2003年はキツかった。スペースシャトル・コロンビア号の事故、H-llAロケット打ち上げ失敗・・・次から次へとハードルが表れる終わりなきハードル走のようだった。しかし来年はきっと「復活の年」。NASA宇宙飛行士オフィス代表として、スペースシャトルの飛行再開に取り組んでいる若田光一飛行士が11月27日、JAXAで記者会見を行い、現況を説明した。
現在、若田飛行士たちのチームが検討・開発しているのは大きく分けて二つ。一つはシャトルの耐熱材(耐熱タイルや、コロンビア号の事故原因になったRCC《強化カーボン複合材》パネル等シャトルを高熱から保護するもの)が壊れていないかを宇宙でどう検査するか。もう一つはもし耐熱材が壊れていることが見つかった場合、どう修復するか。
まず検査について。耐熱材はシャトルのお腹側全体や翼の縁等にあって、中にはシャトルのロボットアームでは届かない場所がある。そこでアームの先に長さ15m、直径30cmのブームをつけ、先端の2つのレーザーとテレビカメラで検査を行う。特に細かい検査が必要とされるのは翼の前縁部にあるRCCパネル。片側に22枚ずつあるうち、5~13番が最も高温にさらされるため、6~7ミリの傷まで調べることが要求される。もしもブームが故障したりした場合には、宇宙飛行士が船外活動でくまなく検査することになる。
そして、もし検査で傷がみつかったら。修復作業は宇宙飛行士が行うのだが、問題はどうやって破損場所に近づくか。検討の末に、斬新な方法が考えられた。シャトルのロボットアームが国際宇宙ステーション(ISS)をつかみ、4時間かけてシャトルが反転、ISSからシャトルのお腹側が見える状態にする。そしてISSのロボットアームに乗った宇宙飛行士が現場に近づく。これまで見たことのない光景になりそうだ。
修復作業のうち、耐熱タイルは「アブレーター」という充填材を壊れた箇所に注入し、表面をなめらかにする方法がほぼ固まっている。2004年秋の野口聡一飛行士の飛行では、予め壊しておいた耐熱タイルをシャトルの貨物室に積み、野口飛行士が船外活動で修理。地上に持ち帰って高温に耐えるか等を検査する予定だ。一方、RCCパネルの修復は傷の大きさによって毛布のようにくるんだり、中に詰め物を入れたり等4つの方法が検討されている。
NASAでロボットアーム操作の第一人者と呼ばれ、シャトル飛行再開の重要な任務を負う若田飛行士。感じるのは「アメリカの底力」だと言う。たとえばRCCパネルの検討には、関係する研究所からカーボン材料のスペシャリストがぞくぞく集まり、総力戦で挑む。日本も復活に向けて、「底力」を見せてほしい。
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