300GHz帯テラヘルツ波を使用、
移動体の断層イメージングを実証。

概要

三菱電機は300GHz帯のテラヘルツ波を用いて、一方向から一回の照射により任意の深さで対象物の断層イメージングを行う業界初※1の技術を開発しました。生体への影響が小さく、移動する対象物も数ミリメートルの解像度で撮像します。

近年、空港や駅、スタジアムなど公共空間における安心や安全への関心が高まり、セキュリティー対策の一つとして不審な所持品などを調べるスキャン装置の導入が進んでいます。

セキュリティー対策に多く用いられているX線検査装置は、主に手荷物検査などに用途が限定されています。また、ミリ波を用いたボディースキャン装置は、人物が静止した状態で周囲180度の測定が必要なことから、装置が大型化する傾向がありました。そのため、これらスキャン装置は空港以外の公共空間への導入はあまり進んでいませんでした。

また、製造現場では人手不足を背景に、生産や検査ラインの自動化・省力化のニーズが高まっています。従来の光学カメラや赤外線カメラを用いた製品検査は、外観検査に用途が限られており、例えば、食品工場で容器の内部を検査する際は、抽出したサンプル品の蓋を開けて人手で調べる必要がありました。

そこで、当社は生体への影響が小さいテラヘルツ波を用い、一方向から一回の照射で対象物の断層イメージングを行うバーチャルフォーカスイメージング技術と複数のイメージを合成し誤検出を低減するマルチモードビームフォーミング技術を組み合わせた技術を開発しました。

本技術では、移動する物体の撮像が可能で、ウォークスルー型のセキュリティーゲートやベルトコンベアなどで流れてくる生産ライン上での非破壊検査にも適用可能です。また、スキャン装置の小型化が可能で、さまざまな場所への導入にも貢献します。

今後、セキュリティー対策や生産管理など、多様な用途での実用化に向けた製品開発を進め、早期の事業化とサービスの展開を目指します。

開発技術の適用イメージ

従来技術との比較

ニュースリリース

技術ポイント

生体への影響が小さい300GHz帯テラヘルツ波で断層イメージングを実現

複数のアンテナ素子を規則的に配置したテラヘルツアレー型センサーを使用し、断層イメージを数ミリメートルの解像度で生成するセンシング技術を開発しました。

生体への影響が少ない300GHz帯テラヘルツ波を用いた撮像を行い、対象物の断層イメージングが可能なことを実証しました。

断層イメージング例(スーツケースの断層イメージング)

非破壊検査の例(カップめんの中の金属ボルト)

新開発のバーチャルフォーカスイメージング技術で、一方向から一回の照射で移動体を撮像

従来は、各アンテナ素子からの信号の位相を調整して物理ビームを形成し、測定対象に物理ビームをさまざまな角度から複数回照射することで対象全体を撮像します。

今回、一方向から一回の照射で反射波の測定を行い、その測定データをもとに仮想空間上で複数地点に焦点を合わせたバーチャルビームを形成するバーチャルフォーカスイメージング技術を新たに開発しました。

一度の測定で広範囲の断層イメージを生成することで、移動する物体も撮像でき、セキュリティーゲートや生産ライン上での非破壊検査への適用が可能です。

従来のイメージングとの比較

マルチモードフォーミング技術で、誤検出の低減と装置の小型化に貢献

従来の物理ビームイメージング技術では、物理ビームを形成する際に余分なビームによるゴーストと呼ばれる誤検出が発生します。これを解消するために多数のアンテナ素子を有する大型な装置が必要でした。

今回、広帯域な信号を有するテラヘルツ波により、周波数毎に異なるビーム形状(マルチモード)の形成が可能になりました。これをもとに、得られた測定データに対し周波数ごとにバーチャルビームを形成し、複数のイメージを合成するマルチモードビームフォーミング技術を開発しました。

本技術は周波数の異なるイメージを合成することで誤検出を低減し、装置の小型化が可能※2です。

マルチモードビームフォーミング技術による誤検出低減のイメージ

※12023年3月29日現在、当社調べ。

※2原理は2021年電子情報通信学会総合大会にて発表済。

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