コラム
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2005年 9月分 vol.3
「ミニ地球」の住人が語るエコライフ
ライター 林 公代 Kimiyo Hayashi


ミニ地球のエコノートと日本科学未来館をつなぎ、会場の約40名の参加者が直接質問できた。  「ミニ地球」居住実験がいよいよ始まった。外気を遮断した空間の中でエネルギーと情報を取り入れる以外はリサイクル。最終的に4ヶ月の滞在を目ざし、第一回目は1週間。2人の「エコノート」が9月6日に青森県六ヶ所村にある環境科学技術研究所の閉鎖型生態系実験施設、通称「ミニ地球」に入った。実験5日目に、「ミニ地球」と東京の日本科学未来館をテレビ会議システムでつなぎ、エコノートたちが実験生活を語った。

 今回、「ミニ地球」居住実験に参加しているエコノートは小松原修さんと篠原正典さんの2人。エコノートは全部で4人いて、3人目のエコノート相部洋一さんが日本科学未来館で、解説を努めた。会場には約40人の参加者。

 さて、テレビ画面に現れたエコノートのお二人。1人は長袖、1人は半袖だ。ミニ地球って暑いの? 寒いの? と思っていると「飛行機の機内のようで肌寒い。空調の音がいつもしている」とエコノートの篠原さん。「国際宇宙ステーション」の環境と似てますね。監視カメラで24時間モニターされているし、健康状態も管理されているし。

 エコノートたちは7時起床、23時就寝。毎日3~4時間の植物作業がある。ミニ地球では、植物が出した酸素は二人のヒトと2匹のヤギに、ヒトとヤギが出した二酸化炭素は植物に送って循環させているし、収穫した植物から食事を作るという生活なので、23種類の植物をきちんと育てることが死活問題なのだ。シャワーはあびることができるが、石鹸やシャンプーは使えない。それらを分解するための設備がないからだ。使えるお湯は7リットルで、だいたいバケツ1杯分だ。

ミニ地球で収穫された野菜。ダイコンは栽培するポッドの長さが決まっているため、曲がっている。春菊(右端)も大きな「おばけ春菊」に。  エコノートたちの大事な仕事の一つに「料理」がある。毎晩、収穫した野菜から翌日の三食分+間食の下ごしらえと、その日の夜ご飯のしたくに約2時間。電磁調理器と電子レンジをフル稼働。管理栄養士が1週間の閉鎖実験のために考えたメニューは28通り。「お盆休み返上で調理のトレーニングをした」そうだ。味を聞くと「ダイコンはからいし、にんじんはいびつ。味付けも濃かったりしていたけど、昨夜はやっと満足できるものが作れた。」

 未来館で配られたパンフレットには、エコノートたちが作っている料理のレシピが2通り紹介されていた。初級編が「落花生フォンダント」、上級編が「寄せ豆腐の野菜あんかけ」。寄せ豆腐は豆乳とにがりから作り、白菜、玉ねぎ、にんじん(皮付き)、根三つ葉の野菜あんをかける。ヘルシーで美味しそう。こんな、凝ったお料理をしているんですね。「ここで調理して食べていると、普段の食生活で食べる加工食品が、いかに沢山の植物を消費しているかわかります。直接植物から料理するほうが格段に環境への負荷が少ない。」エコノートが口にした言葉の中で印象的だったのは「ありがたい」という言葉。「植物が作ってくれた酸素は、『ありがたいな』と思って吸ってます」。ふだんの生活ではなかなか感じないことですよね。

左は、尿から回収した塩。純度が高く食事に利用される。
右は大人1人、二日分の便を炭にしたもの。二酸化炭素として光合成に利用される。  さて、2匹のシバヤギさんは元気なんでしょうか?「ヤギはふだんケージの中にいるので、狭い場所にいることのストレスはないと思うけれど、空調が静かになるように防音をしている。また唾液の中の成分を調べてストレスがないかどうか、調べています」とのこと。ヤギも二酸化炭素を出したり、人間が食べられない稲の茎を食べたり、糞尿も塩などに利用するなど大事な役割を担っているのだ。

 2005年度は9月末と10月中旬にあと2回、それぞれ1週間の「ミニ地球」滞在実験が予定されている。


ヒトとヤギがくらす「ミニ地球」(2004年 11月コラム)