魚類の聴覚特性を利用した魚群誘導技術で、
漁網を必要としない海洋牧場の実現に貢献します。
概要
三菱電機では、魚類の聴覚特性を利用した独自の音場制御技術により、魚群を自由に遠ざける・集める「音波による魚群誘導技術」の開発を進めています。今回、音波で魚群を遠ざける技術開発に成功し、さらに魚群を集める技術にも取り組んでいます。
日本の水産業は地球温暖化などによる水産資源の減少や漁業従事者の減少と高齢化などの課題を抱えており、2018年の水産物生産量は1984年と比較して約3分の1※1に減少しています。解決策の一つとして、海全体を牧場に見立てた漁網を必要としない海洋牧場が注目されています。
海洋牧場は養殖用の稚魚や魚卵を放流し、音波や光に反応する魚類の特性を利用して、育てた成魚を誘導することで、安定的かつ効率的な漁獲が期待できる漁業方法です。しかしながら、これまでの海洋牧場では、給餌中に光や音波などの刺激を与えて、継続的に魚類に馴致(学習)させる必要があるため、魚類の牧場内での定着率に課題があり、実用化は難しいとされてきました。
本技術は、特定の魚が嫌いな音波(忌避音)を水中でスピーカーから出力し、音波の出力方法を変化させることで、音波に慣れさせず、その魚を遠ざけるものです。この技術を音場制御技術と組み合わせ、忌避音の出力方向を変えることで、特定の魚を任意の方向に遠ざけることが可能となります。また、海苔やカキの養殖場での魚類による食害低減にも有効と考えます。
今後は本技術に加え、嗜好音で魚類を集める技術を開発し、特定魚をより自由に誘導し、漁獲できるようにすることで、海洋牧場の実現や不要な漁獲や稚魚の乱獲防止、害魚による被害の低減に貢献します。
ニュースリリース
技術ポイント
忌避音を用いた音場制御技術
複数のスピーカーにより音波の方向を制御する音場制御技術を用いて忌避音の方向を制御し、自由に魚群を誘導することが可能です。また、スピーカーの設置場所および向きを変えることなく、音波の方向を制御することができます。
※1水産白書(2018:水産庁)より。