開発NOTE
1号機の開発以来、市場ニーズとともに成長してきました。
ビルドアップ基板のレーザ穴あけ技術の開発をスタートしたのは1988年でした。当時はビルドアップ基板がまだ普及しておらず、プリント基板メーカーさんの反応もよくありませんでした。しかしほんの数年で状況は大きく変わりました。高性能化・小型化が進む携帯電話などのデジタル機器分野で、ビルドアップ基板が急速に広まったのです。開発を始めた当時「これからは必ずレーザ加工によるビルドアップ基板が広がっていく」と確信していましたが、それが現実になったのです。今回のレーザ加工機のベースとなった1号機の性能は毎秒400穴程度でした。それ以来、高速化はもちろん市場の声をもとにさまざまな視点で開発に取り組んできました。今回開発した独自技術の数々も市場の要求に応え、信頼性の高い、真に役立つ生産装置を追求・実現していくには、部品メーカからの購入品に頼っていてはブラックボックス的な部分が残り、目指す目標を達成し得ないとの考えから、研究所と製作所の技術者が協力しながら長い年月をかけて具現化したものです。この私たちの姿勢や技術は産業界への貢献と市場からの信頼に繋がっていると自負しています。
永年、積み重ねてきた各分野の技術がバックボーンにあります。
「高ピーク短パルスCO2レーザ発振器」は当社だから開発できたと言っても過言ではありません。レーザ発振器には放電技術と電源技術が必要なのですが、この2つの分野で当社は多くの実績をもっています。放電技術については、高圧電流の放電によりオゾンを発生させ、水を浄化する「オゾナイザ」という技術が当社にはあります。今回の開発でもこの開発経験が大きな財産になっています。また電源には高い電圧で繰り返し放電できる特殊なパワーエレクトロニクス技術を採用しています。これらのバックボーンとなる技術を上手く活かすことで世界に二つとない、プリント基板の穴あけ加工に最適な「高ピーク短パルスCO2レーザ発振器」を実現できました。「高速デジタルガルバノスキャナ」については、ファクトリーオートメーションで多用される数値制御(NC)の技術が下地になっています。工作機械を自動化するための制御方式なのですが、当社はこの分野を永年、得意としています。しかし工作機械の制御とレーザ加工機の制御では、求められる精度も速度も桁違いなのです。開発にあたってはレーザを走査するミラーを動かすためのモータやセンサ、ソフト開発などなど、ジャンルを越えて多くの技術者と協力してきました。
レーザだからできる“付加価値”を求め、今後も開発を続けていきます。
高速で、高品質な穴あけ加工を安定して、いかに実現するか、今後の開発においても目指す方向に変わりはありません。速さ・高品質・高信頼化を実現することで、プリント基板を低コストで大量生産できる環境を提供する、つまり高性能な製品を低価格で皆さまに届けることができるのです。開発を始めた当時はプリント基板のことすらよく知りませんでした。しかし当時のドリルによる穴あけや薬剤を使うエッチングによる穴あけではできない、レーザだけの「付加価値」に着目し、開発にトライしました。今後も現在の加工機で採用している赤外線レーザの可能性をさらに追求するとともに、より微細な加工ができる紫外線レーザまでを視野に入れ「レーザだからできる何か」を求め、チャンレンジを続けていきたいと思います。
表彰実績
第57回(平成22年度)大河内賞 大河内記念生産特賞
受賞対象:高密度ビルドアップ配線板加工用高速マイクロ穴あけレーザ加工機の開発と実用化
第41回(平成21年度)市村産業賞 功績賞
受賞対象:プリント基板穴あけレーザ加工機の高速化技術
その他の受賞歴
第58回 十大新製品賞(2015年)
第11回 “超”ものづくり部品大賞「機械部品賞」(2014年)
第25回 中日産業技術賞「経済産業大臣賞」(2011年)
第3回 レーザー学会産業賞「優秀賞」(2011年)