柔軟な取引環境を実現し、余剰電力の有効活用に貢献します。
概要
三菱電機では東京工業大学との共同研究により、P2P電力取引を最適化する独自のブロックチェーン技術を開発。余剰電力の融通量を最大化する取引など、需要家の取引ニーズに柔軟に対応できる取引環境を提供し、余剰電力の有効活用に貢献します。
研究開発体制
名 称 | 担当内容 |
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三菱電機 | P2P電力取引システムの設計、約定※1機能の設計 |
東京工業大学 | ブロックチェーン技術の研究開発、最適約定アルゴリズムの設計 |
用語解説
P2P電力取引とは
複数の計算機が直接接続してデータをやり取りする「Peer to Peer (P2P)」と呼ばれる分散型のネットワーク上で、需要家などの取引参加者が電力会社を介さずに直接、電気エネルギーを取引することです。
ブロックチェーン技術とは
各参加者がある種の計算を行い続けることで、取引情報(公開台帳)を共有する技術です。
取引データは暗号化され、「ブロック(Block)」として追加されます。ネットワーク上のすべての取引参加者が取引結果を記録しているため、取引の改ざんを防止でき、中央管理者のような信頼できる第三者が不要で、一部の計算機に不具合が出てもシステム全体に影響が出ません。
技術ポイント
最適な組み合わせを探索するブロックチェーン技術
売り注文と買い注文の最適な組み合わせを探索する計算量の少ない独自のブロックチェーン技術を開発。これにより、需要家の取引端末(小型計算機)でも、P2P電力取引が可能となりました。
ブロックチェーンの比較 | |
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従来 | ・ブロック生成者を決定するためのマイニング※2処理 ・高性能な計算機で動作 |
今回 | ・取引を最適化するためのマイニング処理 ・小型計算機で動作 |
仮想通貨の取引などで用いられる一般的なブロックチェーン技術では、取引情報を記録する新しいブロックの生成者を決定する際に、マイニングと呼ばれる膨大な計算処理を行うため、多数の高性能な計算機が必要でした。
今回、需要家の計算機が取引の目標やデータを共有して、売買注文の最適な組み合わせを少ない計算量で探索する分散型の最適化アルゴリズムを考案。この方式を新たなマイニングとして導入することで、小型計算機上で動作が可能な最適な組み合わせを探索するブロックチェーン技術を開発しました。
分散型最適化アルゴリズムを考案
開発したブロックチェーン技術を用いたP2P電力取引の手順は以下の通りです。これらの処理は、受渡しする時間帯の商品に対して、例えば5分間隔で受渡し時間の直前まで取引が行われます。
①売買注文と取引の目標をネットワークを介して共有
②目標に適した売買注文の組み合わせとなる「取引」を個別に探索
③個別に計算した探索結果をネットワークを介して相互提示し、各計算機が最も目標に適した取引を選択
④取引情報を追加ブロックとして各計算機のブロックチェーンに追加することで取引が成立
柔軟なP2P電力取引を実現
需要家間の取引目標は、取引ニーズに応じて柔軟に切り替えることが可能です。
例えば余剰電力を最大限に活用したい時(目標①)は、需要家の余剰電力の融通量を最大にすることを共有目標として、売り注文と買い注文の最適な組み合わせを探索します。この時、供給電力に余剰があれば、市場原理に基づいて一時的に取引価格が安くなり、電気自動車への充電需要が増加するなど、小売電気事業者の調整なしに余剰電力を最大限有効活用することができます。
また、需要家の利益を優先させたい時(目標②)は、取引に参加するすべての需要家の利益の合計を最大にすることや需要家の利益の底上げを図ることを共有目標に設定するなど、取引ニーズに応じて共有目標を変更することができ、柔軟なP2P電力取引を実現します。
※1売買の取引が成立すること。
※2膨大な反復計算により、希少な条件を満たす値を探索すること。一般的なブロックチェーンでは、最初に探索に成功した人が成功報酬を得る。