開発NOTE
AIのパラメーター調整は、
まるで熟練者のようでした。
形彫放電加工機の開発を担当しました。以前からAIには興味を持っていましたが、今回初めて開発に携わり、AIの可能性を実感しました。形彫放電加工機は、加工が進むにつれ状況が刻々と変わるため、加工パラメーターをつくるのはすごく大変です。熟練者は加工の状況を見ながら、調整していくのですが、それをルール化して加工パラメーターにするのは至難の業です。今回、検証を進めていく中で、AIの調整の仕方が、熟練者の作業を見ているかの様に感じる場合があり、とても驚かされました。
AIの専門家の方々と研究を進め、多くのことを学ぶことができました。AIの知識はもちろんですが、試験結果の評価方法などAI開発のプロセスをゼロから学ぶことができ、とても貴重な経験でした。
実用化までには、いくつものハードルが残っています。様々な形状の加工対象物でテストを重ね、そこで新たな課題にぶつかることもあると思いますが、より完成度の高いものを目指していきたいと思います。以前、お客様から年配の熟練者が加工中に何か操作をして、加工時間を短縮しているが、ノウハウがわからない。熟練者のノウハウを会社のノウハウとして残したい、そんな声を聞いたことがあります。いずれはこの技術を応用して、AIにお客様固有のノウハウを蓄積できるようになれば、あの時のお客様の声に応えることができると思います。
また、この技術は形彫放電加工機だけでなく、さらに市場の大きいワイヤ放電加工機の加工結果予測やパラメーター調整に活用できると思うので、まだまだこれから発展する技術です。
FAに適用可能なAIモデルの大きさには限界があり、苦労しました。
アルゴリズム開発を担当しました。AIをFA適用する場合、入力データのノイズなどで、万が一AIによって誤った動作をすれば機器故障など、お客様に損害を与え兼ねません。安全かつ高精度なAI活用を可能にしたのが今回の技術です。
開発にあたっては産総研に多大なご協力をいただきました。AI開発において、より高みを目指すために、まさに理想のパートナと言えます。私自身まだまだAIの知識が豊富とは言えませんが、産総研には、多くの時間を割いて親身に相談にのっていただき、大変感謝しております。
AIモデルは大きいほど、表現力が増し、精度が向上することが一般的に知られています。ただ、AIモデルは大きくなるにつれメモリ量・計算量が膨大になり、FA機器に搭載するにはモデルの大きさに限度があります。FA機器の動作に合わせて信頼度を算出するには、高精度かつメモリ量・計算量が少ないモデルを構成する必要がありました。
実験とは言え、自分が開発したアルゴリズムが実際の機器に載ったのは初めての経験でした。その喜びはとても大きく、印象に残っています。実際に動いている機器を見ると、自信が生まれると同時に、もっと良いものをと、モチベーションも高まります。
当社にとって、大きな市場の一つであるFA機器向けのAIの開発ということで、規模や影響力の大きさを感じつつ、「より高精度に」「より高速に」と、自分自身に言い聞かせながらやってきました。今後は、今回開発したアルゴリズムが搭載されたFA機器が実際の現場で稼働する日を夢見て、日々の研究開発に勤しんでいく所存です。