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誰もがわかるサインを世界にひろげたい

三菱電機株式会社 統合デザイン研究所
デザイナー
坂田 礼子

クルマからビルへ転向した、光のダイナミックサイン

私は、大学時代、建築学科で人間工学を専攻していました。見た目のデザインよりも、機能性や利便性を探究したいと考えるようになり、今の道に進みました。

現在は、エレベーターやエスカレーターといった昇降機や、ビルシステムのコンセプトを開発しています。なかでもメインで取り組んでいるのが、アニメーションを用いた動くサイン「ダイナミックサイン」です。もともとこの研究は、自動車機器事業本部のプロジェクトとして始まりました。車から光で道路に矢印を照らし、周囲に次の動きを伝えるというアイデアが元となっています。

その後、ビルシステム事業本部とプロジェクトを進めるようになったのは、近年、商業施設とオフィスが複合化し人の動線が複雑になっているのに、肝心のサインが足りていないから。だったら、光のサインを屋内向けに活用できないか。この課題に応えるため、ビル用のダイナミックサインにシフトチェンジしました。

ダイナミックサイン専用のプロジェクターを開発

ビルにダイナミックサインを導入するには、ハードとソフト、両面からの開発が必要です。どのような形のプロジェクターが最適なのか。検証した結果、腰の高さから照射することで、人影にも隠れにくいプロダクトにたどり着きました。

ソフト面では、ダイナミックサインを簡単に操作できるアプリケーションを開発。タブレット上でアイコンを動かすと、プロジェクターから照射されたダイナミックサインが連動し、ワンタッチで床や壁に配置できます。これによって曜日や時間帯、建物内の状況などに合わせてサインの切り替えが自在になります。印刷されたサインにはない可変性が最大の特長です。同時に、印刷代や施工代が不要になり、コストカットもかないます。

2018年には武蔵境駅でユーザーテストを実施しました。2019年には武蔵野の森総合スポーツプラザで行われた車椅子バスケットボール大会でユーザーテストを実施。その後もアップデートを重ねています。こうして、ダイナミックサイン専用のプロジェクター「てらすガイド」をリリースするに至ります。

世界に先駆けて挑む、ダイナミックサインの国際標準化

今後はビルにとどまらず、駅や空港など、さまざまな施設にてらすガイドを普及させていきます。エレベーターやエスカレーターと連動させる研究を進めているほか、施設を動き回るロボットとも連動させて、ロボットが動く方向を知らせる仕組みを開発したい。てらすガイドを通じてダイナミックサインが浸透し、人の動きや営みをアップデートできたら最高です。

もうひとつ取り組んでいるプロジェクトが、ダイナミックサインの国際標準化です。今後、世界中でダイナミックサインが増えると予想されていますが、サインに一定の統一感がないと、混乱を招きかねません。そこで、産業技術総合研究所と共同でダイナミックサインの国際規格を提案することになりました。2015年にはISO(国際標準化機構)に働きかけ、現在はルールを策定中です。この研究所で生まれたダイナミックサインが世界中で使用されるようになったら、感無量ですね。今後も実現に向けて、まい進したいと思います。

三菱電機株式会社 統合デザイン研究所
デザイナー

坂田 礼子

2011年入社
インターフェースデザイン部にて自動車機器のデザインを担当。
現在、産業システムデザイン部で昇降機やビルシステムのコンセプトデザインとダイナミックサインの人間工学研究を担当。