そう言えば、「リニアモーターカー」ってどうなったんだろう。その昔、「おもしろ実験」の類で定番だった液体窒素のシュワーッという煙の中に浮かぶ磁石を見て、 浮かびながら走る列車をイメージした頃もあったっけ。 すっかり忘れ去っていませんか? ところが、「宇宙」がリニアモーターカーの実現に一役買うかも知れない、というニュースが聞こえてきた。
昨年9月10日に、H-IIAロケットで打ち上げられた実験衛星「USERS」。(DSPACE取材班はその模様を現地取材させて頂きました!バックナンバー)USERSの中では、超電導材料の結晶成長実験が行われた。なぜ宇宙で? 地上では、結晶を作るときどうしても不純物が入って、質のよい大きな結晶はできない。
無重力の宇宙なら容器にふれることなく、結晶を作ることができるというわけだ。
10月から行われた宇宙での実験の結果、直径12.7cm×高さ2cmの超電導材料2個を作ることに成功。超電導材料は直径が大きいほど磁力が強い。この大きさで5テスラの磁場を発生できる。液体窒素温度(-196度)で超電導状態になる高温超電導材料で 『世界最強の磁石になる』と、実験を行った「無人宇宙実験システム研究開発機構(USEF)」はその成果をアピール。
-196度で高温とはオドロキだが、-269度の液体ヘリウムと比べているから。現在、リニア実験で使われているのは、液体ヘリウムで冷却する「低温」超電導材料。液体ヘリウムは扱いが難しいし輸入に頼らなければならず、値段が高い。一方、液体窒素は安いし元になる窒素は空気中に大量にある。リニア実現のためには高温超電導磁石実用化はクリアすべき重要課題なのだ。もちろんリニアだけでなく医療用、発電機など様々な分野への応用が考えられるとか。
回収カプセルは5月30日、小笠原諸島・南鳥島の南西約380kmにパラシュートを開いて降りてきた。実は日本の実験衛星を地上で回収に成功したのは始めて。しかも、予想エリア内に予想時間通り「きっちり」帰ってきたという100点満点の仕上がり。注目の「世界最強の磁石」がカプセルから取り出されるのは7月中旬ごろになる見込み。「made in space」の磁石の力を、あの実験で見せてほしいものですね。シュワーッと。
次世代型無人宇宙実験システム USERS
http://www.usef.or.jp/
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