コラム
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世界宇宙飛行士会議開催記念コラム
「オレの経験では・・・。」議論好きな飛行士たち
2003年 11月分 vol. 1
ライター 林 公代 Kimiyo Hayashi


第18回世界宇宙飛行士会議での記念撮影。64人の飛行士とパートナー達の一部。奥様と一緒だと飛行士たちが「ふにゃっと」見えます。蝶ネクタイの鉄人アウデエフ飛行士は別。  右の写真は10月13日、第18回世界宇宙飛行士会議開会式後の記念撮影。14カ国64名の宇宙飛行士とパートナー全員が写った写真の一部をぐっとフォーカスさせて頂きました。

 最前列右端、勲章を胸につけた方は人類初の宇宙遊泳を成し遂げたロシアの英雄・アレクセイ・レオーノフ氏。ジョーク好きでお洒落でユーミンとのトークショーでは階段でさっとユーミンの手をとる紳士ぶりを見せ、本格的な画家でもある(画集を見せて頂きビックリ)。「実は月面着陸の訓練をしていた」など旧ソ連の宇宙開発秘話もバンバン飛び出した。

 隣の女性はレオーノフ氏の奥様。その左はカザフスタンの飛行士トクタル・アウバキロフ氏。ストライプの蝶ネクタイは宇宙滞在総日数748日の世界記録をもつ「鉄人」セルゲイ・アウデエフ氏。ご夫婦そろって背筋がしゃんと伸びております。宇宙飛行士、そして奥様方をこんなに目にする機会は滅多にない。宇宙に最愛の夫をどーんと送り出し留守を守った方々だけあって、「大地のような包容力」や「芯の強さ」がにじみ出てますよね。

 さて、内容や数々のエピソードについては、来月からじっくりと紹介するとして、今回は印象のみ。ホスト国日本は「今、何のために人間は宇宙に行くのか」を議論しようと意気込んでいた。だが国際宇宙ステーション(ISS)の利用については、各国の目的や問題意識がかなり異なることが明らかに。「教育をメインに」「科学探求だ」「まだ訓練の場」などなど。秋山豊寛氏の言葉を借りれば「問題の整理よりはるか以前の入り口にいる」。

 確かに何らかの方向性が出るにはちと遠いナという印象はもったけれど、各国の宇宙開発の事情や将来計画もよくわかったし(ヨーロッパ独自の有人宇宙計画はオドロキですよ!)、宇宙飛行士たちが「オレにも言わせろ」的に意見を出し合う光景は面白かった。ロシアの宇宙飛行士は特に議論好き。マイクを握るうちにいつの間にか客席から壇上にあがって演説になったり、「宇宙では4時間しか睡眠がとれなかった」など体験談や失敗談の中にけっこう本音が出てきたり。

 会期中、一番印象に残った言葉は、スコット・カーペンター氏が自分の弱点を聞かれて「I worry too much.」と表現したこと。カーペンター氏はアメリカで2番目に地球の周りを飛んだパイオニア。どんなに勇敢な人物かと思えば、意外にも「心配性」とは。こんな一言が宇宙をぐっと身近にしてくれる。