コラム
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2004年 9月分 vol.3
「月への階段」が現れる街
ライター 林 公代 Kimiyo Hayashi


月が出来た頃は地球にもっと近く、16倍も大きく見えていたという説もあるとか。今も少しずつ月は地球から離れつつある。今、この時の月との関係を楽しんでおきましょう。写真は宇宙ステーションから見た満月と火星(NASA)  オーストラリア北部の小さな港町で満月の夜、海面に「月への階段」が現れる。そんな話を国立天文台の渡部潤一さんに伺った。「ガイドブックにも載ってるよ」と言われて調べてみた。干潮時に水平線すれすれに満月が現れると、その光が干潟の海に反射し、金色に輝く階段が海から月へとのびているように見えるとか。さぞかし幻想的な風景だろう。

 「月への階段」が見られるのは、西オーストラリア州北部キンバリー地方にあるブルーム(Broom)。インド洋に面したトロピカルムードあふれるリゾート地で、近郊には22キロにわたりオーストラリア有数の白い砂浜、ケーブル・ビーチ(Cable Beach)が続く。かつては世界有数の真珠養殖地として栄え、多くの日本人も移り住んでいた。(今でも夏に「真珠祭り」があるとか)今はホテルなども立ち始めていて、隠れ家的な旅行先として人気が高まっている。

 ここブルームで「月への階段」を見るためのベストシーズンは3月から10月の冬(と言っても平均気温は約28度)。この期間は比較的ドライで天気も安定している。ちなみに9月29、30日、10月1日、10月29日~31日にも見られる予定。11月から2月頃の夏の間は気温が40度近くまで上がり、蒸し暑い。

 近頃ではこの「月の階段」を見るために世界各国から見物客が訪れ、宿泊の予約もなかなかとれないほど。ベストポイントは市内中心部に近いタウン・ビーチ。その日は、ホテルのテラスが開放されて、お酒を飲みながら月が出るのを待つ。いよいよ月が登る時刻になると照明が落とされて、アボリジニーの伝統的な楽器で世界最古の管楽器とも言われる「ディジュリジュ」が奏でる音色に乗って、月が昇っていく。タウンビーチには夜店も出て、一種のお祭り騒ぎ。楽しそう!

 ちなみに渡部潤一さんご一家は、この5月に二大彗星(ニートとリニア)を見るためにエアーズロック(今じゃ「ウルル」の呼び名の方が有名か)近くまで行かれたそうだ。彗星は期待ほど明るくならなかったものの、「初めて天の川の光で自分の影ができるのを見た」んだって。そしてオーストラリア旅行のために色々調べているうちに「月の階段」を見つけ次のターゲットに決めたという。その行動力、見習いたいものです。


ブルーム観光局(英語)
http://www.broomevisitorcentre.com.au/

西オーストラリア州政府観光局(日本語)
http://www.westernaustralia.or.jp/index.shtml