コラム
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2006年 4月分 vol.1
月から見たい「アースライズ(地球の出)」
ライター 林 公代 Kimiyo Hayashi


 『なんとか生きてる間に、月から「地球の出」を見られるかな・・・』そんな淡い期待が持てそうなニュースが4月に流れてきた。

宇宙服について話し合う、毛利宇宙飛行士(左)とJAXAの山方健士さん。  月を目ざして、JAXAは4月11日に3つのプロジェクトチームを発足させた。2005年4月にJAXAが発表した「JAXA長期ビジョン」を現実的に動かすための第一歩だ。長期ビジョンはJAXAが今後の20年間の宇宙航空の望ましい姿を提案したもの。改めて読んでみると、月周回衛星セレーネ(2007年度打ち上げ予定)で月を詳細に調べた後、着陸探査機をおろす等して月の科学と利用の可能性を調べる。同時に月利用等への展開を見据えてロボティクス技術や資源の現地調達・利用のための先端技術開発等を行う。それらの結果をもとに本格的な月利用を展開するかどうか、国民の判断を仰ぐ。JAXA広報室によれば「有人月面基地も視野に入れている」とのこと。

 今回発足したのは「月・惑星探査推進チーム」「宇宙ロボット推進チーム」「有人宇宙輸送システム推進チーム」の3つ。セレーネ計画以後、具体的にどう進めるかの検討を行う。「月・惑星探査推進チーム」の事務局長は小惑星探査機「はやぶさ」のプロジェクトマネージャー、川口淳一郎氏が務める。

 ところで2007年度に打ち上げられる予定の月周回衛星「セレーネ」は月の周りを回りながら詳細な地図を作るためのデータを得るとともに、様々な科学観測を行う予定。その中で私がひそかに注目しているミッションがある。セレーネ用に開発されたハイビジョンカメラで、月から見た「地球の出」(アースライズ)を撮影する予定になっているのだ。
アポロ11号で撮影された「地球の出(アースライズ)」。来年度打ち上げの月周回衛星「セレーネ」はハイビジョンカメラを搭載。鮮明な「地球の出」の映像が私達に届けられるだろう。(提供:NASA)
 もちろん本当は月に行って見るのが一番なのだけれど、ハイビジョンなら、かなり鮮明な画像が期待できるはず。月での「地球見」はかなりユニークだ。たとえば、あなたが月のある一点で地球を見ているとすると、地球はいつも空の同じ位置にあり、動かない。月の自転と公転の周期が同じために、月はいつも同じ面を地球に向けながら地球の周りを回っているから。「地球の出」や「地球の入り」を見たいなら、あなたは月面上を移動しないといけない。だから月の周りを回る周回衛星はうってつけだ。地球の満ち欠けも見ものだろう。満地球から半地球、三日地球と変化していく天体・地球。大気がないためにくっきりと見えると言われる月の地平線や、クレーターの眺めも楽しみ。まるで月観光船「セレーネ」に乗っているような気分が味わえるかもしれない。

 この「セレーネ」の後、どんな計画が続くのか。日本が得意とするロボット技術はどう生かされるのか。将来、私達が月に行けるように、有人月基地もぜひぜひ検討して頂きたいものです。