コラム
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2006年 11月分 vol.2
土井さんと宇宙へ。「きぼう」保管室お目見え。
ライター 林 公代 Kimiyo Hayashi


「きぼう」の完成イメージ。大きく、船内実験室、外の実験スペース、上部の保管室に分かれる。テラスと倉庫つきの実験室だ。(提供:JAXA)  宇宙飛行士の土井隆雄さんが言われていたように、次のシャトル打ち上げは夜に決まった(10月vol.2のコラムを見てね)。フロリダの青空に吸い込まれていくシャトルは清々しいが、ナイトローンチ(night launch)も幻想的らしい。夜の打ち上げがOKになると、打ち上げ可能な時間帯や期間が長くなって、シャトルを頻繁に上げられるようになる。なんせ2007年は5回のシャトル打ち上げが予定されているのだから。その5回目の打ち上げに土井さんが搭乗し、国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」の一部を宇宙に運ぶことになっている。

 土井さんが運ぶのは「きぼう」の船内保管室。「きぼう」は大きく3つのパートに分かれている。メインの船内実験室、宇宙空間にさらされた外の実験エリア、そして実験室の上部にあり倉庫の役割をする保管室。イメージ的にはテラスと倉庫(又はロフト?)付きの実験室。こんなに複雑な形をしているのは日本だけ。アメリカもロシアもヨーロッパもわりとシンプルな円筒形だ。「きぼう」は2007年末から3回に分けて宇宙に運ばれる予定。まず1回目は土井さんが保管室を、あとの2回で船内実験室と船外実験プラットフォーム等を運び、宇宙でドッキングさせる。

これが「きぼう」の船内保管室。外径4.4m長さ4.2m室内は1気圧に保たれる。実験装置や材料、食料などの消耗品を保管しておく。 土井さんが宇宙に運ぶ船内保管室と実験装置が、11月29日にJAXA筑波宇宙センターで公開された。保管室は思っていたより大きかった。当日は最終チェック中で「酸素濃度は良いか?」という地上では決して見かけない手書きの張り紙がしてあるところなんか、「宇宙飛行士の命がかかっているんだ!」という緊張感を醸し出していた。

 実験装置を組み込んだ実験ラックも見せてもらった。幅105cm×高さ200cmのラックに、さまざまな実験装置が組み込まれていた。特にRYUTAIラックのほうは、流体物理実験やタンパク質結晶成長実験、画像処理の装置など機能の異なる4つの装置を詰め込んであり、「容積率は(他国と比べても)日本が一番です」と、約5年間開発に携わったJAXAの小林亮二さんは胸を張る。小さいところに色んなものを押し込む日本のお家芸だ。精密さを要求される装置が隣り合わせで、画像にノイズが入らないようにする等、対策に相当な苦労をされたそうだ。

SAIBOラック。右側が細胞培養装置で上が無重力の部屋、下が荷重力の部屋。ターンテーブルを回転させることで0~2Gまでの重力を発生できる。  SAIBOラックには、細胞培養装置等があり(パンフには「細胞たちの快適マンション」とあって、ちょっと和んだ)、細胞だけでなく、植物の成長も調べられる。特徴は、無重力の部屋と、荷重力の部屋(ターンテーブルで0~2Gまでの重力がかけられる)があること。以前に、JAXAで植物実験を担当しておられる矢野幸子さんに、この装置で実験を行う「ぺんぺん草」の話を聞いていた。種から発芽、成長、開花、結実までの8週間を無重力と荷重力でモニターして、重力の影響を見るそうだ。矢野さんは宇宙での実験に備えて現在、筑波で地上実験を行っている。

 船内保管室は開発を終え、2007年初めにNASAケネディ宇宙センターに送られる。設計開始から約20年。ようやく打ち上げの日が近づいている。