開発NOTE

自然科学の新たなページを開くTMT、
世界初の技術を自分たちの手で。

自然科学の新たなページを開くTMT、世界初の技術を自分たちの手で。

先端技術総合研究所 春名 正樹先端技術総合研究所
春名 正樹

TMTのプロジェクトを初めて耳にしたとき、エンジニアなら誰しも思うでしょうが、私も「是非参加したい」と強く思いました。「分割鏡交換ロボット技術」はTMTサイドに我々から提案した技術です。自然科学のページを書き換えるであろうプロジェクトに「自分たちの技術を活かしたい」「世界初の装置を自分たちの手で」、そんな思いを持って積極的に提案活動を行ってきました。
TMTサイドも当初は世界初の技術ということで、不安もあったようでした。それを払拭したのが2014年のフルスケール試作機によるデモンストレーションでした。世界中の各分野のプロがデモンストレーションを見て感動してくれました。彼らの多くは技術者です。ここまでこぎ着けるのがどれほど大変だったか言葉にせずとも理解してくれ、苦労が報われた思いでした。

このロボットはすばる望遠鏡やALMA/ACAなど、当社の大型望遠鏡開発の集大成と言えるものです。ローラネジとネジ軸による駆動方式から3つの爪の形状まで、至る所に長年培ってきたノウハウが活かされています。
鏡を掴む「力覚制御技術」は産業用ロボットで実績のある当社保有技術を応用したものです。大型望遠鏡開発とファクトリーオートメーション両方の技術・経験を有する当社だからこそ、今回の技術は実現できたと言えます。

行き詰まったとき、思わぬ所に課題を一気に解決するヒントが。

通信機製作所 川口 昇通信機製作所
川口 昇

ここまで辿り着くには、多くの苦労がありました。例えばパラレルリンク駆動について、ストロークの問題、空間の問題、鏡の重さの問題などで行き詰まった時期がありました。ヒントは思わぬ所にありました。自宅のピアノを動かすためにパンタグラフのジャッキを使っていたときです。その構造を見ながら、これを応用すれば狭い空間でも長いストロークが確保できる。ひらめいた瞬間、心の中で「これだ!」とつぶやいたことを覚えています。それまでスタッフ全員でさまざまなアイデアを出し合ってきましたが、ひとつの課題を解決できても別の課題が残り、前に進むことができませんでした。この新しいアイデアは全ての課題を一気に解決できるものでした。

しかしアイデアはあくまでアイデアでしかなく、それをカタチにできるかは別問題です。
そのためにはCAD化が必要なのですが、当社には腕利きのCADオペレーターが何人もいます。一つ言えば十わかってくれる、頼もしい方々です。私が描いたスケッチをあっという間にCAD化してくれたのです。私のアイデアが実現に向け、大きく一歩前進した瞬間です。もうひとつ当社の経験・人材の豊富さを実感した瞬間がありました。フルスケールの試作機を組み立てたときです。これほど大規模かつ複雑な装置が組み立てからテスト運転まで、一度も滞ることなく進行していったのです。このように今回の技術は本当に多くの方々の支えによって成り立っているのです。