1回目の船外活動はまるで「飛ぶように」。そして2回目の船外活動は「アームに乗って大移動」。野口飛行士が行う船外活動はダイナミックな動きと、ボルト締めやワイヤーの巻きつけなど細かい作業の両方に無駄な動きがない。NASAは野口飛行士のパフォーマンスを「Excellent(優雅だ)」、若田飛行士も「強い精神力と素晴らしい集中力」と絶賛する。
ここ米国テキサス州ヒューストンにあるNASAジョンソン宇宙センター(JSC)のビルディング2には、日本の新聞やテレビ等13社が取材に入り、昼夜なく宇宙の野口さんをマークし続けている。JSC内はリスが遊び、マウンテンバイクで出勤する人も見かけ、カフェテリアにはスターバックス。けっこうのんびりした雰囲気だ。だが肌にまとわりつくような湿気のある暑い屋外と対照的に、NASAのビル内は冷房がガンガンに効いてまるで初冬。ジャケットや山用の毛布を急遽現地調達した人も。新聞記者の皆さんの平均睡眠3~4時間で、ちょっとした時間にイスを並べて寝ちゃう人もいたりして、取材する側もけっこうタフな日常を送っているのだ。
船外活動の第1回も2回も現地で午前3時~4時ごろのスタートだったが、どちらも若田飛行士が解説して下さった。若田さんは野口さんの船外活動を予定の時間内に安全に、どんな手順で行うか初期の開発に参加した。「船外活動は登山と同じ。安全に帰ってきて初めて成功と言えるんです」。例えばアームが壊れた場合は? など最悪のケースを想定し検討したという。
宇宙に出た野口さんは、いきなりハイスピードで動き出した。宇宙の移動手段は足でなく「手」。最初の仕事は、約20m先にある緊急避難用のドアを開けることだが、かなり早い。時々「飛んでいる」ようにさえ見える。若田飛行士によると、「宇宙の歩き方のコツ」は大きな動きをしないこと、特に腰から下を動かさないことが「綺麗な形」なのだそう。最初の仕事は、貨物室で、あらかじめ壊しておいたデモ用の耐熱タイルに、靴墨クリームのような道具で補修剤を広げること。だが、補修剤の出がどうやら悪く、野口さんは細長いへらのような道具ですくって塗っていた。続いてGPSアンテナの交換などを実施。さらに3日目の作業も一部行った。今回の二人は船外活動のルーキー(初心者)。それなのにベテランを上回る効率のよさに「エクセレント」の声がNASAから上がった。
そして2回目の船外活動が「一番てこずりそう」と野口さんが話していたジャイロの交換。宇宙ステーション(ISS)の姿勢をコントロールするもので、重さは約280kg。ISSに4つあるジャイロのうち壊れた一つを外して新しいものと交換するのだが、このとき野口飛行士は長さ約17mあるISSのロボットアームの先端に乗って、約40mを往復。大きなジャイロを両手でしっかり抱えた野口さんが、秒速数センチでゆっくり移動。宇宙や地球の景色が目に入ったはずだ。運び終わったら「パワーツール」でねじを回しとりつけ、配線。
そして、すべての仕事の後はお決まりの「記念撮影」。二人で交代で撮った後も、野口さんはカメラを自分に向けたり地球に向けたり、かなりこだわって? 撮り続けていて、お茶目です。(実は新しいカメラのテストだったそうです)3回目のEVAには新しい作業が加わりそうだが、チームワークですばらしいパフォーマンスを見せてくれるだろう。
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