小規模なFPGA※1にコンパクトなAIを実装。
AIの適用分野が大幅に拡大します。
概要
当社のAI技術「Maisart®(マイサート)※2」には、すべてのモノを賢くする「コンパクト化」という特長があります。
当社では機械学習のひとつ「ディープラーニング」の推論に用いるネットワーク構造と計算方法を分析。推論精度を保ったまま、推論処理の演算量・使用メモリー量を90%削減※3することに成功しました。
さらに計算順序の効率化と回路構成の最適化により、小規模なFPGAにも実装できる「コンパクトなハードウェアAI」を開発。「Maisart」をFPGAに実装することで、低コスト化やリアルタイム性が向上しました。
ニュースリリース
技術ポイント
「ディープラーニング」の計算方法を分析し、コンパクト化
「ディープラーニング」とは、人間の脳神経の接続を模擬した何層もの深いネットワーク構造を持つ機械学習のことで、データの特徴をより深いレベルで学習し、非常に高い精度で特徴を認識できます。
従来は入力データの特徴を人間が抽出して、プログラム化し、コンピュータに教え込んでいました。「ディープラーニング」ではコンピュータが自ら特徴抽出を行い、判断や推論ができるということが現実のものとなりました。
「ディープラーニング」によりAIは大きく発展しました。しかし多層のネットワーク構造を用いて計算を行うため、処理に必要な演算量・メモリー量が膨大になります。そのため大規模なサーバーが必要となり、サーバーやネットワーク設備のコストが増大するという問題がありました。
そこで当社では「ディープラーニング」のネットワーク構造と計算方法を分析。ネットワークにおいて重要な「枝」のみを残して、他の「枝」は省略しても計算精度を保つことができるような計算方式を開発しました。これにより演算量・使用メモリー量を90%削減し、コンパクト化することに成功しました。
AIで身の回りの様々な機器を賢く
AIのコンパクト化により身の回りの様々な機器にAIを搭載することが可能となります。
例えば、車載機器への搭載によりドライバーの普段の運転から漫然運転(ぼんやり運転)が検知でき、工作機械では工場現場での人の作業分析が可能になります。
大量のデータをサーバーに集約して処理していた従来の方法と比べ、AIを機器内に搭載することで、従来のサーバー処理のようにネットワークを介する必要がないため、ネットワーク環境に依存せずに高速処理を実現できます。さらに機密情報をサーバーにアップロードする必要がないため、高いセキュリティー環境を構築できます。
コンパクトなAIで身の回りの機器を賢くし、リアルタイム性の向上、高いセキュリティー環境の構築により、安心・安全・快適な社会の実現に貢献します。
「Maisart」のFPGA搭載により、処理速度10倍を実現
さらに当社では「Maisart」をFPGAに実装するために適したアルゴリズムを開発しました。従来は「ディープラーニング」の重要でない「枝」を刈り、演算量を削減するという手法が用いられていましたが、「枝」の接続が不規則であるという特徴がありました。
CPUへの実装では問題にはなりませんでしたが、FPGAの「計算を並列で処理する」という特長を活かした効率的な実装が困難でした。そこで今回、「枝」の間引きに一定の規則性をもたせたアルゴリズムを開発し、FPGAへの効率的な実装を可能にしました。
今回の技術を用い、走行車両から撮影した道路標識が何の標識かを認識する画像認識の実証実験を行いました。今後の自動運転の時代に向けて、高精度地図を自動作成するために必要となる技術です。
FPGAに従来のAIを実装した場合と、「Maisart」を実装した場合を比較すると、「Maisart」は映像が滑らかです。従来のAIでの認識処理が約6fps※4に対して、「Maisart」では60fpsを達成。約10倍の高速化を実現しました。
FPGAの「並列処理」という特長を活かした実装を可能にすることで、リアルタイム性の向上や低コスト化を見込めることができ、「Maisart」の適用分野の拡大に貢献します。
※1FPGA:Field Programmable Gate Arrayの略。プログラミングによって動作変更が可能なLSI
※2Maisart(マイサート):Mitsubishi Electric's AI creates the State-of-the-ART in technologyの略
全ての機器をより賢くすることを目指した当社のAI技術ブランド
※3当社比較
※4fps:frame per secondの略 1秒間に何コマを処理できているのかを示す
「Maisart」は三菱電機株式会社の登録商標です。
本技術は情報技術総合研究所と設計システム技術センターの共同開発です。