステム導入を容易にした。さらに,設備監視とエネルギー管理に関する機能を拡充し,効率的なビルの運営・管理を実現した。

4.

国内向けエスカレーター“uシリーズ”の保守省力化による停止時間削減(PDF:991KB)

川崎敦司

エスカレーターは,商業施設や交通機関などで利用者を上下方向へ大量輸送する動線として設置される。そのため,動線を断ち切る営業時間中のエスカレーター保守点検や故障による停止は利便性の低下につながるため,営業時間外の保守点検でも基本的に短時間での点検が望まれる。三菱電機ビルソリューションズ㈱(MEBS)が2021年11月に新たに発売したuシリーズエスカレーターでは,保守省力化を開発の主要な目的の一つとして,従来,最も保守点検に時間を要していた手すり・手すり駆動周りの製品構造を大幅に見直すとともに,部品の長寿命化や交換インターバルの延長につながる開発を進めた。その結果,uシリーズエスカレーターではMEBSの従来機種に比べて大幅な保守省力化を実現し,それに伴いエスカレーター停止時間の削減を可能にした。

5.

工期短縮に向けた昇降機据付工法(PDF:1020KB)

開 和洋

昨今の建設業界の人手不足・高齢化・働き方改革関連法適用の影響は昇降機工事も同様で,昇降機(エレベーターなど)を安定して提供するには据付工事消化能力の向上が必要になる。さらには,人件費増や価格競争などもあり,事業の維持・拡大には昇降機を効率的に素早く据え付けることが重要と考える。
エレベーター工事中に使用する仮設の動力をなくすことでそれらの取付け・取り外し作業を省略でき,据付期間の短縮を実現できる足場なし工法を開発した。この開発による工期短縮によって,エレベーターの安定的な提供,エレベーターサービスの早期利用及び工事費用の抑制を実現した。

6.

展望用エレベーター“プレミアムシースルーかご室”(PDF:704KB)

安藤康司/田澤英稔/谷口愛弓/小森大資

昇降路内・外からのエレベーターの見栄えを向上させ,利用者に開放感のある眺望を提供する大型窓付き展望用エレベーターを製品名“プレミアムシースルーかご室”と名付けて,標準形エレベーター“AXIEZ-LINKs(アクシーズリンクス)”の新オプションとしてリリースした。展望用エレベーターは,ガラスを多く使用するため,かご室の質量が増加することと,見栄えを優先するため細部まで様々な考慮が必要になることで,納入までのデザイン決定プロセスや建物側に要求する設置条件が複雑であった。そこで,過去の納入実績を踏まえて,標準形エレベーターで実現可能な展望用仕様を標準化することによって,価格を抑えつつデザイン性に優れたエレベーターを提供できるようにした。

7.

最近の昇降機海外納入事例(PDF:498KB)

福嶋千紘

近年,昇降機に対するニーズは多様化している。安全性はもとより機能やデザイン,用途など様々な面から建物のコンセプトに寄り添い,建物の価値向上に寄与する昇降機が求められている。シンガポールに竣工(しゅんこう)した“The GEAR”は,オープンイノベーションを促進するオフィス・研究施設としての用途に合わせて,顔認証装置をセキュリティーゲートに用いたシステムやロボットシステムとの連携を可能にする仕様を導入した。香港の“The Henderson”は,高層建築が密集することで有名な香港の中でも地価が高いエリアで,直角二方口のダブルデッキエレベーター導入や特殊オペレーションを採用することで,昇降機の機能性を損なうことなく利用者に合わせた利便性を追求した。

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