コラム
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2002年 12月分 vol. 4
宇宙で「まくら」? ―― 眠りのエトセトラ
ライター 林 公代 Kimiyo Hayashi

スペースシャトルのベットで寝袋に入った宇宙飛行士。頭の上の小物入れはまくらの代わり?(提供:NASA) 通販ですごいモノを見つけてしまった。その名も「NASA夢まくら」。商品の解説には「スペースシャトル打ち上げ時にかかる重圧を効率的に分散させ、宇宙飛行士を守るために開発された特殊ウレタンフォームから生まれた新素材でやさしく包みます」と書かれている。通販の世界ではNASA=ハイテクの象徴らしい。でも宇宙でまくらは使わないのにな・・・。

 と思っていたら右の写真に出会った。スペースシャトルのベッドに入った宇宙飛行士。(ちなみにベッドは4段ベッド)。なんとなく頭の上にまくらを置いているようにも見えるでしょう?いくら無重力でふわふわ浮いてしまうから枕はいらないとは言え、だからこそ頭が枕にくっついていないと落ち着いて眠れない、という宇宙飛行士もいるのかも。

 宇宙の生活で、地上と一番変わるのは食事と並んで睡眠だ。だって時間の概念がまったく変わってしまうのだから。宇宙ステーションは90分で地球を一周してしまう。1日が90分。日の出と日の入りが45分ごとにやってくる。だから照明などを工夫して、強制的に体内時計にあわせた睡眠時間を確保しなければならなくなる。

宇宙ステーションには窓のついた個室の壁に寝袋がくくりつけてある。けっこう空調の音がするので耳栓をしたり、アイマスクをしたり、時には薬を飲むこともあるらしい。そして眠りに入っていくと、体の感覚が次第に薄れていく。この時の感覚を土井隆雄飛行士は「自分の意識だけが浮かんでいるようでした」と語っている。これを地上で体験できるのは、お母さんのおなかの中で浮かびながら眠っている赤ちゃんだけだろう。

 そして宇宙で見る夢は?秋山豊寛さんや毛利衛さんは、宇宙飛行前になくなったお母さんが夢に出てこられたそうだ。大きな仕事を終えて一番ホッとする人と夢で再会。偶然とは思うけれど、不思議な一致。

 そんな至福のひとときを打ち破るモーニングコール。宇宙ステーションでは目覚まし時計を使っているが、スペースシャトルでは毎日、地上のサポートチームが家族たちと選んだ音楽を流す。たとえばクリスマス前にはビング・クロスビーの「I'll be home for X'mas」が流れたことも。
やっぱりクリスマスは地球でないと。キャンドルの炎が宇宙じゃすぐ消えちゃうからね。