昨年10月に開かれた「世界宇宙飛行士会議」でロシアの宇宙飛行士アレクセイ・レオーノフが、「僕は月に土地をもっているんだ。遊びに来ていいよ」と言っていて、「まったくロシア人はジョーク好きだなぁ」と思っていたら、彼の名を冠したクレーターが本当にあった。国際天文学連合(IAU)にちゃんと承認されており、惑星システム命名ワーキンググループのウェブサイトで確認できる。それにしても、月のクレーターが1000以上もあって、その一つ一つに名前がつけられているなんて、知ってましたか?
日本人の名前がついたクレーターもあった。「Nagaoka」(長岡半太郎。北緯19.4度、東経154度。直径46km)、「Nishina」(仁科芳雄。南緯44.6度西経170度。直径65km)など物理学者や天文学者が多い。でも地名ってどうやってつけるわけ? JAXAのウェブサイト月探査情報ステーションの「月についてのFAQ」によると、地名は月に新しい地形が発見されて、詳しい画像が送られてきた後に観測者や研究者、一般の人が意見を出し、ワーキンググループで議論、最終的にIAUの承認が得られれば、正式な地名になるらしい。しかし、実際の地名を見ると圧倒的に天文学者が多い。ケプラー、ティコ、コペルニクス・・・クレーターの名前をたどれば、天文学の歴史のお勉強ができそうなくらいだ。
そう。天体の地名は誰の名前でもいいわけじゃない。政治的・宗教的に意味をもつ名前はNGだし国際的に評価され、亡くなってから3年は経過している必要がある(月面着陸したアームストロングや人類初の宇宙遊泳を行ったレオーノフのように例外も少しある)。さらに月の大きなクレーターは、科学者・学者・芸術家の名前からとられるらしい。
しかし不思議なのは、月になぜか「たいぞう(Taizo)」「れいこ(Reiko)」「よし(Yoshi)」という地名があること。注釈を見ると「日本男性の名前」「日本女性の名前」とある。月の小さなクレーターには各国の一般的なファーストネームがつけられているのだ。でもれいこは理解できても「たいぞう」とか「よし」っていつの時代の人?(ちなみに名前がつけられたのは1970年代後半)。それほど一般的な名前とは思えない・・・。他の国では「ミッシェル」(イギリス人男性)、「ナターシャ」(ロシア人女性)「ロメオ」(イタリア人男性)などあって、なるほどと思えるけれど、イタリア人にしたら「ロメオなんて名前、今どきつけないよね」ってことになるのかな。でも同じ名前の人にとっては月に自分と同じ名前の場所があるって、確かに嬉しいことだよね。
数年後、日本の月探査機セレーネがくまなく月面を調べて、新しい地形が発見されたときには、どんな名前を提案しよう。芸術家の名前がいいなぁ。考えておきましょうね。
JAXA月探査情報ステーション「月についてのFAQ」
http://moon.jaxa.jp/ja/qanda/faq/index.html
惑星システム命名ワーキンググループ
http://planetarynames.wr.usgs.gov/
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