ロシアのアレクセイ・レオーノフ飛行士は、1965年3月にヴォスホート2号から外に出て人類初の宇宙遊泳を行った。その様子を帰還後、レオーノフ氏自身が絵で表現したのが右の写真。
約10分間の宇宙遊泳の後、宇宙服が膨らんでしまい(タイヤメーカー・ミシュランのキャラクターのようになってしまったとレオーノフ氏は笑った)、レオーノフ氏の咄嗟の判断がなければ命を失っていたかもしれないというスリリングな体験談は12月アップ予定のムービーで楽んで頂くとして、この絵の色使いや光をよーく見てほしいのです。
レオーノフ氏によると、彼は宇宙の「色・光・サイズ」を正確に絵で表現することにこだわり、飛行後に学術プログラムを作成したと言う。「宇宙を描いた景色の学術的な信頼性は75%でした。」そしてこの信頼性をあげるべく特別な方法を研究した。描く前には色調を「アナモロスコープ」という測定器を使って分析。古典的な色彩のスペクトルも同時に使用。絵の具はオランダのガッシュ(不透明絵具)。何層にも重ねて、黒くて深い空を表現。また、描いている場所の緯度・軽度も科学的な手法によって計測することにした。
1975年7月、レオーノフ氏はソユーズ-アポロ共同飛行に飛び立った。スケッチは飛行中に描いたもの。大気や雲の様子に注目していることが伺えます。そして飛行後に描かれたソユーズ-アポロの絵では、雲が立体的でリアルに描かれていると思いませんか? 宇宙空間の「黒」は彼が測定した色を科学的に再現しているのでしょう。絵の具を何層にも塗りながら宇宙に想いを馳せたであろう原画に、是非向き合ってみたいものです。
レオーノフ氏は、小学校に入る前から絵を描くのが好きだった。絵本「やさしい太陽の風」(アレクセイ・レオーノフ絵・文 ラドガ出版所 1985年)の中で彼はこう書いている。「物が不足し、お金もなかった戦争中に、僕は絵の具と筆をかってほしいとママにねだった。あざやかで、感動的で、神秘的で、明るく、しばしばどんな言葉よりも多くを語る色彩が、僕の生活にはいってきて、新しい美の世界をひらいてくれた。もしも、べつの美しさとべつの色―永久に素晴しい空の色―に心をうばわれなかったならば、おそらくぼくは画家になっただろう。ところが、ぼくは空の色に近づくために、飛行士になったのだ。」 最後の一文、かっこよすぎる~。
(このページに使用している画像は、インタビュー時にレオーノフ氏が見せて下さった画集 「A.LEONOV」をレオーノフ氏の許可を得て撮影、掲載しています。)
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