コラム
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2003年 11月分 vol. 4
さよなら太陽
ライター 林 公代 Kimiyo Hayashi


木星を通過する衛星イオ(左)とエウロパ。イオの真下には荒れ狂う嵐の大赤班。(NASA/JPL)  南極での皆既日食、感動的でしたね。月も太陽もそれぞれの持ち場を粛々と進行しているだけなのに、偶然出会ったときにこんな美しさを演出してしまうなんて。(しかし衛星が61個もある木星では日食ってどうなっちゃうのでしょう。1個だからこそ有り難味があるのかな)。

 やっぱり宇宙って美しい。自分が生きている宇宙が美しいと感じるのは、理由もなく嬉しくないですか?そんな嬉しさを私達人類に感じさせてくれた人工衛星の筆頭はNASAの惑星探査機「ボイジャー」だと思う。

土星の輪(擬似カラー)。貝の模様に見えたりもする。(NASA/JPL)  ボイジャー1、2号は1977年に打ち上げられ、1号は木星、土星を、2号はその後天王星、海王星を次々に訪れた。木星の衛星イオの火山が今も活発に噴煙を吹き上げる瞬間や、木星、天王星、海王星の細~い「輪」、トルコブルーの惑星・海王星の嵐の渦巻き「暗黒班」など、惑星や衛星それぞれに個性的な表情があることを見せてくれた。そして、カメラマンだったら絶対こんなアングルではとらないだろうと思うような芸術的な写真の数々。

 そのボイジャー1号が終に「太陽圏」を離れようとしている。と言ってもコトはそう簡単ではない。大きく分けて3段階あるようだ。太陽から吹く風・太陽風が吹くエリアを「太陽圏」と言っているが、太陽圏を出る第一段階が「ターミネーションショック」。太陽風が他の星から吹く風(恒星間ガス)に最初にぶつかる場所。11月5日のNASAによればボイジャー1号は現在ここを通っているようだ。ボイジャーで観測された太陽風がそれまでの時速112万キロから16万キロに落ちたこと、太陽系以外の星間物質が測定されたからだ。

ボイジャー1号は今、図中の「ターミネーションショック」に差し掛かっている。これから約20年かけて「ヘリオポーズ」を出たら、本当に太陽圏とさようなら。(NASA/JPL)  これから第2段階、太陽風と星間ガスがぶつかりあう「ヘリオシーズ」を約15年かけて飛行、そして太陽圏脱出のファイナルステージは約20年後。太陽風の影響力がつきる「ヘリオポーズ」を超える。2020年ごろまで観測できる見通しらしいけど、間に合うかが心配。ぜひ外の世界に吹く風を知らせてほしいものです。

 ところで映画監督マイケル・ベンソン氏がボイジャーなど惑星探査機がとらえた画像を納めた写真集「Beyond: Visions of the Interplanetary Probes」が10月に出版された。(55$、オンライン書店アマゾン等でセール中)。買おうかどうしようか迷ってます。

惑星探査機ボイジャー(NASAジェット推進研究所)
http://voyager.jpl.nasa.gov/index.html

写真集「Beyond: Visions of the Interplanetary Probes」
http://www.abramsbooks.com/books/Beyond.html