コラム
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2004年 7月分 vol.1
「世界一の星空を作る人」大平貴之さん(1)
500万個の星空。「一皮向けた」
メガスターIIコスモス。
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ライター 林 公代 Kimiyo Hayashi


「メガスター?ミネルヴァ」と大平貴之さん。ミネルヴァは410万個の星空を投影できる。大きさはメガスター?コスモスもほぼ同じ。大平貴之さんは1970年、神奈川県川崎市生まれ。現在はフリーランスのプラネタリウムクリエイターとして多方面で活躍中。  小学生の頃からプラネタリウムを作り続けてきた大平貴之さん。この夏、世界最多の500万個もの星を映すプラネタリウム「メガスターIIコスモス」をデビューさせる。肉眼では見えない12.5等星まで忠実に再現した圧倒的な星空、奥行きのある天の川に包み込まれていく体験は、これまでのメガスター同様、見る人を虜にするに違いない。
7月11日から東京・お台場の日本科学未来館で初の常設となる「メガスターIIコスモス」。最初の投影番組は「新しい眺め」。準備に追われる大平さんに聞いた。

― 「メガスターIIコスモス」、公開がとても楽しみですが、まず特徴を聞かせて下さい。

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これまではメガスターは圧倒的な星空を綺麗に見せる、どちらかと言うとヒーリングとかリラクゼーションーを得意としてきたんです。でも今回はサイエンス。プラネタリウムのよってたつところは天文学だし、ビッグバンから始まって銀河の泡構造とか宇宙の広がりとか、最新の天文学が明らかにしてきた宇宙の最新トレンドを伝える。アートとしてのメガスターにサイエンスのエッセンスを強く打ち出した。それがコスモスですね。
 たとえばメガスターで満天の星空を見て「わー綺麗」と、それだけでいっちゃうわけです(笑)。それでもいいんだけどここではさらに進めて、じゃあ天の川の正体は何かと。膨大な星の集まりで直径10万光年の光の円盤になって見えている。それを実感させたい。

― 具体的には?

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メガスターとCGのコラボレーションです。国立天文台の小久保先生のチーム「四次元デジタル宇宙プロジェクト」の映像の中から今回の番組のために素材を作って頂いて、メガスターの星空と融合するわけです。
 メガスターは天の川を忠実に再現する点では他を寄せ付けないけど、銀河系の外には出られない。天の川が迫ってきたら面白いだろうなと以前から思っていて、そこでCGが出てくる。天の川にどーんと入って、突き抜けて振り返ってみたらどんな世界が見えるか。それをやっちまおうというわけですね(笑)。銀河に突入する場面は未来館のCGクリエーターが作ったんですけど、結構技術的にリスクがあって苦労してました。でも「これは肝だから手を抜かないように」って。今回、初めて未来館とチーム制を組んだんですよ。

― どうでした?

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いやぁ、いいもんですね。実は私はチームの作業って自信がなくて。1人でずっとやってるじゃないですか。チームワークってなかなか難しいだろうなと思っていた。でもみなさん頑張ってるしメガスターが好きだし。お互いに認め合ってやることができたと思います。

― 夜遅くまで作業されてるんでしょうね。

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12時とか1時ごろまでやってますね。ちょっと調整したから写してみようかとか。夜中の12時からですよ! メンバーは20代後半~30代前半で年も近くて「世の中のカップルが星を見て子どもを作って、プラネタリウム好きの遺伝子が広がっていけばそれでいいんですよ」とか、くだらない話をしてますね(笑)。

 実は約束の時間に太平さんを訪ねた時、机に突っ伏して寝ていた(起こしてゴメンナサイ)。いつも遅くまで、時には明け方まで作業をされているんだろうなぁ。

― そうやってできた、メガスターIIコスモスの満足度は?

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今までの中では一番いい。忠実というか正確というか「キチンとしている」。短期のイベントで使うとどうしても正確に調整しきれないんです。機械を搬入して翌日の午後からお客さんが入りますって言う、ドタバタで今までやっていますから。今回は初めての常設ということで、これまででできなかった調整とか追い込みができて、一皮むけてます。
 実は今までのメガスターIIとずば抜けた違いがあるわけじゃない。星の数も410万個から500万個。惑星投影機とかいろいろな機能はプラスしたけど、そこにドカンとした差別性があるわけじゃない。でも全体的に細かいところがチューニングされて、その差が大きなものとなっている。上品な、本来やりたかったメガスターの理想形に近いものになった。そういう意味ではメガスターは完成に近づいたと言えるかな。

― 高校生の時にオーストラリアで見た天の川を再現したいというのが、プラネタリウム作りの原点ということですが、その思いは実現できましたか?

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うん。恐らく。実は自分の一番の悩みは高校生の時以来、一回もオーストラリアで天の川を見ていないことなんですよ。去年、このコスモスを作る前に、絶対見に行こうと思って。じゃないとダメだよなと。飛行機までとったんですけど、どうしても都合が合わなくて。

― そうですか・・・高校生の時に見たイメージってどんな感じなんでしょう。

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手に届くように見えるけどそれが何万光年も離れたところにあるっていう不思議なイメージ。暗黒星雲の感じとかは出せてるんじゃないかと思いますけど。遠い記憶ですよね。
本物見て「なんだ、全然違うじゃないか」と思ったらショックでしょうね。見ない方が幸せかもしれない(笑)


・・・・・・・・・・・・・・次回に続く。

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2002年12月VOL.8 コラム
「7畳の自室から生まれた 世界一リアルなプラネタリウム」

メガスターIIコスモス 日本科学未来館で7月11日(日)16時から常設公開。
http://www.miraikan.jst.go.jp/megastar2cosmos/index.html

大平貴之さんのページ
http://www.megastar-net.com/