このところ、ニュースで耳にすることも多い「半導体」。その中でもパワーデバイス製作所で扱う「パワー半導体」は電気の消費量を減らし、効率よくエネルギーを使用するために、なくてはならないキーデバイスとして需要が急伸長しています。拡大するマーケットに対応するため、重要なことのひとつが人材採用です。人事を担当して2年目の龍頭さんは、どのようにパワーデバイス製作所の環境への取り組みを応募者に説明し、どのような点を意識して採用活動を行っているのでしょうか。ご自身の環境への意識の変化についても合わせてお聞きしました。
「一隅を照らす」ように
環境問題にも向き合いたい
2022.02.28
脱炭素社会を実現するためのキーデバイスが「パワー半導体」
パワーデバイス製作所は、私たちの生活に欠かせないあらゆる分野の電気機器などに搭載されているパワー半導体を開発しているとお聞きしましたが、パワー半導体とはどのようなものなのでしょうか。
龍頭さん:半導体と言ってもいろいろありまして、半導体の中のひとつである「パワー半導体」を生産しているのがここ、パワーデバイス製作所です。パワー半導体は、電気の消費量を減らし、より効率よくエネルギーを使用するために、電力の制御を行います。メモリなどの情報通信関連の半導体が“頭脳”に例えられるのに対して、電力を制御する、コントロールするという意味でよく“筋肉”に例えられます。
御社で開発されるパワー半導体はどのような製品に使われているのでしょうか。
龍頭さん:当社が注力している分野としては、身近なエアコンや冷蔵庫などの家電製品に入っている“民生分野”、電気自動車に代表される“自動車分野”、新幹線や鉄道車両用の“電鉄・電力分野”、産業用ロボットなどのFA機器や風力発電などの再生可能エネルギーに関わる“産業分野”があります。家電などの民生分野は弊社が強い分野として、自動車分野は今後高い成長が見込まれている分野として、特に注力しています。
半導体と言ってもなかなか一般の方には理解が難しいですが、身の回りにあるどんなところにパワー半導体が使われていますか?
龍頭さん:身近なところでいうと冷蔵庫、洗濯機、エアコンなどの白物家電、電気自動車、鉄道、太陽光発電装置などでしょうか。
私たちは知らない間にパワー半導体にお世話になっているのですね。
龍頭さん:そうなんです。目に見えないのでなかなか難しいですよね。よくインバーターエアコンなどと言いますが、私たちが普段から何気なく使っているものにパワー半導体が使われています。
パワー半導体の市場は拡大しているということですが、注目されているのはどうしてなのでしょう。
龍頭さん:パワー半導体は電力量をコントロールすることによって、私たちの生活のあらゆる場面で省エネに貢献しているからです。脱炭素社会を実現するためのキーデバイスであり、さまざまな製品に搭載されています。
エンジニアから障がい者まで、多様性を重視する採用活動に従事
その中で、龍頭さんが関わっているお仕事はどのようなことでしょうか。
龍頭さん:採用業務と社員外従業員の管理、そして所内報の取りまとめ、編集をしています。
採用業務に関しては学生に向けての採用活動がメインで、エンジニアの採用を行っています。そのほか、中途採用や契約社員、派遣社員などの社員外採用・受入や障がい者の採用も関わっています。
採用業務ではパワーデバイス製作所についてどのような説明をしていらっしゃいますか。
龍頭さん:パワーデバイス製作所の特長をお話する時に主に2つお話をしていています。1つめが、家電や太陽光発電などパワー半導体は用途分野が広く、社内でも様々な事業でパワー半導体製品が活用されており、社外だけでなく社内にもお客様がいるという点で、事業シナジーを象徴する事業の一つであることをお伝えしています。
2つめが、事業そのものが社会課題の解決に寄与できるという点です。環境問題が世界的に叫ばれている中で、より省エネ性に優れたパワー半導体を提供することで、脱炭素社会の実現に貢献することができます。つまり、製品を通じて環境へ貢献できることを伝えています。
実際にパワー半導体を製品に組み込んで使う事業部門が社内にあるというのは強いですね。
龍頭さん:はい、社内ですぐに製品に関するフィードバックがもらえますし、それを製品開発に活かすことも期待できます。
応募者の方も省エネや環境への関心がある方が多いですか?
龍頭さん:そうですね、応募者の方も「幼い頃から環境問題の関心があって」と志望動機を話される方もいらっしゃいますし、中には明確に「環境問題への貢献のために半導体の設計開発に携わりたい」とおっしゃる方もいます。
採用する時に重視することはどんなことでしょうか。
龍頭さん:優秀かどうかよりも、当社に合うかどうか、当社で活躍していただけるかどうかというところを一番重視しています。
昨今、採用活動にも多様性(ダイバーシティ)が求められていますが、そういったことを意識した採用はありますか。
龍頭さん:性別や年齢、国籍、障がいの有無、LGBTQや働き方なども含めた多様性を尊重するために「ダイバーシティ推進室」を設けています。たとえば新卒採用に占める女性比率の将来目標を定め、積極的に採用活動に取り組んだり、障がい者や外国人を継続的に採用するなどしています。
女性の割合はどれくらいですか。
龍頭さん:女性のエンジニアの採用にも力をいれたいなと考えているのですが、エンジニアの母数が少なく、女性はまだまだ少なくて毎年1~2名というところです。
課題にぶつかったら、まず自分で答えを出してみる
所内報の編集やとりまとめもされているということでしたが、どのような内容のものを作っているのでしょうか。
龍頭さん:当社のパワーデバイス製作所は、この福岡で主に設計開発をして、マザー工場のある熊本で製造をするという体制になっています。広島県福山市にもパワー半導体の新たな製造拠点ができましたので、一体感の醸成がなかなか難しいという課題があります。ですので、所内報ではそれぞれの拠点の活動を紹介したり、経営戦略の周知をするといった内容を中心に載せています。
今お話をお聞きしているこの「パワーデバイス イノベーション センター」(PI棟)と呼ばれる建物にもさまざまな環境配慮がされているということですが、どのような工夫がされているのでしょうか。
龍頭さん:先ほど見ていただいたように、トップライト(天窓)によって自然採光がふんだんに入るので、その分照明の利用を減らしたり、人のいないところは自動的に照明が消える人感センサーなどもあります。そのほか、自然換気システムの導入や空調の省エネ技術などによって560MWh(メガワットアワー)、一般家庭120世帯分に相当する省エネ効果を実現しています。環境性能につきましては、福岡市からも高い評価を頂いております。
中央の吹き抜け周辺には打ち合わせスペースもたくさんありますね。
龍頭さん:はい、他の事業所や海外と打ち合わせをしたり、リラックスしてアイデア出しをしたりとコミュニケーションの場として活用されています。私も他部門との打ち合わせがある時によく利用しています。
事業所内には、水路なども残されていますが、その保全活動などについてご存知でしたら教えてください。
龍頭さん:水辺に生い茂った雑草などを除去するなど定期的な水路の清掃をしています。ただし野生の鴨の住処ともなっているので、産卵するエリアにはあえて、草の部分を残すなど工夫をしています。また、川に流す水も空調機に使用する冷却水を利用するなど水の循環も考えています。
その他、業務の中で、環境負荷を抑えるアクションなど行っていたら教えてください。
龍頭さん:パワーデバイス製作所全体でペーパーレス化を進めています。私の業務も契約関連や派遣関係で契約書や帳票が多く、紙をなくしていくのは大変なのですが、なるべく早く電子ファイル化を進めていきたいと思っています。
お仕事で何か課題にぶつかった時にどのように解決していらっしゃいますか。
龍頭さん:まずは自分で考えることを意識しています。学生時代と異なるのは自分なりの答えを出すことを求められることです。まず自分で一旦考えて自分なりの答えを出した上で、どうですかと先輩にアドバイスをいただき、それをもって「自分はこう思います」と上司に言うようにしています。
また、仕事をする上で一番やりがいがあると感じる時はどんな時でしょうか。
龍頭さん:やはり私自身が採用や管理業務で関わりを持った従業員の方が実際にいきいきと働いている姿を目にすると、やってよかったなと感じます。
温暖化問題は小学校から学び、気候変動の影響を肌で感じる世代
日本も2050年までにカーボンニュートラルを目指すことが言われていますが、CO2の8割はエネルギー関連から排出されていると言われています。パワー半導体は再生可能エネルギーにも大きく関わるデバイスですので大変重要です。パワーデバイス製作所の事業はどのような点で脱炭素に寄与すると思いますか。
龍頭さん:私たちの今の生活の中で電気を使わない生活は無理だと思います。使わざるをえないものです。発電のところは難しい問題もありますが、作られた電気をどう使っていくか、そこに貢献していくのがパワー半導体だと思います。生活のあらゆる場面で使えますし、それを積み上げていけば大きな削減になります。より省エネ性に優れたパワー半導体製品を提供することで、脱炭素社会の実現に貢献することができると考えています。
国内外で特に若い世代の気候変動に対する危機意識が大きく高まっています。龍頭さんも若いですが、環境の変化について考えることはありますか。
龍頭さん:私たちの世代は小学生の頃から環境問題について勉強してきました。物心ついた頃から地球温暖化があり、小学校でも数ある環境問題の中から関心のあることを発表するといったような経験もあります。一方で自ら大きな声を出して発信したり、日常生活を送りながら先頭に立ってやっていくことは難しいという現実もあります。環境問題に関心のある友人と話していても「無力感を感じる」というのが私たちの気持ちとして正直なところでしょうか。
なるほど、龍頭さんの世代は小学校から環境教育があったのですね。環境のことで特に関心のある事はありますか。
龍頭さん:実家が農家で、幼い頃からおじいちゃんのお手伝いをしていました。最近は、気候変動の影響のせいかひどい大雨が降ることが多く、お米が今年もちゃんとできるかなと心配することが多くなりました。また、食べ物や洋服など、大量生産、大量廃棄の社会構造も気になります。
そういったことに対して具体的に行動していることはありますか。
龍頭さん:地球環境に完全にクリーンな生活をしているかといったらそうではないですが、今の生活と共存できる範囲内でできることをやっていくことが重要だと思っています。小さいことですが、地域のリサイクルボックスを使う、マイバックを持参するなどは習慣にしています。休日も早寝早起きを徹底し、無駄な電気を使わないことも意識しています。先ほどお話した環境に意識の高い友人からのシェアでエシカルな製品を使ってみることもあります。
持続可能な社会のために、私たちができることは何だと考えますか。お仕事でもご自身の生活でも今後取り組みたいことなどがあれば教えてください。
龍頭さん:一人一人が自分のできる範囲内で環境を意識した行動を日々実践していくことだと考えます。私の好きな言葉で福岡出身の医師、中村哲さんの「一隅を照らす」*1という言葉があります。日々の生活の中では、環境問題を今すぐに解決するようなアクションはできませんが、各人ができることを大小問わず実践することで、持続可能な社会に向けて少しずつ前進していけるのではと考えています。
- *1「一隅を照らす」:もともと天台宗の開祖、最澄の言葉で、「一人ひとりが自分のいる場所で、自らが光となり周りを照らしていくことこそ、私たちの本来の役目であり、それが積み重なることで世の中がつくられる」という意味