サステナビリティマネジメント
社会課題解決と事業成長を両立する 「トレード・オン」事業の創出
環境の悪化が自然環境と社会を脅かしている今、地球に生きる一員として、私たちには未来を創る選択をすることが迫られています。
このような状況の下、三菱電機グループでは、地球規模の社会課題解決と事業成長を両立させる「トレード・オン」の実現を目指しています。
中でも、カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミー、ネイチャーポジティブを掛け合わせた領域に三菱電機グループのビジネスチャンスがあると考えています。自然資本の損失を食い止め、回復させることに主眼を置いた「GIST*1プロジェクト」を2023年度に立ち上げ、他社との共創、産官学でのオープンイノベーションも視野に、事業創出を図っているところです。
そして、この事業創出を支える上で欠かせないのが「循環型デジタル・エンジニアリング」によるイノベーションです。三菱電機グループがこれまでに幅広い分野で培った技術力や知見をはじめとする多様なデータの利活用を基に、サステナビリティに資する新しいソリューション を提供することで、様々な社会課題解決に貢献するとともに、収益性の向上にもつなげられると考えています。
- 1 GIST:Global Initiative for Sustainable Technology
経営基盤の強化
このようにチャレンジングな事業創出に取り組む上で、足元の経営基盤の強化は必須です。まず、2050年のバリューチェン全体でのカーボンニュートラル実現を見据え、2030年の自社カーボンニュートラル、廃プラスチック100%有効利用等を目標に掲げ、グループ内でのカーボンニュートラル、サーキュラーエコノミーを着実に推し進めています。また、事業活動の基盤である従業員はもちろん、ステークホルダーとして関わるあらゆる人を尊重すべく、国際規範に則った人権の尊重やDE&Iの促進にも取り組んでいます。さらに、CSRD*2、CSDDD*3、エコデザイヱ指令*4等を始めとした、日々更新されるサステナビリティに対する国内外の各種法規制への対応や、非財務諸表の経営管理プロセスへの統合、対外開示も重要な課題です。こうした動向に常にアンテナを張り、適格に対応していきます。
サステナビリティに関する活動を行う部門が一つの本部として統合され数か月が経ちますが、三菱電機グループがサステナビリティ経営の両輪としている「事業創出」と「経営基盤の強化」の活動がより包括的に推進しやすくなったと感じています。この体制の下、専門性を携えた従業員一人ひとりの知見を結集し、さらなるサステナビリティ・イノベーションに挑戦してまいります。
- 2 CSRD:Corporate Sustainability Reporting Directives。欧州における企業のサステナビリティ情報開示に関する法令
- 3 CSDDD:Corporate Sutainability Due Diligence Directive。欧州における企業の持続可能性デューディリジェンス実施を義務化する法令。
- 4 欧州におけるエネルギー関連製品に対する環境配慮設計を義務化する法令
サステナビリティの考え方及び推進体制
サステナビリティの考え方
三菱電機グループは、事業を通じた社会課題の解決という原点に立ち、サステナビリティの実現を経営の根幹に位置づけています。社会からの期待や要請・意見を活動に反映させ、社会や環境に与えるネガティブな影響を最小化し、持続可能な社会の実現に向けて取り組んでいます。
サステナビリティの実現に向けた推進事項
サステナビリティの実現に向け、以下の4点を推進事項としています。
価値創出 | 事業成長と社会の持続可能性を両立させる社会課題解決型事業の創出・発展 |
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基盤強化 | 三菱電機グループの持続的成長を支える、環境、社会、ガバナンスを始めとした経営基盤強化 |
リスク管理 | 長期的な社会や環境の変化に対するリスクの予測、及び企業経営に与える影響の抑制又は最小化 |
取組みの 開示と対話 | 透明性の高い情報開示を通じた、社会・顧客・株主・従業員を始めとするステークホルダーとのコミュニケーションにより、社会からの期待や要請・意見を企業経営に反映 |
サステナビリティ推進体制
三菱電機グループは、三菱電機の執行役会議から委嘱を受けたサステナビリティ委員会で、サステナビリティの取組みに関する方針・計画を決定しています。サステナビリティ委員会はサステナビリティを担当する上席執行役員が委員長を務め、コーポレート部門で機能別の役割を担当するチーフオフィサーのほか、事業部門の執行役等で構成しています。
サステナビリティ委員会での議論の内容は、執行役会議及び取締役会に報告されます。取締役会では、サステナビリティ経営を三菱電機グループの「重要議題」とし、リスク管理及び収益機会としての観点から十分に議論するとともに、執行役のサステナビリティへの取組み状況についても監督しています。サステナビリティの取組み推進については、執行役の報酬指標の一つになっており、サステナビリティ・ESG関連領域等非財務事項での業績指標達成度はインセンティブ報酬へ反映されています。
複数部門に関わるサステナビリティ課題に対しては、サステナビリティ委員会の下に設置した部会やプロジェクトで取り組んでいます。倫理・遵法、品質の確保・向上、環境保全活動、社会貢献活動、ステークホルダーの皆様とのコミュニケーションなどの具体的な取組みについては、担当部門が責任を持って推進しています。
サステナビリティ委員会で定めた方針・計画や部会・プロジェクト等で推進する具体的な取組みについては、社内各部門・国内外関係会社に共有し、グループ全体で連携して課題解決に取り組んでいます。
なお、2024年4月には、サステナビリティの実現に向けて体制を強化しました。従来のサステナビリティ推進、環境推進、DE&I等を統合するとともに、社会課題を解決する新たな事業創出の機能を持つサステナビリティ・イノベーション本部を新設しました。
会議体名称 | 目的、主な議題等 |
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サステナビリティ委員会 | 三菱電機グループにおけるサステナビリティの取組みに関する方針、計画の議論、情報共有(四半期毎に開催) |
カーボンニュートラル部会 | 三菱電機グループのカーボンニュートラルに関する取組みの推進 |
人権部会 | 三菱電機グループにおける人権に関する取組みの改善、課題解決等の迅速な対応 |
法定開示プロジェクト | グローバルなサステナビリティ法定開示に対応するための活動の推進 |

- 機能別の役割を担当するチーフオフィサー
バリューチェーンにおける取組み
三菱電機グループは、身近な家電製品から国家規模のプロジェクトや人工衛星まで、多岐にわたる事業によって社会に影響を与えており、バリューチェーンも拡大しています。
それらを認識し、マテリアリティ(重要課題)を中心に、バリューチェーン全体でサステナビリティの取組みを推進しています。
ステークホルダーとのコミュニケーション
ステークホルダーエンゲージメントの考え方

三菱電機グループのステークホルダー
三菱電機グループでは、ステークホルダーの皆様からいただく要請や意見は、持続可能な社会の実現に向けた取組みを推進するために、非常に重要であると考えています。
そのため、あらゆる機会をとらえて様々なステークホルダーとコミュニケーションをとっており、皆様からいただいた意見等は、サステナビリティ委員会を通じて経営層も含めて社内で共有し、様々な取組みに反映しています。
三菱電機グループのサステナビリティに関するアンケートの実施
三菱電機グループのサステナビリティの取組み及び「サステナビリティレポート2023」に対して、国内のステークホルダーの皆様を対象にアンケート調査を行いました。総合的な評価に加え、「ステークホルダーとの対話・共創への期待」に関する質問では、自社の技術や知見から新しい価値を創出しようとする三菱電機グループと法人・個人のお客様との共創をはじめ、事業所周辺の地域社会や、学術機関・研究機関、株主・投資機関とのコミュニケーションへの期待が寄せられていることがわかりました。また、三菱電機グループと従業員との対話についても引き続き関心が寄せられています。
アンケート実施時期
2023年12月
アンケート対象者
日本在住の一般男女・15歳以上 600名(サステナビリティへ関心が高い方々)

従業員への浸透
三菱電機グループでは、従業員のサステナビリティへの理解を促し、事業を通じた社会課題解決にグループ一丸となって取り組んでいくため、様々な社内浸透策を実施しています。主な施策は次のとおりです。
主な社内浸透策
対象 | 取組み内容 |
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経営層 | サステナビリティ講演会の開催 役員やサステナビリティ委員会の委員等に対して、サステナビリティに関する社会的視点の変化や最新の業界動向について、有識者からお話を頂く講演会を開催しています。 |
国内関係会社 | 三菱電機グループ総務部長会議でのサステナビリティの情報共有 毎年実施する国内関係会社の総務部長によるコンプライアンス等に関する会議のなかで、三菱電機グループに共通するサステナビリティの方針や取組み等についての情報を共有しています。 |
海外関係会社 | 各地域でのサステナビリティ推進活動 三菱電機グループの海外関係各社でも、サステナビリティを推進するための委員会を運営するなど、それぞれの地域に則した活動を行っています。 |
サステナビリティ 担当者 | サステナビリティ担当者研修の実施 三菱電機の各事業所のサステナビリティ担当者と国内関係会社のサステナビリティ担当者を対象に、サステナビリティの基本的な考え方、社会からの要請、三菱電機グループのサステナビリティの取組みについて学ぶ研修を実施しています。 |
グループ従業員 | 研修や社内報を通じたサステナビリティの理解促進 三菱電機や国内外関係会社の従業員がサステナビリティについて学習できるよう、eラーニングの教材を展開しています。また、国内外の関係会社に配布している社内報で、日本語と英語にてサステナビリティに関する取組みを紹介しています。 |
新入社員 | サステナビリティ研修の実施 三菱電機の新入社員に対するサステナビリティの研修を実施しています。経営の根幹に位置付けたサステナビリティへの理解を深め、日々の業務において倫理・遵法を徹底し、品質や環境問題などに取り組むことの重要性を認識する機会としています。 |
サステナビリティ教育に関する従業員意識サーベイ
SDGsを含めたサステナビリティに関するeラーニング等の教育の後、従業員一人ひとりの理解浸透度を意識サーベイで確認する等、様々な形で従業員への浸透を図っています。
経営理念に沿った業務の実施 | 67% |
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コミュニケーション状況
事業活動を行う上で、ステークホルダーとの強い信頼関係は必要不可欠です。ステークホルダーに三菱電機グループをご理解いただくとともに、期待や要請・ご意見を伺う多様な機会を設けています。
主なステークホルダー
顧客
個人、法人のお客様
責任と課題
- お客様満足度の向上
- 商品の安全性、品質の確保
- お客様への対応、サポート
主な窓口となる部門
- 営業部門
- 品質部門
主なコミュニケーションの機会
問い合わせ窓口(家電:お客さま相談センター、ビルシステム:情報センター等)、営業活動、ウェブサイト、ショールーム、イベント、展示会、お客様アンケート、メディア・CM
主なステークホルダー
従業員
三菱電機グループにかかわる労働者全般
責任と課題
- 労働安全衛生の確保
- 人権の尊重
- 人財育成
- 多様性の尊重
主な窓口となる部門
- 人事部門
- サステナビリティ推進部門
主なコミュニケーションの機会
ホットライン、イントラネット、社内報、各種研修、経営層と従業員のミーティング、従業員意識調査
主なステークホルダー
政府・自治体・業界団体
三菱電機グループの事業活動にかかわる政府機関、自治体、業界団体
責任と課題
- 法令遵守
- 規制への対応
- 政策への提言
主な窓口となる部門
- 渉外部門
主なコミュニケーションの機会
各種審議会・委員会への参画、業界団体・経済団体の活動への参画
主なステークホルダー
NGO・NPO
三菱電機グループの社会・環境面にかかわるNGO・NPO、市民団体等
責任と課題
- 地域社会への貢献を通じた助成とパートナーシップ
- 社会・環境面の対話
主な窓口となる部門
- サステナビリティ社会貢献活動推進部門
主なコミュニケーションの機会
主なステークホルダー
取引先
原料・部品の調達先であるビジネスパートナー
責任と課題
- 公正な取引の徹底
- サプライチェーンにおけるサステナビリティへの取組み推進
主な窓口となる部門
- 資材部門
主なコミュニケーションの機会
主なステークホルダー
地域社会
事業所周辺地域
責任と課題
- 社会貢献活動の4つの活動分野(社会福祉、科学技術、地球環境保全、文化芸術・スポーツ)への貢献
主な窓口となる部門
- サステナビリティ推進部門
主なコミュニケーションの機会
主なステークホルダー
株主
三菱電機グループの株式を直接・間接に保有する株主・投資機関、投資家等
責任と課題
- 企業価値の向上
- 適正な利益還元
- 情報開示
- ESG投資への対応
主な窓口となる部門
- IR部門
主なコミュニケーションの機会
主なステークホルダー
学術機関や研究機関
責任と課題
- イノベーション創出への協働
- 共同研究
主な窓口となる部門
- 研究開発部門
主なコミュニケーションの機会
主なステークホルダー
将来世代
責任と課題
- 教育機会の提供
主な窓口となる部門
- サステナビリティ推進部門
- 海外財団
主なコミュニケーションの機会
問い合わせ窓口、社会貢献プログラム、授業支援、工場見学、財団を通じた助成、イベント、METoA
2023年度の取組み例
地域社会
小学生を対象にした「デザイン思考」による授業支援

「デザイン思考」による授業支援の風景(千葉県印西市原山小学校)
統合デザイン研究所では、小学生向けのワークショップ型授業を教育機関とともに行っています。地域社会とのコミュニケーションを通じて多様な考え方に触れることで、我々自身も新しい気づきを得られます。小学生が身近な課題として取り組めるよう、ゴミ問題や町の活性化等、地域の課題をテーマに2021年度より継続し、2023年度は千葉県印西市の原山小学校で実施しました。
授業で活用しているのは「デザイン思考」という方法です。現状を観察・理解し、何が解決すべき課題かを考え、さらにその課題を解決するために皆で議論しながらアイデアの検討を進めます。未来の主役である子どもたちがこの授業を経験し、自分達の未来を自ら考え、より良くしたいという気持ちを持つことが、サステナブルな社会の実現につながるとの考えから、この活動を続けています。
従業員
経営層と従業員の直接対話
三菱電機では、経営層と従業員が双方向での意見交換を行う対話集会を各事業所で開催しています。2023年度は、小規模単位のタウンホールミーティング形式で455回実施し、従業員からの多彩な意見が様々な改革に活かされています。