コラム
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2006年 2月分 vol.2
「タダで」、「特典で」宇宙旅行!?
ライター 林 公代 Kimiyo Hayashi


NASAからエンジンを借りる契約を結んだ「ロケットプレーンXP」。宇宙旅行一番乗りはこんな機体!?
 いくら宇宙旅行にいける時代になったといっても、1000万を超える金額は庶民にとって、決してお手軽な金額ではない。それが簡単なクイズとアンケートに答えるだけで「タダで」宇宙旅行に行けるチャンスや、クレジットカード利用の「特典商品」として宇宙旅行が登場するようになった。

 車買取を中心に自動車事業を行うCar-bb.Com((株)ブロックス、本社:大阪市城東区)では、3月31日までにウェブサイトでアンケートに答えた応募者から抽選で1名に高度100kmの宇宙旅行をプレゼントする。実施予定は2008年。すでにスペースアドベンチャーズ社との契約をすませ全額を支払い、同社が提供する高度100kmへの宇宙旅行サービス開始後、100人以内に搭乗する権利を得ている。1月末時点で応募者は2万1千人を越えているという。

 実は同様のキャンペーンは世界で既に行われている。たとえば、ボルボの新車キャンペーンや、データベース業界大手オラクル社のJAVA開発者向けコンテスト、飲料メーカー、セブンアップなど。韓国オラクルのキャンペーンでは今年1月9日、大学生ホ・ジェミンさんが宇宙旅行に当選したことが発表された。

 そしてアメリカン・エキスプレス・インターナショナル日本支社では、2月1日からカード利用100円ごとにつくポイントサービスの交換商品に宇宙旅行(高度100kmへの旅)を提供。必要なポイントは2200万ポイント、つまり22億円のお買い物が必要。非現実的? な気もるすけれど、カードポイントの交換商品として「宇宙旅行」を提供するのは、カード業界初。(ちなみに250万ポイントでモスクワ・星の街での無重力体験という特典商品もある。)

 これらは、宇宙と地上の境界線100kmにタッチしてもどってくる「弾道飛行」と呼ばれる2~3時間の宇宙飛行。地上で一番高いジェットコースターのようなものだが、NASAでは1963年にX-15で実現されている。約40年前の技術なのだ。地球の周りを回るスペースシャトルは秒速8kmの加速が必要になるが、弾道飛行では秒速1kmでよく、技術的には民間も参入しやすい。賞金レース「アンサリXプライズ」が民間ベンチャーの参加を促し、米国の民間機スペースシップワンが2004年に見事2回の宇宙飛行を達成、賞金を勝ち取ったことで、急に民間宇宙旅行が現実的になったのだ。

 世界の何社かが宇宙旅行の実現に向けてしのぎを削っているが、話題になっている機体の一つが、米国オクラホマ州ロケットプレーン社が開発中の「ロケットプレーンXP」。米国で商用ジェット機として使われている機体を改造しロケットエンジンを搭載、水平離陸水平着陸する。飛行時間は約1時間でそのうち無重力状態は3~4分。最近NASAからエンジン(RS-88)を3年契約で貸してもらい、開発試験を行う契約を結んだ。今年の夏ごろにテスト飛行を行うという情報もある。ロケットプレーン社の宇宙旅行では、日本のコンテストで選ばれた宇宙ウェアを着ることが予定されている。(2005年10月VOL.2のコラム参照)。

 40年前の技術とは言え、乗るのは観光客で宇宙飛行士ではない。スペースシップワンでも帰りに短い時間だが、4~5G(重力加速度)がかかったこともあったようだ。旅行には、安全性や快適性の確保が必至。キャンペーンで盛り上がるほど、実現の時期が気になるが、まずはテストフライトの開始が待ち遠しい。


Car-bb Com
http://www.car-bb.com/

ロケットプレーン社
http://www.rocketplane.com/home.asp