水とエネルギーの循環・再生で明日の社会を支える
水環境にデジタルでイノベーションを創出し、循環型社会を推進
近年、世界人口の増加や発展途上国の急激な経済成長、地球温暖化に起因する異常気象によって、持続可能な水利用が危機に直面しています。この課題を解決するため、三菱電機では水の循環を促すとともに、バイオマス資源の活用や温室効果ガス発生の抑制など、環境問題にまで目を向けた水環境ソリューションを提供しています。デジタルツインにより、下水処理プラントにおいて先進的な運転管理を実現するシステムをはじめ、浸漬型膜分離バイオリアクター 「EcoMBR®」、「オゾン可溶化反応装置」など、高度な技術で循環型社会を推進します。
省エネ型膜分離バイオリアクター「EcoMBR」
ろ過膜洗浄と省エネ化という課題を解決するために
膜分離バイオリアクタ(MBR)とは、微生物(活性汚泥)による生物化学的な浄化作用と、ろ過膜と呼ばれるフィルターによる物理的な浄化作用を組み合わせた水処理技術です。ろ過膜は活性汚泥の中に沈んでおり、ろ過膜への活性汚泥付着防止を目的とした送風を行いながら吸引ろ過することで清澄な処理水を得ます。送風を行っていてもろ過膜では徐々に目詰まりが進行します。この解消に、従来は次亜塩素酸ナトリウム水が洗浄剤として使用されていました。しかし洗浄効果はそれほど高くなく、省エネルギー化を狙った高流束でのろ過が実現できませんでした。
オゾンの力で、持続可能な水利用に貢献
三菱電機独自のMBR「EcoMBR※1」は、次亜塩素酸ナトリウム水と洗浄効果の高いオゾン水を組み合わせて、ろ過膜を洗浄します。オゾンは次亜塩素酸ナトリウムの1.4倍の強い酸化力があり、本装置ではオゾン水を高濃度化することで、酸化力をさら高め、オゾン量や洗浄用の水量を減らし、効率的に目詰まり物質を除去します。高効率なろ過膜洗浄を実現したことで高流束でのろ過が可能になり、ろ過膜の使用本数を大幅に削減できます。また、ろ過膜数を減らすことで必要な送風量も減り、省エネルギー化を実現します。「EcoMBR」を下水や工場排水の再生に適用することで国内のみならず世界の持続可能な水利用に貢献します。
※1EcoMBR:Eco-Membrane BioReactor
オゾン可溶化反応装置
独自の撹拌技術と高濃度オゾンで、濃縮余剰汚泥の分解を促進
下水汚泥からできる濃縮余剰汚泥に含まれる微生物などの難分解成分を、オゾンガスで効率的に溶かす「オゾン可溶化反応装置」を開発しました。特殊な攪拌(かくはん)翼により、濃縮余剰汚泥に注入した高濃度オゾンの気泡を微細化して均一に分散させることで、一般的なオゾン処理では30%以下だったオゾン消費率を80%以上に向上し、汚泥の分解を促進させることができます。本装置は日本下水道新技術機構の建築技術審査証明※2を日鉄エンジニアリング株式会社と共同で取得しています。
※22021年7月9日に取得。審査項目は「オゾン消費率80%以上」「汚泥浮遊物可溶化率20%以上」。
オゾン消費率を飛躍的に高めバイオガスを増産
バイオマス資源として近年、下水汚泥に注目が集まっています。濃縮余剰汚泥は、消化槽でメタン菌により分解され、その際にバイオガスが発生します。バイオガスを増産するには、消化槽投入前にオゾンガスで濃縮余剰汚泥の難分解成分を溶かす必要がありますが、濃縮余剰汚泥とオゾンガスを効率的に反応させることは難しく、これまで注入したオゾンガスの半分以上が消費されず、効率よく溶かすことができませんでした。本装置ではオゾン消費率が飛躍的に向上したことで、従来に比べてバイオガスを22%※3増産することが可能です。
※3本装置を設置していない場合との比較。
廃棄汚泥の削減で、焼却による温室効果ガスを抑制
消化槽で分解できなかった濃縮余剰汚泥は廃棄汚泥として焼却処分されます。本装置では、消化槽投入前に効果的に難分解成分を溶かすことで、消化槽における分解を促進し、廃棄汚泥を削減できるため焼却処分における温室効果ガス削減に貢献します。
デジタルツイン運転管理
運転管理員の熟練度に依存しない新しい運転管理を提案
従来の下水処理プラントでは流入水量の増減など状況変化に対して先を見越した対応が難しく、運転の成否は運転管理員の熟練度に大きく依存していました。そこで三菱電機はデジタルツインを活用した新たな運転管理を提案します。コンピュータ上に仮想の下水処理プラントを構築し、様々なシミュレーションを実行させます。仮想プラントでは例えば、最適運転条件の探索を実行し、経験の浅い運転管理員の作業を支援します。健全な水循環のために、三菱電機はデジタルで水環境にイノベーションを起こします。