コラム
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2005年 12月分 vol.3
2005年 とっておき宇宙の名言。
ライター 林 公代 Kimiyo Hayashi


 2005年も残すところあと数日。今年の宇宙は賑やかでしたね。スペースシャトルが3年ぶりに復活、野口飛行士が宇宙で活躍し、民間宇宙旅行も加速の気配。一方、日本の小惑星探査機「はやぶさ」は3億キロ彼方の星「イトカワ」で大奮闘。今年の取材で出会った方たちの印象ぶかーい言葉を紹介します。

 「宇宙の中で地球は『命の輝き』に満たされていると確信しました」(野口宇宙飛行士)

2005年のベストショット。スペースシャトル飛行中、3回目の船外活動中のロビンソン飛行士。撮影したのは野口さん。地球を眺めるこんな場所にいるってどんな気分?(提供:NASA)  地球の美しさについてのセリフは正直、聞きなれていると思っていたのに、野口さんの言葉にハッとする思いで惹きつけられたのは何故だろう。ご自分でも語っているが、メカに強いバリバリの「エンジニア」という印象が強かった野口さんが、ぴったりくる言葉を捜すように訥々と語る姿に「伝えたいんだ」という誠実さを強く感じた。その言葉に耳を傾けながら思ったのは、やはり2003年2月のコロンビア号事故で死と直面したことが、彼の「生」や「命」に対する見方をより深くしたのではないか、ということ。宇宙服を通して伝わってくる「真空=死の世界」に身をおきながら対面した「生の世界、地球」。野口さんの話を聞いて、私もどうしても宇宙に出て、地球の外から生の世界を見つめてみたいと思った。

 「しがみついてでもイトカワにたどりつく」(川口淳一郎さん)

 2005年の1月に、小惑星探査機「はやぶさ」のプロジェクトマネージャー・JAXA宇宙科学研究本部の川口さんを取材したときのセリフ。人間コンピューターのように冷静なプロマネは苦労話を聞き出したくても「そんなに大変なことじゃないよ」とばかりにさらりと交わされてしまうことの連続。その中で唯一出た、泥臭い? セリフがこれ。2005年2月から3月、「はやぶさ」は太陽からもっとも遠い位置にいて、極寒の宇宙空間を少ない電力で飛び続けた。その時期を迎えるにあたってのセリフだ。たどり着いたイトカワでの奮闘ぶりは、報道されている通り。今度はしがみついてでも、地球に帰ってきてほしい。

 「夢とお金。両方ないと夢は実現しない。」(堀江貴文さん)

 10月に福岡で行われた第56回国際宇宙会議中の発言。堀江さんはロシアの有人宇宙船アルマズを使い、地球を回る宇宙旅行を2008年ごろに実現したいと発表。彼自身の夢は「ふつうに宇宙に人類がいけるようになること。月とか火星とか。太陽系外とか。」地球周回宇宙旅行を実現したら、旧ソ連の宇宙ステーション「サリュート」を打ち上げホテルにして、レストランやシャワールームも作りたいとのこと。今後どんなふうに展開していくか、本気度を含めて注目したい。

 「宇宙にどんなに長い歴史があっても、今いる私は二人とない」(海部宣男さん)
 「幸せにならなきゃいけない」(谷川俊太郎さん)


 今年、もっとも心に残ったのが、日本科学未来館で3月18日に行われた、詩人の谷川俊太郎さんと、国立天文台台長の海部宣男さんの対談。 「この広大な宇宙で私たち人間が存在する理由は?」と聴衆からたずねられ、海部さんは、「想像を絶するような偶然とその中を貫く必然(宇宙が物理法則に従って展開し、銀河や星、惑星、生物が生まれるという)がないまぜになって今、『私』がここいる」と話してくれた。ここにこうして生きているだけでスゴイことなんだなーと実感。谷川さんは「ここにいることをいかに楽しむか。幸せにならなきゃいけないと使命感のように感じる」と言っていた。今年、私は幸せになることに貪欲だっただろうか・・・

 それでは皆様どうぞよいお年を。2006年は今年よりもっとハッピーな年にいたしましょう。