コラム
前のコラム リアルなプラネタリウム
次のコラム 「ケーキ」発「梅干し」着
2003年 1月分 vol. 1
1月のシャトル飛行。注目は「地上の」向井飛行士。
ライター 林 公代 Kimiyo Hayashi

 あけましておめでとうございマス。さぁ、今年も宇宙は盛りだくさん。H-IIAロケットは続けて3回ぐらい打ち上げられるし、3月に野口聡一宇宙飛行士が国際宇宙ステーションの建設めざしてリフトオフ。5月には90万人の名前を積んで小惑星探査機ミューゼスCがGo(その中には私の名も!)。10月には日本の宇宙機関が集まって新しく「宇宙航空研究開発機構」が誕生。大きいことだけでもこんなにあってDSPACEも忙しくなるだろーなー。

米国人以外で初めて副ペイロードサイエンティストのポジションにつく向井さん。(提供:NASDA) で、さっそく1月に注目したい宇宙ミッションがある。16日に打ち上げ予定のスペースシャトル・コロンビア号。国際宇宙ステーションの建設フライトが続く中、久しぶりの宇宙実験フライト。スペースハブという実験室を貨物室に積んで約80の実験を行う。

 なんで注目か、というと・・このフライトに向井千秋飛行士が深ーく関わっているから。実験の副責任者ペイロードサイエンティストとして世界中の研究者の実験調整をしてきて、本番では地上から運用を担当。このポジションは非常に重要で、これまでNASA以外の人が担当したことはない。向井さんが外国人ではじめて担当することになる。

 向井飛行士はこれまで2度の宇宙飛行で数多くの実験をこなしてきた。それ以外に2回の宇宙実験フライトで地上からバックアップ(宇宙飛行士の補欠。同じ訓練を受け本番では地上から宇宙実験をサポート)を勤めた。この4回の彼女の働きぶりは、NASAに高く評価されている。ドクターである向井さんはライフサイエンスの知識に富み、宇宙飛行士の状況と実験を提案する研究者の意図の両方がわかり、絶妙な橋渡しができる。宇宙実験ならチアキ。国籍でなく、「チアキ」がこなす仕事をNASAは必要とした。カッコいいなぁ。

 もう一つ注目したいのは、このフライトに日本の高校6校の実験装置が乗ること。たんぱく質の結晶が宇宙でどう成長するかをみる実験。12月末、日本とヒューストンの向井さんを結んで実験の打ち合わせが行われた。かなり高度な内容にも関わらず、向井さんと高校生が対等に議論しているのにはビックリ。どちらの表情もキラキラと輝いていた。

 とっても賢そうで近寄りがたかった高校生たちが打ち合わせの後、「学校さぼっても打ち上げ見に行きてー」と言ったときだけ「やっぱそうだよね!」と妙に気があったのでした。 タンパク質の実験を宇宙で手がけるのはイラン・ラモン。イスラエル人初の宇宙飛行士で、彼の飛行も世界の注目を集めている。



NASDA タンパク質結晶成長実験 ~STS-107 宇宙実験教育プログラム~
http://jem.tksc.nasda.go.jp/education/sts107/index.html