世界中にたくさんの望遠鏡はあるけれど、今、最も宇宙の「遠くの銀河」を見ているのは、日本の「すばる」望遠鏡。標高4200mのハワイ島マウナケア山頂にある。
2003年の3月に「すばるが最も遠くにある銀河を発見」というニュースが話題になった。見つかった銀河は地球からの距離、約128億光年*。128億光年の距離にあるってことは、128億年前に発せられた光を「すばる」がとらえたことになる。最新の観測結果で宇宙は約137億年前に誕生したと言われているから、宇宙誕生9億年後という、極めて初期に発せられた光が長い時間をかけて今キャッチされたってこと。宇宙の初期に銀河がどうやってできてきたかを教えてくれる貴重なメッセンジャーですね。
さて2003年3月の時点で「最も遠い銀河ランキングベスト10」のうち、1位、3位、10位を「すばる」が発見。同年11月に同じくらい遠くにある銀河を「すばる」はさらに7個発見した。そのうちの3個は、2003年3月に発見された銀河よりさらに遠い。「遠くの銀河ベスト10」のうち、第5位をのぞいたすべてを「すばる」が発見。独断場だ。
でも、「すばる」は1998年から観測を開始していたはずなのになぜ最近、遠くの銀河を見つけるようになったの? と不思議に思いますよね。実は2002年4月~2004年春まで「すばるディープフィールドプロジェクト」が実施されているのです。通常「すばる」の観測時間は1テーマにつき半年間に最大三晩と限られている。その観測時間の枠を超えて、成果を出そうと3つの特別な観測計画が始まった。その一つがこの「遠くの銀河」なのだ。
遠くの銀河観測に威力を発揮したのは、すばるの「Suprime-Cam(シュープリームカム)」と呼ばれる主焦点カメラ。世界の同クラスの大型望遠鏡に比べて20倍以上も広い視野をとらえることができるのが特徴。(ちなみにハッブル望遠鏡のディープフィールドの約230倍の面積)さらに特別なフィルターをかけて、かみのけ座方向を約10時間露出した。
これまでに約10万個の銀河を観測し、73個の遠方銀河候補をとらえた。それらを分光装置「FOCUS」で詳しく調べた結果、最も遠い銀河が続々見つかったというわけ。国立天文台の柏川伸成さんによれば、「まだ分光していない銀河もたくさんある」とか。さらに遠方銀河が見つかる可能性もあるかも・・・。膨大な観測データを解析していくことで、銀河誕生がどうやってでき、どう進化していったか、わかってくるのでしょう。それにしても、ディープフィールドの写真って本当に宝石箱のようで、美しいですね。
*1光年は光が1年間かかって進む距離で約10兆km。ちなみにお隣の銀河・大マゼラン雲までの距離は約17万光年
|