移動体通信基地局などの高周波電力増幅器の
電力効率を向上し、低消費電力化を実現します。

概要

開発したGaN-HEMTの断面構造

近年、移動体通信基地局や衛星通信システムの高周波電力増幅器は、小型・軽量化や高効率化などのために高出力で高効率なGaN-HEMT※1の適用が拡大しています。

三菱電機では、国立研究開発法人産業技術総合研究所 集積マイクロシステム研究センターとの共同研究により、放熱基板として高い熱伝導率を持つ単結晶ダイヤモンドにGaN-HEMT層を直接接合することで、高出力・高効率化を実現したマルチセル構造※2のGaN-HEMTを世界で初めて※3開発しました。

今回開発したGaN-HEMTを搭載することにより、高周波電力増幅器の出力密度・電力効率が向上し、移動体通信基地局や衛星通信システムなどの低消費電力化に貢献します。

研究開発体制

名 称 担当内容
三菱電機 ダイヤモンドを直接接合したGaN-HEMTの開発(設計、製造、評価、解析)
産業技術総合研究所 ダイヤモンドとGaNの接合プロセス開発

本成果の一部は国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務(JPNP10022)の結果、得られたものです。

技術ポイント

出力30W級製品相当の8セル素子の試作に成功

世界初、マルチセル構造のGaN-HEMTを単結晶ダイヤモンド基板へ直接接合

シリコン基板を用いて作製したマルチセル構造のGaN-HEMTからシリコン基板を除去し、GaN-HEMTの裏面を研磨して薄く平坦に加工した後で、ナノ表面改質層を介する直接接合法によってダイヤモンド基板と接合します。

また、8つのトランジスタセルを並列に組み合わせたマルチセル構造を採用。世界で初めて、放熱性の高い単結晶ダイヤモンドを放熱基板に用いて、マルチセル構造のGaN-HEMTを作製しました。

・温度上昇が、約6分の1に低減・ダイヤモンドがGaN-HEMT内の局所的発熱を速やかに排出

・電力効率は、55.6%から、65.2%へ向上・出力電力は2.8W/mmから、3.1W/mmへ10%増加

GaN-HEMTの出力密度・電力効率の向上により、省エネに貢献

単結晶ダイヤモンド(熱伝導率 1900W/m・K)を基板に用いて放熱性を高め、GaN-HEMTの高温化による性能や信頼性の低下を抑制することに成功しました。

GaN-HEMTの最大温度を211.1℃から35.7℃に低減できるので、トランジスタ当たりの出力が2.8W/mmから3.1W/mmへ約10%増加すると共に、シリコン基板を用いた同構造GaN-HEMTとの比較において、電力効率が55.6%から65.2%に向上しました。

※1Gallium Nitride - High Electron Mobility Transistor:窒化ガリウムを用いた高電子移動度トランジスタ

※2複数のトランジスタセルを並列に配置する構造。

※3 2019年9月2日現在、当社調べ。

SDGsへの取組

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  • 産業と技術革新の基盤をつくろう
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  • 気候変動に具体的な政策を

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