東京の夜空から出発して、太陽系を超え、銀河系を超え、137億光年彼方の宇宙の果てへ。自宅のPC画面でそんな宇宙の旅ができる。画面に映し出されるのは、世界各国で観測された最新の宇宙データ。つまり「それっぽい」見せかけの星空じゃなく、実際の星空だってこと。国立天文台・四次元デジタル宇宙プロジェクト(4D2U)が2月1日に配信を始めたコンテンツは、私達を宇宙空間にぽーんと放り投げてくれる。
4D2Uプロジェクトは、東京都三鷹市の国立天文台の小さなシアターで、2ヶ月に1回公開されている。これは感動的な体験だ。宇宙の果てまで旅する途中で、「月の起源」の映像や、「天の川ができていく」映像など、最新の宇宙論や観測データをベースにスーパーコンピューターを駆使して作った立体映像を見せてくれる。偏光メガネをかけて専用のスクリーンで見ると、手にふれそうな近くまで飛び出してくる。数十億年以上も昔、原始地球に火星ほどの大きさの微惑星がぶつかって月ができていく、という大イベントが目の前で進行していくド迫力。しかも国立天文台の研究者の方々が観客の反応を見ながら、解説し操作してくれる。クオリティは世界最先端でかつハンドメイド。何より宇宙のなんて美しいこと。
その映像を国立天文台がウエブで配信を始めた。さっそく2月1日にアクセスしダウンロード。今回配信されたのは3つ。「宇宙の大規模構造の形成」、「火星探検」のシミュレーションムービー2本と4次元デジタル宇宙ビューワ「ミタカ(軽量版)」(Windowsのみ対応)。宇宙の大規模構造とは、宇宙初期のゆらぎから銀河ができていく過程を見せてくれるもので大変に興味深いがやっぱりお勧めは宇宙の旅を自在に楽しめる「ミタカ」だ。うちのパソコンではかなり動きが遅いけれど(性能不足か!)、その遅さが妙にリアル。まず地球を出発して太陽系を超えようとするあたりで、昨年「第十惑星発見か?」と話題を呼んだ「セドナ」のゆがんだ楕円軌道にへぇーっと驚いたり、そのさらに外側で彗星の巣と言われる「オールトの雲」が繭のように太陽系を包んでいる様に、じーんときたり。
そして圧巻は2箇所、まずは恒星の世界に出てシリウスやベガなどなじみの星を楽しんだあと、1万光年を越えたあたり。星が増えてきたなぁと思うと、なんと銀河系の腕の中に飲み込まれていく・・・。その次は1億光年を超えたところで、銀河の大集団に飲み込まれるところ。次々に出てくる大きな広がり。そして広い宇宙のどこかで確かに進行している、美しくもダイナミックな天体現象。自在に広大な宇宙の旅を気ままに楽しんだ後は(或いは旅の途中でも)、小さく懐かしい地球に戻ってくることができる。自分のパソコンにこんな広大な宇宙が潜んでいて、いつでもそこに旅立てる。これは画期的なことだ!
4D2Uプロジェクトの中心メンバーの1人は「月の起源」のムービーを作った小久保英一郎さん。現在は約46億年前にガスとチリの円盤(原始惑星系円盤)から地球がどうやってできたかという理論をまとめていて、理論を書き上げたら映像も作る予定だとか。どんな映像になるのだろう。今後もプロジェクトでは月1~2本のペースで新しいコンテンツをリリースしてくれるらしい。新しいパソコンが買いたくなる。
6畳空間で体験する4次元宇宙(2003年7月コラム)
四次元デジタル宇宙プロジェクト
http://4d2u.nao.ac.jp/
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