コラム
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2005年 1月分 vol.3
金環皆既日食で見える?「ビーズの環」。
ライター 林 公代 Kimiyo Hayashi


2002年6月、テニアン島で撮影された金環日食。リングの右下部分、ビーズが連なっているように見えるところが「ベイリー・ビーズ」。(提供:国立天文台広報普及室)  2005年4月8日(世界時。日本時間は9日)、南太平洋から中南米にかけて、珍しい「金環皆既日食」が起こります。皆既日食は月が太陽を完全に隠してしまうけれど、金環日食では月が太陽を隠しきれずに太陽が細い光の環となって見える。今回の金環皆既日食は、皆既帯をはさんだ両端の地域で金環日食が見られるというハイブリッドタイプ。

 まずニュージーランド南東の海上で金環日食が始まり、皆既日食はほとんど太平洋の海の上、そして中米コスタリカの西で金環日食にもどる。一つの場所で皆既日食と金環日食が見られるわけではなく、ある地域では皆既日食(今回はほとんど海の上)、ある地域では金環日食が見えるというわけ。ただし金環日食の光の環がかなりの極細リングになるために、ちょっと素敵な現象が見られそうです。その名も「ベイリー・ビーズ」。

 上の写真は、2002年6月11日、サイパン島近くのテニアン島で撮影された金環日食の写真。写真右下のあたりを見てください。ビーズをつなげたように見えませんか? 月には山や谷があるために月の縁には凹凸がある。太陽が月に隠された時、この凹凸の谷間から太陽の光がもれて、ビーズのように見えているのです。1836年5月15日にスコットランドで金環日食を観測したイギリス人フランシス・ベイリーがこの現象を記録したために「ベイリー・ビーズ」と呼ばれています。

 今回の金環日食では、このベイリー・ビーズがぐるりと月の縁をとりかこむ可能性もあると期待されています。旅行会社各社では、主に中南米を中心にこの稀有な日食を見るツアーを企画しています。中には皆既日食を見るためにエクアドルの首都キトから、豪華客船に乗ってガラパゴス諸島をクルージングするというリッチなツアーも。

 ところで、月は毎年約3.8センチずつ地球から遠ざかっています。月の距離が地球から遠いと皆既日食でなく金環日食として見える。ということはかなり先、皆既日食より金環日食を見る機会のほうが多くなるかもしれませんね。ちなみに次に日本で皆既日食が見られるのは2009年7月22日。奄美大島のあたりです。