コラム
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2002年 7月分 vol. 6
お台場で「火星への旅」 ――エレベーターで宇宙へ?
ライター 林 公代 Kimiyo Hayashi

── 夏休みには東京・お台場にある日本科学未来館で「火星への旅」が味わえる。宇宙への旅立ちはロケットではない。「エレベーター」で地球上空3万6千キロまで上昇してしまう・・・。

写真 「宇宙への旅立ちはロケットでなくちゃ」と実は私は思っているのだが、およそ100年後の未来を想定したこの企画展では「誰でも気軽に行ける火星旅行」をテーマにシナリオが描かれた。頻繁に宇宙と往復する時代になると、ロケットでは費用がかかりすぎるし、排出ガスが環境に悪影響を与える。そこで「軌道エレベーター」の登場、というわけ。

 旅立ちはモルジブのガン島から。軌道エレベーター内のほぼ水平のリクライニングシートに横たわる。約1.3Gの軽い重力を感じながら、約1時間半で地上約3万6千キロのステーションに到着。そこで火星ライナーに乗船。「これから100日間の火星への旅だゾ!」と意気込む必要はない。核融合を推進力とした火星ライナーは、約1週間で火星に到着してしまう。しかもこの宇宙船、約14秒で1回転することで0.4Gの人工重力を発生する。もちろん、「無重力をどうしても体験したい!」という人のために、回転の中央部には無重力スペースが設けられている・・・。

 軌道エレベーターの構想自体は1960年にロシアのアルツターノフ氏が発表しているし、アーサー・C・クラークは軌道エレベーターを扱ったSF「楽園の泉」を1980年代に書いている。だが現実には、静止軌道から数万キロぶら下げても切れないような素材がなかったために、実現は遠いと考えられてきた。ところが、「カーボンナノチューブ」の発見で軌道エレベーターの実現に可能性が見えてきた、という。

 まだ宇宙ステーションにも行っていない2002年の人間としては、いきなり気軽な火星旅行と言われても、なんだか先の話すぎて実感しにくい。でも1960年にすでに軌道エレベーターをまじめに検討した人がいるのは驚きだ。先の先を想像する力、それを受け継がせていく力。そういう力が文明をつくり、継承するために不可欠なのだろう。



松本零士と毛利衛の宇宙ロマン展 火星への旅
2002年 7月24日(水)~ 2002年 9月23日(祝) 日本科学未来館
http://www.uchu-ten.com/


イラストレーター長谷川正治さんのページ
http://www2.gol.com/users/ikkie/shoji/shoji1.html