11月24日午後12時半、県営名古屋空港を離陸して、私を含む7名の乗客は無重力飛行に飛び立った。乗り込んだのはVIP用最高級ビジネスジェット機として使われる機体で、機内は無重力飛行用に前方に座席が6席、後方に2畳~3畳ぐらいのフリースペースがある。無重力を体験できるこのツアーは、一般向けに約30万円~40万円で年に数回行われている。 今回、そのツアーに体験させて頂くことになったのだ。
この日ジェット機が向かったのは愛知県沖の空域。高度1万km付近を放物線を描くように飛行することで、約20秒間の無重力状態を作ることができる。ただし、その前後には、1.8Gぐらいの荷重力がかかる。1.8G→0G→1.5Gをそれぞれ約30秒ずつ繰り返すのだ。7名の乗客は、基本的には自分の座席に座っていて、二人ずつ順番にフリーエリアに移動し、好きな体勢で思いっきり無重力を楽しむことができる。
これまで宇宙飛行士の方々のインタビューを何度も行って無重力の話を山ほど聞いてきた私だが、実際に無重力を体験するのは初めて。地上では絶対できないこと、たとえば天井を歩いたりしてみたいな。水と油を容器に入れたり超簡単な実験道具も用意して、近所で簡単な健康診断を受け、その日を迎えた。
飛行は約2時間。その間、私たちは9回の無重力を体験した。無重力に入る前の、1.8Gが想像よりきつかった。腕を持ち上げるのにも苦労するほどだ。その状態からいきなり無重力がやってくる。実際には「NOW!」のかけ声の前の0.3Gぐらいで、もう体が浮き上がる感じがする。最初はフリーエリアでなく、座席に座っていたのだが、シートベルトを外していたら、簡単に体が浮き上がってしまって、そのあっけなさが予想外で感動的。大人7人がわーわー大声を上げながらくるくる回って、ぶつかりあってギャハハと笑って楽しんじゃう。こんな新しい世界があったんだ! という驚き。自由なその解放感がたまらない。だから20秒が終わって重力がかかるとガッカリする。
20秒は体を動かすには結構時間があるが、実験をしようと思うとシートベルトをして観察したり写真を撮ったりしないといけない。正直、細かい作業をやる余裕はなく1回であきらめた。それより体を動かす方が断然面白いのだ。フリーエリアで天井歩きにチャレンジ。天井に足はつくものの、なかなか体勢を整え「歩く」ところまでは行かなかった。(天井歩きはかなりのテクが必要らしい)、そこで回転に力を入れた。ひざを抱えて勢いをつけたら、なんと止まらない! 止めてもらってやっと止まったが、自分一人では難しかったかも・・・。
実は無重力の7回目を終えた頃、少し気持ち悪くなった。即座にサポートの方が察知して「椅子に座ってシートベルトをするといいですよ」と涼しい風をあててくれた。すると数分で復活。また無重力を楽しむことができた。
体験を終えてみて、私はやっぱり宇宙に行きたい! と感じた。楽しい無重力状態から重力に引き戻されて床におしつけられてしまうときの悲しさと言ったら。「ずっと無重力の世界にいてみたい」のだ。でもこの感じ方は人様ざまで「無重力にずっといると思うと不安で重力がかかるとほっとした」という人も。
この無重力飛行は、宇宙をテーマにしたドラマの撮影に使われているほか、芸術家やゲームクリエーター、一般の方など新しい体験をしたい人がこれまで参加しているそう。今後も年に数回のペースで実施していくそうだ。地上の常識から自由になりたい方、新しい世界を体験したい方にお薦めです。
このツアーのお問い合わせは ダイヤモンドエアサービス社
http://www.das.co.jp/new_html/index-flash.html
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