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個性を磨き、幅を広げるそれが未来をデザインする原動力に

三菱電機株式会社 統合デザイン研究所
デザイナー
各務 里奈・久保田 百合・上甲 志歩・
三浦 美怜・三井 進平
各務 久保田 上甲
三井 三浦

入社1年目の仕事と、その中で特に印象に残っていることを教えてください。

各務
海外向け空調製品のプロダクトデザインを主に担当しました。なかでも印象深いのが、中国向け家庭用空調機器の開発に初期段階から携わったことです。まずは現地のニーズを探るところからスタート。中国市場の事例を収集し、潜在的な価値観にまで踏み込みながら仕様を議論しました。寝室に鏡を置くのは風水的に好まれないため、ミラー調の仕上げは避ける。色から受ける印象も日本人とは異なるので、関係会社の中国の方にヒアリングをして、カラー展開を考える。新型コロナウイルス感染症の影響で現地調査は叶いませんでしたが、設置場所や使用シーンの画像を注意深く観察、製品構造から見直しを実施し、意匠性・操作性ともに現地の暮らしにマッチするスタイリングに落とし込むことができました。グローバルな開発において、各国の潜在ニーズを探る時間は今後も大切にしたいです。
久保田
私は1年目から現在まで、病院内で薬剤を搬送するロボットの開発に携わり、UIデザインを担当しています。普段は病院と接点がないため、ロボットを使う医療従事者がどのように行動し、どんなものに使いやすさを感じるのかを探るのに苦心しているところです。また、操作のルールや文字表記、ボタンなども一つ一つを丁寧に設計する必要があるのだと肌で学んでいます。展示会に向けたコンセプトカー制作では、搬送ロボットの未来コンセプトのGUIを担当。デモンストレーション用のUI、ロボットの動きや表情といったインタラクション、デモ映像のディレクションを手掛けました。展示用のモックができていく過程を間近で見られたのが印象的です。
上甲
入社するまでデザインを専門的に学んだことがなかったので、まずはデザインソフトの習得から始まり、徐々に実務にシフトしていきました。そんな中でも、はじめて一からデザインしている、風況データを可視化するUI画面開発が印象に残っています。「デザインは発想がものを言う世界」という先入観がありましたが、そうではありませんでした。ユーザーを観察し、意見交換をもとに要点を整理して、デザインに落とし込んでいく。論理的に考えれば使いやすいデザインは導き出せるのだと、自信を持つことができました。
三井
私が1年目に携わったのは、海外向けの冷蔵庫のUIデザインです。操作ボタンや表示部の一つ一つについて、製品コンセプトに沿うよう、大きさや色、配置を検討していきました。しかしここで直面したのが、設計上の制約です。配線経路などの実現性と、ユーザビリティと高級感や先進性を感じさせるデザインを両立させることがこんなに難しいとは。製品の機械的な構造への理解を深め、設計部門と密にコミュニケーションを取ることで、着地点を見出すことができました。同時に、ここでは幅広い知識が求められるのだと実感しました。
三浦
私は興味の幅を広げるためにさまざまな業務に携わりました。その中で特に印象に残っているのが、液晶テレビを活用したサービス付き高齢者住宅向けコミュニケーションサービスの画面UI開発です。私はユーザビリティを検証する評価実験を先導して行いました。高齢者へのインタビューを通して、開発時に気がつかなかった高齢者ならではの課題を抽出し改善に活かすことができ、プロジェクトの初期段階からユーザーの声を取り入れることの重要性を実感。同時に、ユーザーがはじめて手に取ったときから迷わず快適に使えるような、ユーザーの日常になじんだ製品・サービスを提供したいと今まで以上に考えるようになりました。

働いてみて、驚いたことや想像と違ったことは何ですか?

上甲
私が驚いたのは、事業分野の幅広さです。所属している部門だけでも、電力、工場、車両。こんな業界にも三菱電機が関わっていたなんて。その上、ドローンや空飛ぶ車向けの風況データの利活用など、新しい分野にもフットワーク軽く取り組んでいる。もともといろいろなことにチャレンジしたい性分なので、この手広さが刺激的です。
久保田
同感です。車載グループに配属された当初は、漠然と「カーナビなどを専門的に手掛けるのかな」と思っていましたが、全然違いました(笑)。病院向けの搬送用ロボットをはじめ、狭域自動運転システムのUI、車載機器から派生するサービスなど、全く想像できなかったほど幅広い分野のデザインに関わっています。
三井
広く深く、どちらにも成長できますよね。統合デザイン研究所で取り組む、未来価値を洞察する活動でもそれを感じています。社会変化の兆しをもとに、今後の価値観の変化を洞察して議論し、新たな事業のヒントにしていくものです。家電はもちろん自動車、インフラ、医療などを総合して考える必要があるので、おのずと知識の幅も広がります。
各務
所属を超えてつながり、ディスカッションしながら未来を探索していると、「一人一人がデザイナーであり、研究者でもある」という統合デザイン研究所らしさを実感します。研究活動も想像以上に活発で、驚きました。
三浦
新事業の介護・福祉施設向け見守りサービス「MelCare®(メルケア)」は、統合デザイン研究所が主体となって、それこそ部門を横断しながら研究していたんです。何年間も研究してきた所内のプロジェクトが事業化される様子を見て、刺激を受けました。一方で、事業化する難しさを強く感じたプロジェクトもあります。そのプロジェクトは、取り組む内容にユーザーニーズはあったのですが、実現するための開発費用がかかりすぎることから中断せざるを得ませんでした。研究開発には「投資回収ができるかどうか」という視点が不可欠なのだと痛感しました。
久保田
この問題は、プロジェクトが進んでもついて回りますね。かといって、コスト面をクリアするためにデザインを妥協することはできない。デザイナーとしてベストを追求する姿勢は忘れずにいたいです。
各務
まずは理想だと思うデザインを提案し、設計者と密にセッションしながら、コストやユーザビリティなどの現実的な着地点を探っていく。それも私たちデザイナーの重要な仕事の一つですね。

学生時代に学んだことは、今の仕事にどう活かされていますか?

三井
学生時代のものづくりの経験がそのまま活きています。まず課題を発見し、問いを立てる。それを解決するアイデアを練り、形にして、工学的視点から効果を検証する。このフローが身に付いていますから、初めてトライするような仕事でも、途方に暮れることはありません。また、エンジニアリングのスキルも役立っています。例えば海外の市場調査をするとき、いろいろなウェブサイトを隅々まで読むのではなく、必要な情報を抽出して分析できるプログラムを書く。調査を効率化できますし、得られた定量データが新たな提案の足掛かりになるんです。
久保田
三井くんと同じで、学生時代に身に付けたものづくりへの基本姿勢がアドバンテージとなっています。私は工学部でデザインを専攻し、本質的な問題点やニーズを探ることを学びました。仕事でもこの姿勢を活かして、依頼内容をそのまま引き受けるのではなく、より深く考える。ときには「こういう機能があるとより良いのでは?」とデザイナー視点から提案を加えることもあります。
上甲
私もロボット工学専攻という少し変わったバックグラウンドですが、そのぶん異なる視点から意見を出せるのは強みかもしれません。また、VRやプロジェクションマッピングを研究した経験は、今担当しているデータビジュアライゼーションの仕事で大いに活かされています。
各務
私は美術大学でプロダクトデザインを専攻し、製品のスタイリングだけでなく、商品企画やサービスの考案なども経験しました。そのとき時間をかけたのは、言葉のチョイス。作品のタイトルや概要、ストーリーなど、一語一語を検討しながら伝え方を探りました。この経験は、特に未来像を創出するためのシナリオづくりに役立っています。個々人が思い描く未来像は、ほかの誰も経験したことがなく、不確かなもの。でも、言葉を吟味して伝えるとイメージを共有でき、議論も活性化するんです。
三浦
とてもよく分かります。私は製品の広報発表など社外向けの発信をする仕事も多く、そのたびに言葉の大切さを実感しています。私自身は、学生時代に感性工学や人間工学を学びました。このとき身につけた「人中心」の視点が仕事で生きています。「本当に使いやすいのか」「この時、どんな感情でどんな影響を受けるのか」。心理学や生理学の知識も用いながら、常に「人中心」の考察に努めています。

今後頑張りたいことや、トライしたいことは何ですか?

各務
最新技術やトレンドの知識をさらに増やし、未来の潮流を探る力を高めたいです。幸い、ここは成長意欲を応援してもらえる環境です。先日も上長から紹介いただいた社外ワークショップで、テクノロジーの発展が人々にどのような影響を与えるのか、社会変化の兆しを共有して問いを探るディスカッションに参加しました。社内外問わず、知見を広げる機会を積極的に活用していきたいです。
久保田
私はUI・UXデザインを軸に、まずは基礎的なスキルをの拡充はもちろん、それらを実装したインタラクティブなコンテンツ制作、プロトタイプ制作も頑張りたいです。同時に、新しい表現や他業界のトレンド、新しいツールも学んで、引き出しを増やしたいと考えています。研究所の外にもアンテナを張るべく、引き続き社内外の勉強の場に積極的に参加したいです。
上甲
コンセプト立案から制作、評価まで、開発のプロセス全体に関われるよう成長したいです。各分野のエキスパートともコミュニケーションできる知識を持ちつつ、プロジェクト全体を見渡す視点も兼ね備えていれば、より良いものづくりにつながるはずですから。久保田さんと一緒に取り組んでいる、自由にテーマを決められる研究所内の公募型プロジェクト「Design X®」も引き続き頑張ります。
三井
仕事の幅広さに合わせて守備範囲を広げ、同時に自分ならではの軸としてデザインエンジニアリングを追求したいです。市場動向や設計上の制約とも向き合いながらデザインし、そのプロトタイプを作って検証する。こんな具合に、デザインとエンジニアリングを自在に行き来しながら、価値ある製品やサービスの提案を行っていきたいです。
三浦
私はアプリ開発に関わるグループに所属していることもあり、今はプログラミングに興味があります。自分たちのアイデアを簡易的に目に見える形にして動かしたい。そうすれば、スピード感のある検討ができますから。そのためにはやっぱり勉強です。皆さんも話されているように自己研鑽をサポートする風土があるので、前向きにステップアップしていきたいと思います。

「MelCare(メルケア)」「Design X」は三菱電機株式会社の登録商標です。

三菱電機株式会社 統合デザイン研究所
プロダクトデザイナー

各務 里奈

2020年入社
大学ではプロダクトデザインを専攻し、モノを介在させることで生まれる新しいUX創出について研究、製品デザインを主軸に商品企画やサービス考案など幅広く取り組んだ。
現在は、国内外の空調冷熱機器のプロダクトデザインを担当。未来の社会変化に向けた将来像研究も手掛ける。

三菱電機株式会社 統合デザイン研究所
デザイナー

久保田 百合

2020年入社
大学院で産学協同研究や海外大学との連携活動を通してプロダクトからサービスまで多岐にわたるデザインを実践的に学んだ。
入社後は主に搬送ロボットや狭域自動運転システムなどのUIデザインを担当。モビリティに関わるコンセプト創出も行っている。

三菱電機株式会社 統合デザイン研究所
デザイナー

上甲 志歩

2020年入社
大学院で機械・情報・電気電子工学などのロボティクスに関する知識に加えデザイン思考を活用した人間中心のものづくりを学び、生体計測×VRの研究に従事。現在は、電力システム画面やセキュリティ画面など、法人向けシステムのUIデザインを担当。

三菱電機株式会社 統合デザイン研究所
デザイナー

三井 進平

2020年入社
大学院で数理情報工学を専攻。デザインやクラフト、エンジニアリングを実践的に学んだ。
入社後は海外冷蔵庫のUIやマーケティング戦略に従事。価値検証時のプロトタイピングなど、エンジニアリングデザインも手掛ける。

三菱電機株式会社 統合デザイン研究所
デザイナー

三浦 美怜

2020年入社
大学院で経営工学を専攻。感性工学や人間工学など人中心のモノづくりを多面的に学び、特に人の五感と購買行動に関する研究に取り組んだ。現在は、高齢者向けの製品やサービスの研究・開発に従事。プロトタイプのユーザビリティ評価等も担当。