土井隆雄飛行士は1997年に約2週間の宇宙飛行を行い、「宇宙が私たちを呼んでいる」という名言を残した。それから約10年後、彼は再び宇宙にもどる。国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」の第一回打ち上げ作業を行うことが決定したのだ。この約10年間、彼は「地球や宇宙をもっと知りたい」という想いで過ごしてきたという。
たとえば、地球への想い。過去のインタビューで、「野菜作り」のエピソードを聞いたことがある。「宇宙から帰ってきてから、『地球にもっと直接関わりたい』という想いが起こって、土と接して生命を育ててみたくなったんですね。それまで植物や野菜を育てたことはなかったのに、自分でやってみようと。きゅうりやなす、豆、とうもろこしなどを育ててみました。それが宇宙に行く前と後で、大きく変わったことですね。」
そして「宇宙」についてももっと勉強しないといけないと感じた土井さんは、1998年からヒューストンのライス大学に通い、2004年3月には天体物理学の博士号をとっている。土井さんは大学では宇宙工学を専攻しているが、中学から天体観測を始め、今ではヒューストン郊外にご自分の観測所をもつ「アマチュア天文家」でもあるのだ。2002年10月にはその「スターリッジ観測所」で星の最後の大爆発「超新星」を発見。国際天文学連合の会報に掲載された。「超新星の発見は宇宙飛行と同じぐらいエキサイティング」とコメントしている。
もちろん本業でも、国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」の開発業務を担当しながら、次の宇宙飛行への準備を続けていた。「あっという間に過ぎた10年間でしたね。その間には楽しいこともあったし、悲しいこともありました。」悲しいこととは、2003年に起きたスペースシャトル・コロンビア号の事故のことだ。親しい友人・仲間を失った悲しみは「今も尾をひいている」と土井さんは語る。「だからこそ、自分が宇宙に行くことで彼らの想いをもう一回宇宙に持って行きたい」と。
1回目の宇宙飛行で、地球上で生まれた人間が宇宙でもちゃんと生きていけるように作られていることに感動し、「宇宙は私たちを呼んでいる」と表現した。今度はどんな表現で宇宙の感動を伝えてくれるか楽しみだ。ちなみに前回の宇宙飛行中、土井さんはクレヨンで絵を描いている。今度は「水彩か油絵で描いてみたい。宇宙から見た地上の風景や、自分の想いを表現してみたい」そうだ。
ところで、土井さんが宇宙に運ぶ「きぼう」日本実験棟。この「きぼう」の利用について、日本は科学実験だけでなく「人文・芸術分野」や「教育」も含めて多目的に利用できる場所にしたいとのこと。特に「人文・社会系」の利用を打ち出しているのは日本とヨーロッパだけ。JAXAでは、一般からのアイデア募集も予定しているそうだ。
ISS/「きぼう」の文化・人文社会科学実験(パイロットミッション)アイデア募集
http://iss.sfo.jaxa.jp/utiliz/spaceculture/index.html
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