2025年04月号
特集 「インダストリー・モビリティ」
- 巻頭言
- “インダストリー・モビリティ”の特集号に寄せて
- 特集論文
- 全8編
特集概要
三菱電機グループでは、事業を通じた社会課題の解決による持続可能な社会への貢献を目指しています。そのため、インダストリー・モビリティBA(ビジネスエリア)ではデジタル技術を駆使した製品群を活用してFAシステム事業と自動車機器事業の間で技術シナジーを最大化し、相互に事業を強化していきます。
本号では、両事業領域での最近の取組みについて紹介します。インダストリー領域では、循環型 デジタル・エンジニアリングに向けた取組みとして、当社のデジタル基盤“Serendie”を活用した製造支援ソリューションや、新製品であるFA統合コントローラ、産業用ロボット、リニアトラックシステムを紹介します。
モビリティ領域では、先進運転支援機能に関連するV2X(Vehicle to everything)技術、車内レーダ技術、灯火制御技術、及びマイコンレスSoC(System on a Chip)制御技術を紹介します。
巻頭言 | |
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特集論文 (全8編) |
2.
市岡裕嗣 近年,製造業(ものづくり)では,労働力不足,グローバル競争,環境規制,消費者ニーズの多様化を背景に,工場IoT(Internet of Things)とデータ活用が注目されている。一方で,製造現場への導入には幾つかの課題が存在する。具体的には,初期投資コスト,技術的専門知識の不足,データセキュリティー,接続互換性,データ活用のサイロ化,ROI(投資対効果)の不確実性が挙げられる。これに対して,三菱電機は製造現場のデータを“集める・貯(た)める・活用する”をワンストップで提供するFAデジタルソリューションサービスを開発した。このサービスはクラウド上で稼働し,エッジゲートウェイ機器でデータを収集・標準化し,様々なシナリオで活用できる。今後,市場浸透を進めて,新たなアプリケーション開発や機能拡張を図る予定である。 |
3.
三菱電機FA統合コントローラ“MELSEC MXコントローラ”(PDF:1221KB) 杉山佳大/原田大揮/日下部真吾 多様化する製造現場で,要求される制御規模や性能が異なっており,これらの要求を実現可能なコントローラの対応が課題になっている。これまでMELSECで培った制御技術を1ユニットに統合することによって,顧客の要求に対応し,製造現場に更なる変革を起こすための新製品として“MELSEC MXコントローラ”を開発した。 |
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4.
産業用ロボットMELFA FRシリーズ“FR PLUS”(PDF:1314KB) 奥村誠也/大樂佑介/高橋浩喜/後藤隆矢 顧客の製造工程で,高生産・高品質を実現するため,産業用ロボットMELFA FRシリーズ“FR PLUS”を開発した。新制御方式“MELFA High Drive”を採用し,高い軌跡精度,短い位置決め整定時間,レイアウト設計に対する柔軟性を可能にしている。軌跡精度や位置決め整定時間が向上することで,作業品質が向上し,また,タクトタイムの短縮につながる。MELFA High Driveを有効にした場合と無効にした場合で,ロボットに試験経路を動作させ,軌跡精度を比較した。その結果,MELFA High Driveによって,三菱電機の測定環境で軌跡精度が最大64%向上することを確認した。 |
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5.
リニアトラックシステム“MTR-Sシリーズ”(PDF:1472KB) 川瀬達也/若山裕史/酒井 伸 近年,生産ラインでは,タクトタイムの更なる短縮及び変種変量生産のニーズが高まっており,高速搬送が可能かつフレキシブルな搬送システムの必要性が増している。さらに,就労人口減少問題から,生産ライン立ち上げ工数・オペレーション工数・保守工数の低減も重要性を増している。 |
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6.
岡本卓馬/池内智哉/藤本浩平/瀧本康明/中野久雄 近年,自動車業界では100年に一度と言われる変革期にある中,CASE(Connected,Autonomous,Shared & Services,Electric)領域の技術開発を加速させている。V2X(Vehicle to everything)は自車両が他車両や外部ネットワークに接続するためのキー技術であり,安心安全を目的としたADAS/AD(Advanced Driver Assistance Systems/Autonomous Driving)の認識性能の向上や車両間の協調制御をスムーズに行うための技術として期待が高まってきている。世界的にも欧州・米国を中心に検討や開発が盛んに行われており,日本でも制度整備や実現検討がなされ,高速道路での実証試験も進められている。 |
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7.
夜間の安心・安全な運転のための歩行者見落とし検知技術(PDF:991KB) 住吉悠希/西川歩未/山本晃史 夜間の安心・安全な運転環境の実現のためには,車対歩行者の事故の抑制が重要な課題である。ドライバーが事前に回避行動を取ることができれば,ヒヤリハットの軽減と安全性の確保を両立できる。そこで三菱電機モビリティ㈱(MELMB)と三菱電機は,ドライバーが見落とした歩行者を早期に知らせる機能を開発している。この機能は,見落とし検知アルゴリズムによって,ドライバーに知らせる対象を限定することで,知らせる頻度が多いことによるドライバーの煩わしさ軽減の効果が期待できる。このアルゴリズムの開発に必要な,歩行者を見落としたときのデータは,実車での収集が困難であるため,CG(Computer Graphics)映像を用いた評価実験によって収集した。これによって,安全かつ効率的なパラメーター最適化及び性能評価を行った。 |
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8.
合田雄一/星原靖憲/間宮拓朗/堀口裕一郎/甲斐幸一 車の安全性を評価するアセスメントであるEuro NCAP(The European New Car Assessment Programme)の評価基準に幼児置き去り検知が追加される(1)など,車内に取り残された幼児に対する熱中症などの事故リスクを軽減する取組みが進んでいる。車内用センサーの一つとして60GHz帯ミリ波レーダーが有力視されているが,その検知性能は車内の構造物による透過・反射等の影響を受けるため,製品開発前段階でセンサー仕様,搭載条件,車内レイアウト等が適切であるかの見極めが重要である。この開発では,三菱電機の“電波見える化技術(2)”を車内レーダーに適用し,実測した人体の散乱データとの比較によって実験的検証を行う。さらに,車内の検知可否マップを作成し,電波伝搬解析が製品開発前段階でのレーダー検知性能の見極めに有効であることを示す。 |
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9.
DMS/HDLの別体マイコンを不要とするSoC制御技術の確立(PDF:1147KB) 木村 茜/御田村 晃/神山真彦/植村宙夢 三菱電機モビリティ㈱は,ADAS-ECU(Advanced Driver Assistance Systems-Electronic Control Unit),DMS(Driver Monitoring System),HDL(High-Definition Locator)などのADAS機器製品の提供を通じて,安心安全なモビリティ社会実現に貢献している。その中でも特にDMS,HDLは高負荷処理とリアルタイム処理の両立が求められ,従来の三菱電機モビリティ㈱製システムではSoC(System on Chip)とマイコンで機能を分担し,システム要件を実現していた。しかし,近年のSoC高機能化に伴い,SoCに搭載されている複数のコアを使い分けることで,単一SoCでのリアルタイム処理と非リアルタイム処理の両立が可能になった。そこで,従来システムのマイコン機能をSoCに統合し,機能,性能,コストを検証した。 |