アンコール・ワットは12世紀の初めに数十年の歳月をかけて建立した、当時の東南アジアで最大の建築物。でもこのアンコール・ワットより前に作られ、「アンコール文化発祥の地」と言われている地域があるんですよ。
右の写真は NASAの観測用航空機DC-8が合成開口レーダーで1996年に撮影したもの。アンコール・ワットからは南東の方角にあり、ロリュオス遺跡群と呼ばれています。その中心は画像の上方に四角く見える寺院「バゴン」。5層型ピラミッドを中心に周りを濠で囲んでいます。881年に作られ、アンコール王朝最初の王都「ハリ・ハラーラヤ」の中心だったとか。バゴンの北側にのびる参道の西に黄色く見えるのが、アンコール王朝で最も古く879年に作られた寺院「プリア・コー」。「聖なる牛」という意味で、このお寺には大きな3頭の牛が座っています。ヒンズー教で牛はシヴァ神の乗り物なんですね。
そして画像には写っていませんが、プリア・コーの北にはもう一つ「ロレイ」という寺院があります。ロレイは池に浮かぶ島にたつ寺院でした。東西3.8km、南北0.8kmもの大きな灌漑用の池の端の部分が、写真上部の端に沿って紫色に見えています。
この地域は未調査の寺院や城が他にたくさんあると言われていますが、熱帯雨林に覆われ、道路もあまり整備されず、地雷が撤去されていない地域もあり、地上の調査はとても困難。それだけに人工衛星や航空機を使って調べるのが有効です。特にレーダーを使えば、天候や昼夜関係なく調べることができるのです。
もう一枚写真を紹介しましょう。こちらの写真は、アンコール王朝より古い、紀元500年ごろにできたとされるロヴェア村の円形の集落。直径300mの集落の周りを環状の濠がとりまいています。雨季にここに水を貯めておくのです。画像左下には四角い池が見えますが、こちらはアンコール時代に作られたもの。時代ごとに形は変わっても、水を貯めて暮らすことが最も重要であったことがよくわかります。
深い森の中、熱帯の雨にぬれる石の遺跡は精細な細工が施され、とても美しいそうです。ところが長い内戦で遺跡が壊れ、修復が遅れているところも多いとか。なんとか大事に受け継いでいきたいものです。まずは調査から、ですね。
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