2025年03月号

特集 「高周波・光デバイス」

三菱電機技報 2025年03月号

巻頭言
デジタルインフラにおける歴史的変革期の到来と高周波・光デバイスへの期待
巻頭論文
高周波・光デバイスの最新動向と将来展望
特集論文
全4編
社外技術表彰

特集概要

センシングの発達、さらに人工知能(AI)の進化、それらをつなげる通信技術の発展によって、情報のデジタル化が急速に進展しています。この技術を支えているキーパーツとして高周波・光デバイスがあります。
本号では、通信・センシングに向けた高周波・光デバイスの展望や最新技術動向などについて紹介します。

巻頭言
巻頭論文
2.

高周波・光デバイスの最新動向と将来展望(PDF:1570KB)

増田健之

デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進とセンシング技術の発達によって,情報のデジタル化が進み,第5世代の無線通信や光ファイバー通信インフラを通じてリアルタイムに情報が収集・伝達されるようになっている。さらに,ChatGPT(注1)を始めとするAIの急速な発展によって,労働の効率化や機器の高度化が急速に進んできている。これによってスマートシティー,モビリティサービス及び遠隔医療などの新しいビジネスアイデアが生まれてきており,より豊かな社会の実現が進んでいくものと考えられる。その実現に欠かせない重要な製品として,より高性能なセンサー・高周波デバイス及び光デバイスに期待が寄せられている。
(注1) ChatGPTは,OpenAI OpCo, LLCの登録商標である。

特集論文
(全4編)
3.

5G基地局用16W GaN電力増幅器モジュール(PDF:1082KB)

本田 慧/寺西絵理/嘉藤勝也

現在,第5世代移動通信システム(5G)向けにmassive MIMO(Multiple Input Multiple Output,以下“mMIMO”という。)型の携帯電話基地局が都市部を中心に設置が進められているが,その電力増幅器の平均出力電力は8~10Wが主流である。一方,製造コスト削減や通信距離の伸長のために,より高い平均出力電力である16W級の電力増幅器のニーズも高まりつつある。今回,平均出力電力8WのGaN(窒化ガリウム)電力増幅器モジュールの既製品に加えて新たに開発した,平均出力電力16Wの電力増幅器モジュールの設計・試作の結果,3.3~3.8GHz,出力16Wで,効率40.6~44.4%,電力利得28.1~29.7dB,歪(ひず)み補償適用時の隣接チャネル漏洩(ろうえい)電力比-48dBc以下という5G mMIMO基地局に適用可能な良好な特性を示した。

4.

データセンター向け800Gbps/1.6Tbps伝送用200Gbps EML&PD(PDF:2913KB)

奥田真也/竹村亮太/外間洋平/内山麻美/藤原諒太/坪内大樹

クラウドサービスの拡大が進む現代で,データセンター内のサーバー間を接続する光ファイバー通信は,光通信ネットワークの中でも特に高速化が進展しており,光デバイスの超高速化を牽引(けんいん)している。データセンターでは現在400Gbps通信が主流だが,更なる高速化の要求に対応するため,次世代800Gbps/1.6Tbps通信の標準化が議論されている。今回,800Gbps/1.6Tbps通信に対応する,1波長当たり200Gbpsで動作する超高速EML(Electro-absorption Modulator integrated Laser),PD(Photodiode)を開発した。三菱電機独自のハイブリッド導波路構造,裏面レンズ構造の採用,設計パラメーターの最適化によって200Gbpsの超高速変調を可能にして,データセンターの高速大容量化に貢献する。

5.

デジタルコヒーレント通信方式用波長モニター内蔵DFB-CAN(PDF:1054KB)

岡崎拓行/長谷川清智/金子進一/鈴木純一

近年,通信の高速大容量化に伴い,データセンターを各地に分散立地させデータ処理を効率化する動きが進んでいる。これらのデータセンター間通信では,通信品質を保ち,かつ高速・大容量通信が可能なデジタルコヒーレント通信方式が注目されているが,従来の強度変調通信方式と比べて,光トランシーバーが大型になること,かつ消費電力が大きいことが課題になっている。三菱電機ではデジタルコヒーレント通信方式用光トランシーバーの小型化と低消費電力化に貢献するため,小型のTO(Transistor Outline)-CANパッケージを用いた単一光源デバイスとして波長モニター内蔵DFB(Distributed Feed Back)-CANを開発した。TO-CANパッケージの採用及び波長モニターの小型化によってOSA(Optical Sub-Assembly)サイズは約8分の1に小型化し,SOA(Semiconductor Optical Amplifier)を搭載したDFB-LD(Laser Diode)によって高出力・高効率化し,光出力19dBm以上,消費電力1.0W以下の良好な特性を得た。

6.

100°×73°広画角80×60画素サーマルダイオード赤外線センサー“MelDIRシリーズ”(PDF:1718KB)

安井慎一/三浦 遼/高橋貴紀

三菱電機は,2019年に,人・物の識別,行動把握を高精度に実現するサーマルダイオード赤外線センサー“MelDIR(メルダー)”を市場投入した。今回,MelDIRシリーズの新たな製品ラインアップとして,100°×73°の広画角化を実現したMIR8060C1を開発した。従来製品同様の80×60画素による人・物の識別や行動把握,温度測定を高精度に検知する性能を維持したままで従来製品の2倍以上の検知面積を実現し,一つの赤外線センサーでモニタリングできる範囲を拡大した。また,顧客サポート体制を構築し,ユーザーサポートツールを提供している。MelDIRの開発を通して,安心・安全で快適な暮らしの実現に貢献する。

社外技術表彰

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