コラム
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2006年 8月分 vol.2
宇宙からの記念写真―無料で10組限定
ライター 林 公代 Kimiyo Hayashi


2006年8月6日に宇宙少年団木津町分団の皆さん30名で作成した「10」。「だいち」が高度約700kmから撮影したもの(提供:宇宙航空研究開発機構 JAXA)  よく卒業アルバムの記念写真のために、みんなで人文字を書いて航空写真を撮ってもらったりしますよね。実は今、「宇宙からの記念写真」を無料で撮影してくれるというキャンペーンをJAXAが実施中で、参加団体を募集している(締め切りは9月15日、実際の撮影期間は10月2日~11月15日)。応募できるのは、小中高等学校の団体。クラス単位でもクラブ、子供会でもOKだが、応募が多数の場合は抽選で10団体が選ばれる。

 撮影するのは、今年の1月24日に打ち上げられた、世界最大級の地球観測衛星「だいち」。打ち上げ直後の2月にはフィリピン・レイテ島で発生した大規模な地滑り、4月には噴火の兆候があったインドネシア・メラピ山、5月にはタイ北部で起きた洪水やインドネシア・ジョグジャカルタの地震被災地の様子を撮影、観測データを提供。アジアで連続的に起きた自然災害にすばやく対応して大活躍中なのである。実は「だいち」は10月中旬からの本格的な運用に向けて、細かな性能を検証する段階だったらしいが、予想以上の性能にJAXAの担当者達も驚くほどだったとか。

 その「だいち」がなぜ記念写真? と思うかもしれない。「だいち」は3種類のセンサーを積んでいて、災害の観測だけでなく様々な目的をもっている。センサーの一つにPRISMがあり、地上の2.5m以上の物を識別(地表の三次元データも得られる)、2万5千分の1の地図作成や更新に利用できる。「だいち」をさらに広く一般の人に知ってもらうためのキャンペーンとして、このPRISMセンサーを使い記念写真を撮影してくれるというわけだ。

 宇宙からの記念写真成功のためには、ポイントが三つある。(1)2.5M以上の、できるだけ大きなものを用意すること。できれば長さは10m以上あったほうがいい。(2)画像は白黒で写るので「白い」布や紙などを用意し、地上とのコントラストがはっきりした広い場所を選ぶこと。(3)てるてる坊主を用意すること。雨や曇りでは残念ながら撮影できない。JAXAウェブサイトでは、日本宇宙少年団木津町分団の皆さんが結成10周年を記念して、実際に記念撮影にチャレンジした様子が掲載されているが、工事用シート(5.1m×1.8m)を106枚使って、「10」という数字がかなりはっきりとらえられている(上の写真)。

 今や地球上空をいくつもの観測衛星が飛行し、「グーグルアース」で検索すれば自分の家がこんなに見えるの? と驚く時代だ。でも、逆に撮影されることを目ざして自分達でオリジナルなメッセージを作るのは、アート的な発想でかなり楽しめそう。 JAXA担当者によれば、今回のキャンペーンの反響が大きければ、再度今後の企画を検討する可能性があるとのこと(そのときは、大人チームにも参加させてね)。

 「だいち」の観測データは秋頃、一般ユーザーに約2万5千円、商業目的なら5万円という超破格での販売が予定されている。災害はいつ起こるかわからないし、たくさんのミッションを抱えて忙しそうな「だいち」だが、こんなサービスを時々は続けてほしいものだ。


「だいち」に写ろう!キャンペーン
http://aerospacebiz.jaxa.jp/daichi/daichi-utsurou.html