日本人初の女性宇宙飛行士・向井千秋さんの夫、向井万起男さんは慶應病院の病理医であり、作家でもある。近著「ハードボイルドに生きるのだ」の話から始まったインタビュー第3回(第2回は6月でした。飛んじゃってゴメンナサイ)のテーマはズバリ「千秋さんとの夢」。
- 千秋さんとアメリカを放浪するのが夢だっておっしゃってましたね。
強固なる夢。女房と2人で。だってほら、一緒に暮らしてないじゃない。その分、取り返したいですよ。二人で旅行すれば一緒じゃないですか。バカ話しながら交代で運転して。いいですよー。バカ話がいいんだ、これが。
― 千秋さんってすっごい飛ばし屋みたいですけど。
でも今は安全運転。女房と旅行するとあきがこないんですよ。楽しいと思うなぁ。
― けんかしないんですか?
しない。あっちのほうがたくましいから、僕ついていくだけでいいし(笑)。
― やっぱり、ついていっちゃう。万起男さん、ジェットコースター弱いんですって?
ぼくダメ。あれ弱いのよ。ディズニーのスペースマウンテン、恐くてたまんなくて「冗談じゃないぜ」とか言って。あいつ何度も乗ってやんの。「また行って来るからね」って。
― ホント、対照的ですよね。
アメリカのドライブも女房の指導の下にぼくは動く。誰でも運転できる一本道だけぼくが運転して、都会が近づいたら「ハイ、タッチ。よろしく」(笑)。それに尽きるよ。
― 早く実現できるといいですね。
絶対実現しますよ。どんなことがあっても。こんなに離れてくらしているんだもん。たまったもんじゃないですよね。
― 放浪って言うのがいいですね。なんでアメリカなんですか
広大で、50州あるけど50カ国あるみたいなもんですから。滅茶苦茶見るべきものが多いですよね。
― 東海岸と西海岸だけを見たんじゃ、アメリカを見たことにはならない?
全くならない。東海岸と西海岸はアメリカの例外的な場所ですからね。やっぱり中西部ね。インディアナ、カンザス、ミズーリ、イリノイ、この辺ですよ。本当に見なくっちゃ。あとはメイン。マサチューセッツ、ニューハンプシャー、デラウェアとかあの辺。
― 数年がかりで。
そうそう。国立公園回るのもいいし、大リーグ球場回るのもいいし。マイナーリーグもすごいですからね。何年いても飽きないんじゃないかな。いやぁ本当にやりたいですね。
ところで、先日「少年カフカ」(村上春樹著「海辺のカフカ」の読者と春樹氏のメールのやりとり1220通分をまとめた本)をパラパラと読んでいたら、なんと万起男さんと春樹氏のやりとりを発見。私はニヤリとしてしまった。だって「ハードボイルドに生きるのだ」の中で、春樹ファンの万起男さんが「僕も春樹(のホームページ)にメールを送ったことがあるのに、返事が来なかった」と、ホントはメールを送っていないのに、冗談を書いてあったから。今度は本当に春樹さんにメールを送ったんですね!
万起男さんとのお話の最後に、個人的にとても気になっていることをお聞きしました。
― 読書が趣味で、週刊誌で「読書日記」を書いておられたってことは・・・蔵書、スゴイんじゃないですか?
どうしようかと思って。破壊寸前。 庭に書庫でも作らないとダメなんじゃないかって。
― 売る気はないんですか
絶対、売る気はないの。
― びしっと整理されてるんですか
結構ね。文章が浮かんで、あれっと思った瞬間に「あの本のあのあたりの右ページに書いてあったな」と右ページばっかりずっと探していくわけ。
― 視覚で覚えているんですか
そうね。まず間違えないですよ、ぼく。
― 本のありかも大体覚えている
もちろん。分類しているもん。宇宙関係、大リーグ、アメリカ、日本文学、西洋文学。作家別でもあるし。多い人は三島由紀夫、村上春樹、沢木耕太郎、立花隆、よしもとばななってコーナーがあるんですよ。きちっと。スティーブン・J.グールド、デヴィッド・ハルバースタム、すぐ出せますよ。本は。「あっ、あれはデヴィッド・ハルバースタムの『ベスト アンド ブライテスト』の第2巻の右ページだ」ってざーっと調べる。
― ひゃー、恐れ入りました・・・。
万起男さん、次の本も楽しみにしてますよ。千秋さんとの「アメリカ放浪」も読んでみたい!
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