今回も、宇宙飛行士会議で聞いたロシア話。また? って言わないで下さい。だって他の国の飛行士は「手柄話」が多いけど、ロシアの飛行士は「苦労話」が多くて、苦労話にどうしても興味惹かれてしまう。
で、何の話かといえば米ロの協力の話。宇宙開発初期には競争相手だった宇宙大国同士が、1990年代から協力を始めた。ロシアの宇宙ステーション・ミールにNASAの宇宙飛行士が搭乗するという「シャトル・ミール」ミッションはトラブルの連続。宇宙飛行士だけでなく、地上で仕事をする人にとっても。
1984年と86年のソユーズ宇宙船で飛び(総飛行日数362日間)、その後飛行管制センターで15年間にわたって、有人飛行のコントロールを続けたウラジミル・ソロビヨフ氏は「協力を始めた頃はお互いに理解できなかった」と振り返る。
ミールをコントロールしていたのはモスクワの管制センターだけだったが、国際宇宙ステーション(ISS)になって、より複雑になったのはNASAのジョンソン宇宙センターと協力しなければならなかったこと。ISSの第二次クルーが滞在していたとき、ヒューストンとモスクワから逆のプログラムをISSに送ってしまったこともあった。クルーは混乱し、時に安全性を脅かしてしまう。ソロビヨフ飛行士はJAXAのつくば宇宙センターで、ISSの日本実験棟「きぼう」の管制センターを見学。「米ロだけでも大変なのに、日本とヨーロッパの4つでISSをコントロールすることになったら難しいだろうと、恐ろしくなってしまった」そうだ。
一方、2001年に約130日間、ISSに滞在したロシアのミハイル・チューリン飛行士は「最初は相手の考えが効率的でないと思ったが、個人的に公式非公式にコンタクトをとりながら理解した。ISSは文化を代表する人がいかに一緒に仕事をするかを学ぶユニークな社会的実験の場」と語った。その有益さは「想像もできないくらい」だと。
ロシアとNASAは訓練方法も全く違う。NASAは誰が見てもわかるように、実践的ですべてマニュアル化されている。しかしロシアは理論や基礎を重視し、試験も口頭。理論をしっかり学んでおけばどんなケースにも対処できるし、話せなければ理解したことにならないという考えからだ。違いをそれぞれ発揮すれば、最大のパフォーマンスを発揮するだろうけど衝突すれば大変。その分かれ目は「コミュニケーション」にあるかもね。
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